同居者①
俺の家はサイズとか外観はほとんどリリアさんの……公爵家の屋敷と同じであり、部屋数も相当の数がある。リリアさんの場合は住み込みで働いている人も多いので部屋数が多くて当然みたいな部分もあるが、俺の家の方は部屋は余りまくりである。
そしてその部屋に関しては、一部の部屋は仲の良い人に安い家賃で貸しており、現在俺の家にはリリアさんの屋敷の料理人の方がひとり、警備隊の方がひとり、メイドの方が三人の計五人が部屋を借りて住んでおり、いかに広いとはいえひとつ屋根の下である以上、当然ではあるが家の中で会う機会もある。
今日もたまたまそのうちのひとりと廊下で遭遇した。その人は手に紙袋を持っており、買い物帰りのような雰囲気であり、俺に気付くと軽く手を上げる。
「……ん? やぁ、カイトくん」
「ヴァネッサさん……え? もしかして、その格好で買い物に行ってたんですか?」
ダボッとしたオーバーサイズのTシャツにホットパンツ、ボサボサの黒髪を緩く一本にまとめた160㎝ぐらいの若干ダウナー気味な雰囲気の女性……ヴァネッサさんを見て、俺は思わず問いかけた。
いやなにせ、恰好が緩すぎるというか完全に部屋でくつろいでるスタイルというか……ヴァネッサさんの胸が大きいからなんとなくわかるんだが、たぶんブラジャーとかも付けてない。
「あ~いや、さすがに買い物にはちゃんとした服装で行ったよ。服は魔力で作ってるからね。帰ってきてから服は変えたよ……流石にこの格好で外出て、イルネス先生とかに見つかったらガチ目の説教されるし……」
「それならよかったです。食材かなにかですか?」
「明日休みだから晩酌しようと思ってさ、つまみ用にいろいろ買ってきた感じだね。いや、地下のバーもいいんだけど、バーッてお洒落じゃん。なんかこう、安酒をぐびぐび飲むことでしか癒されない仕事の疲れってあると思わない? あとついでにカジノ寄りたかったし……」
「そっちがメインでは? ……どうでした?」
「ボコボコに負けた……おっかしいな~今日は勝てる気がしたのにな~」
このヴァネッサさん、酒、たばこ、ギャンブルが大好きな……なんというか大変駄目な大人の女性みたいな感じなのだが、仕事中は全然雰囲気が違うというか真面目でキリッとした感じである。プライベートでは、基本だらけ切ってる感じだが……まぁ、気さくないい人で、俺が異世界召喚されてリリアさんの屋敷に来た時に、最初から悪感情なく気楽な感じで声をかけて来てくれた方で、いろいろ話すうちに仲良くなっていまは部屋を貸している感じだ。
「日頃から辛い労働を頑張ってるんだから、ギャンブルぐらい勝たせてくれてもいいのにね~」
「やっぱ仕事は大変ですか?」
「というかすべからく労働はクソだと思ってるね。出来ることなら働かずに生きてたいし、お金はあるからやろうと思えばできるけど……私はほら自分の事客観視できるタイプのクズだから……仮に仕事辞めたら、本当にゴミクズみたいな生活しそうだし、仕事やってる現状が生活にメリハリ付いてていいのかな~とかは思うね」
「凄いこと言いますね」
「いやだって、私から仕事とったら、酒、タバコ、ギャンブル三昧で私生活はだらしないお手本のようなダメなやつが完成するしさ」
懐から取り出したタバコを咥えて火は付けないままで苦笑するヴァネッサさん……まぁ、本人が言ってる通り割とプライベートは駄目よりの方なのだが、サッパリしているというか、いまもケラケラと気楽な感じで笑っておりノリが軽い感じで話しやすい人である。
「……あ、そうだ、カイトくん暇?」
「え? ええ、特に予定は無いですが……」
「おっ、じゃあお姉さんと一緒に安酒飲もうぜ~」
「……晩酌って言ってませんでした? まだ真昼間ですが……」
「……そこはほら、夜まで飲めば立派な晩酌になるから大丈夫。というわけで私の部屋で飲もう!」
「まぁ、いいですけど……」
ヴァネッサさんと一緒に酒を飲むことは度々ある。ただ、食堂で飲んだり、イリスさんのバーで飲んだりすることが多いのでヴァネッサさんの部屋で飲むのは初めてかもしれない。
一緒にテレビゲームとかしたことはあるので、部屋自体には何度か遊びいにったことはある。ちなみにだらしなさをまったく隠していないヴァネッサさんだが、部屋は普通に綺麗である。
「なんというか、本当にヴァネッサさんは仕事してる時とプライベートで雰囲気がまるで違いますよね」
「私って公私をキッチリ切り分けられるタイプだからね。仕事は真面目にしてるよ。そこそこ責任ある立場だしね~」
「というか『メイド長』ですよね?」
「メイド長はさ~イルネス先生がやるべきだと思うんだよねぇ。だってさ~どう見ても私のガラじゃないじゃん。は~ルナちゃんがリリアちゃん付きじゃなければ、ルナちゃんにメイド長譲るのにな~」
どこかローテンション気味に呟くヴァネッサさんは、なんというか本当にダウナー系お姉さんという雰囲気ではある。仕事の時は滅茶苦茶キリッとしているし、口調も敬語で丁寧なのでプライベートとのギャップが本当に凄い方である。
そんなこんなでヴァネッサさんの部屋に向かうことになったのだが、えっと……なんか、歩くたびに胸が凄く揺れてて目のやり場に困る。
「……あの……ヴァネッサさん……えっと、目のやり場に困るんですが?」
「うん? ああ胸? いやさ、これはこれで歩くと結構揺れるから、不意に擦れて痛かったりするんだけど、ブラはブラで窮屈でさ……無駄に大きいのが悪いのかね?」
「いや、知りませんが……俺としては非常に気まずいといいますか……」
「いいじゃん別に、気になるなら見とけ見とけ。私は気にしないし、ほら私って見てくれは結構いいでしょ? 中身は自認でもカスだけど、外見だけはそこそこいいし、君に必要とは思えないけどおかずにしてもいいよ~?」
基本的に喋り方がずっとローテンション気味なこともあって、本当に気にしていないという感じは伝わってくるのだが、それはそれとして……じゃあ、分かりました見ておきます……とはなるはずもない。
シリアス先輩「部屋かしてるってのは、確か以前の話で出てたな……それはそれとして、意外とダウナー系って他に居なかったタイプか?」




