茶会の話~胃痛なる者⑮~
エリスさんの案内でたどり着いたのは、一言でいうなら大衆食堂という雰囲気の店だった。ただ、全体的に清潔感があって綺麗な店で、雰囲気は少し高級な気もする。
例えるならチェーン店よりはランクが高いが、高級店ほどではないというぐらいの雰囲気で丁度いい感じだった。
事前に予約はしてあるようで、店内に入ると店員に席に案内される。
「ちなみにここは、なんの料理のお店なんですか?」
「メニューの種類はそれなりに多いレストランといったところでしょうか……アルクレシア帝国産の食材に拘っている店ですね」
「なるほど……」
そういう地元産の食材に拘っている店ってのは割とよく聞く感じだ。メニューを見てみる限り、コース料理とかではなくある程度のコンセプトで纏まったセットが複数ある感じで……イメージ的には定食屋が近いかもしれない。
ハンバーグが気になったのでそれを注文して、エリスさんの注文が終わった後は料理が来るまで雑談をする。
「エリスさんが知ってるかは分かりませんが、香織さんの店もこの店に近い感じですよ。雰囲気とかは俺たちの居た世界のものですけど……」
「そうなのですか? 確か、カオリさんは友好都市で店を経営されているのでしたね。機会があれば尋ねてみたいものです。意外と、友好都市に行く機会は少ないので……」
「あ~確かに、アルクレシア帝国の首都からだと結構遠いですね」
「ええ、とはいえ転移魔法を使えばすぐに行けるので、意識をすれば足を運ぶことはできますね。実際に友好都市ヒカリは政治形態が独特で、神教を中心とした宗教都市ともいえる場所なので、アルクレシア帝国などとは雰囲気が違うので、いろいろ新鮮ですし行くと楽しいですね」
確かにエリスさんの言う通り、友好都市ヒカリはアルクレシア帝国首都からも距離が遠いというか、位置関係的には人界の最西端と言えるような場所なので、アクセスという意味ではやや難点がありそうな気もする。
確か最初にフィーア先生が攻め入った場所で、魔王城を建てていた土地……ノインさんがフィーア先生を倒して戦いを終わらせ、その後九年後に友好条約が結ばれた場所だったか……。
ただそれでも年間の観光客は凄いみたいなので、初代勇者のネームバリューと信仰心の強い人が多い世界で唯一宗教の総本山というのは大きいのだろう。
香織さんも店はかなり繁盛してるって言ってたし……いまは、お昼時は過ぎたところだから忙しさも落ち着いてホッと一息ついてる頃かもしれない。
快人がエリスと楽しく食事をしていた頃、話題に上がった友好都市の水蓮では……店の扉が開かれ、メギドとマグナウェルが店内に入っていた。
「おぅ、邪魔すんぞ。また来たぜ、カオリ」
「……は? ……え? あ、うっ……い、いらっしゃいませ」
メギドが大きな声で告げながら入店した瞬間、香織はこれでもかというほど目を見開いた後、ゴシゴシと自分の目を擦ってもう一度メギドを見て、周囲をキョロキョロと見渡して快人が居ないことを確認した後で、頬を引きつらせた。
(戦王様ぁ!? なんでいきなり! 快人くん、快人くんは!?)
これで快人が一緒に来ているのならまだマシだった。いやもちろん胃は痛むのだが、それでもまだ安心感があった。しかしメギドが単独で来るのは、恐ろしさしかないというか、粗相でもしたら殺されるのではという思いが強い。
実際は、異世界人としては歴代でも屈指というほどに強い香織は、メギドからすれば気に入っている相手に分類されるのでまったく問題ないのだが……。
「……え、えっと、戦王様。今日、快人くんは?」
「ああ、今日は快人は居ねぇ。その代わりってわけじゃねぇが、もうひとり連れてきたぜ。紹介する……マグナウェルだ」
「……???」
「これメギド、そんなに急に話を進めては戸惑わせるだけじゃろうて……パーティの折に見たことはあるじゃろうが、マグナウェル・バスクス・ラルド・カーツバルドじゃ、よろしく頼む」
「……はひぃっ、み、水原香織です。お、おふたりとも、えと、あ、空いてるお好きなお席にどうぞ……」
マグナウェルの名を聞いた瞬間意識を虚空に飛ばしそうになった香織だったが、定食屋の店主としてのプライドか、入り口で客を立たせたままでは駄目だと、ふたりを席に案内する。
その切り替えの早さとプロ意識に、マグナウェルが感心した表情を浮かべていたが、香織の内心はそれどころでは無かった。
やっと客足も落ち着いてそろそろ昼の営業は終了して一息付こうかと考えていたタイミングで、六王がふたり襲来したのである。
(なにがどうなってるの!? 快人くん! 助けて! 助けてぇぇぇぇ!?)
心の中で叫んだところで、残念ながらその声が届くことはなく、香織は痛む胃を押さえながらメギドとマグナウェルの注文を伺いに行った。
シリアス先輩「ああ、そっか、香織にしてみれば悲劇ともいえるが……強いから、メギド的には気に入ってる相手なのか、だからマグナウェル誘って行こうとかって考えになったんだな……あまりにも哀れ」




