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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
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メイドさんかもしれません

 メイドさんが現れ、ドラゴン担いだ甲冑騎士が現れ、妖精が現れ、巨人が現れ、ガイコツが現れた。ごった煮にも程がある。

「アイン~今日の参加者はこれで全員で間違い無いよね?」
「はい。クロム様がミヤマ様が委縮してもいけないと5体までと制限しましたからね」
「えっと、それじゃあ料理はアインに任せるね~」
「畏まりました」
「えっと、後必要なのは……」

 メイド――アインさんとクロの会話。見た目的にはこの場では唯一の正常な空間の様に見える。というかほかのメンバーが怖すぎる! 特に巨人!

「というか、アハトくん人型になってくださ~い。カイトクンさんが怖がってるじゃないですか~」
「え? 俺っスか? ゼクスの旦那の方が見た目おっかねぇ気がするんすけど……」
「アハトくんはおっきすぎるんですよ~」
「いや、でも俺って『マグナウェル』様とかと比べりゃ小人みたいなもんスよ? でけぇというかラズ姐さんがちっこいだけな気が……」
「……なにか、言いたい事でもあるですか?」
「す、すいません」

 緑の服に身を包み背中の小さな羽で飛びながら、ピンクブロンドのロングヘアーが特徴的な妖精が青い巨人に声をかける。50cmに満たないであろう妖精と5メートルはあろうかという青い巨人の会話は、見てるだけで遠近感が狂いそうだ。
 突っ込み所は色々あるけど、妖精の方……俺の名前『カイトクン』じゃなくて快人です。後、まだもっとでかいのも居るんですね……この巨人が小人みたいなものって……
 そんな事を考えている間に、青い巨人の体が光り二本の角と青い皮膚が目立つ筋肉質の男性へと変わる。それでも2メートルはあってでかく見えるけど……

「しかし、参加できなかった方々は残念でしたね」
「仕方ないでしょうな。希望者全員参加させていては、途方もない数となるでしょうし……」

 そして甲冑騎士とガイコツが会話をしながら歩いてきたタイミングで、クロがアインさんとの会話を終えてこっちに来る。

「お待たせ、カイトくん。じゃあ準備はアインに任せて、改めて、この子はミヤマ・カイトくん。最近できたボクの友達で、異世界から来た子だからあんまり怖がらせちゃ駄目だよ~」
「は~いですよ!」
「じゃ、順番に自己紹介よろしく!」

 クロの言葉に妖精が元気良く手をあげ、それぞれ自己紹介をしてくれる事になった。

「では、アイン殿の自己紹介が済んでいるのであればワシからですかな? 初めましてミヤマ殿、ワシの名はゼクス。まぁどこにでもおるリッチですな」
「よ、よろしくお願いします」

 豪華な服着たガイコツが、綺麗な角度でお辞儀をしながら自己紹介してくる。リッチってどこにでもいるの? なんかアンデット系モンスターのボスみたいな雰囲気ですけど……

「ちなみに今回ミヤマ殿に招待状を送ったセイ・リベルスターはワシの配下でしてな。いやはや、急な招待で驚かせて申し訳ない」

 どうやらこのガイコツ――ゼクスさんは今回招待状を手配してくれた大商会の会長さんの上司らしい。確かに何か、深い経験と貫禄を感じる見た目だし、やはりクロの身内だけあってただ者では無いんだろう。

「じゃ、次はラズが自己紹介します! 名前はラズリア、ラズって呼んでください。よろしくですよ~カイトクンさん!」
「え、えと、よろしくお願いします」

 ピンクブロンドの妖精――ラズさんが元気良く自己紹介をしてくれる。見た目のちっこさもあってか、この濃いメンバーの中ではかなりの癒し系だ。

「んじゃ、次は俺が……オーガのアハトだ。まぁ、固いのは苦手なんでカイトって呼ばせてもらうけど、いいよな?」
「あ、はい。よろしくお願いします」
「おお、よろしくな!」

 人型になってもまだでかい巨人――アハトさんは、見た目通り豪快な性格らしく、強面の顔に笑みを浮かべて手を差し出してきたので、応じて握手を交わす。手、硬ッ!?

「では、最後は私が……ノインと申します。今日集まっている中では一番の若輩です。どうか今後ともよろしくお願いします『宮間さん』」
「こちらこそ」

 黒い騎士甲冑に全身を包んだ――ノインさんの声は少し違和感があった。何と言うか変声機でも通している様な、奇妙に高い声なんだけど、凄く聞きとりやすい。男性か女性かは甲冑のせいもあって分からないが、身長は160cmくらいという事もあってか、普通に人族の騎士にも見える。
 ともあれこれで一通り自己紹介は終わり、クロに促されて近場に用意されてたテーブルに移動。するとそのタイミングで、香ばしい香りと肉の焼ける音が聞こえてきて視線を動かすと――

「え? 早っ!? もう焼いてる!?」

 ほんの数分しか経ってない筈なのに、そこにはいつの間にか三匹いたドラゴンに大量の野菜、果ては魚までも切り終え、大小様々な串に刺して金網で焼いているアインさんの姿がった。
 いやいや、いくらなんでも早すぎるだろ!? 何あの方、超加速とかそういう事出来る人なの!?
 というか金網の上においてあるバーベキューの串の数もとんでもない。何十本という串が一切の乱れなく綺麗に並んでおり、漂ってくる香りは素晴らしいの一言。

「さっすが、姐御は仕事がはえぇな」
「ですね。アイン様がいらっしゃるのでしたら、今回私達が調理面で参加できる事は何もないですね」

 ごく当たり前の様に話すアハトさんとノインさん。どうやらアインさんのあの異常な作業速度は、彼等にしてみれば日常的なものらしい。
 というか良く見たら、テーブルにはお酒やジュースらしき物もいつの間にか用意されてるし、取り分けて食べる用の小皿も人数分あった。メイドさんってすげぇな……

「お、そういや、カイトは酒はいけるのか?」
「あ、はい。そこまで強くはありませんけど……」
「上等上等、んじゃ、さっそく一杯飲み交わすとするか!」
「あ、駄目ですよアハトくん。まだ乾杯してないんですから~」
「固い事は言いっこなしっスよラズ姐さん。男同士の会話ってのは、先ず一杯交わしてから」
「クロム様より先に飲み物に口付けたら、アインさんに叱られますよ?」
「……」

 豪快に笑いながら話すアハトさんをラズさんが止めようとするが、アハトさんは気にした様子もなくテーブルの酒に手を伸ばそうとして――続けられた言葉に硬直する。心なしか元々青い顔が、更に青くなったようにも見えた。
 その様子から何となく力関係が見えてくると言うか、少なくともアハトさんはアインさんを恐れているらしい。

「……あの、アインさんって、もしかしなくても物凄い方ですか?」
「あ、あぁ……てか、殆ど化け物――ッ!?」

 何かを言いかけたアハトさんの頬にいつの間にか小さな刃物で切った様な切り傷が入り、アハトさんは滝の様な汗を流して震え、流れる様な――あまりにも洗練された淀みの無い動作で地面に両手をつき頭を下げる。

「ももも、申し訳ありやせん! 姐御!」
「……」
「アインさんは、ラズ達が生まれるよりずっと前からクロム様のメイドさんで、今日集まってる中じゃ、クロム様除いて一番強いですよ」
「そ、そうなんですね」
「大丈夫です、宮間さん。アハト様みたいに不用意な発言をしたりしない限り、穏やかで優しい方ですから」

 何やら目の前で繰り広げられた――らしい? アインさんによるアハトさんへの注意というか威圧に関して、ラズさんとノインさんが説明とフォローを入れてくれた。
 どうやらこのメンバーの中で一番の古株にして、クロを除いて一番強い立場なのはメイドのアインさんという事らしい。俺の知ってるメイドとなんか違う気がする……

「カイトくんはお酒にする? ジュースにする?」
「あ~じゃあ、お酒で――「どうぞ」――うおぉっ!?」

 な、なにが、起こったんだ今? 俺の年齢は現在21歳、リリアさんの一つ下であり酒も嫌いという訳ではない。そしてクロの質問に対し、先程アハトさんに誘われた事もあって乾杯は酒でと返答した。ここまでは良い。
 返答した瞬間、綺麗に酒が注がれたカップを差し出すアインさんが居た。さっきまで肉焼いてた筈なのに、音もなく居た……ワープ? ワープするのこの方!?
 しかもそれは俺に対してだけでなく、クロは勿論ゼクスさんにラズさんにアハトさんにノインさんと、全員の手にそれぞれの体のサイズに合わせたカップがいつの間にかあった。

「あ~カイト。初めは驚くのも無理ねぇだろうけど……マジで、アインの姐御が取り仕切ってる限り、俺等に酒一滴すら自分でつぐ隙さえねぇから……まぁ、慣れろ」
「は、はぁ……」

 メイドさんって凄いんだなぁ……いや、もうあれはメイドって呼んでいいのか?

「じゃ、皆飲み物も持ったし、始めよう! 今回は異世界からきたカイトくんの歓迎も兼ねてるし、勿論ボクも色々お話しするけど、カイトくんと皆が仲良くなってくれれば嬉しいし、のんびり楽しもうね~」

 いつも通りの無邪気な笑顔で話すクロの言葉に、少し胸が温かくなるのを感じる。実際この場にきて感じた印象ではあるが、アハトさんを含め皆俺を歓迎してくれているという気持ちが伝わってきていて、何と言うか凄く話しやすい。
 そうリリアさんの屋敷で、ルナマリアさん以外の人から感じる様な『どう接すればいいか迷ってる』とか『使用人とお客様』とでも言うのか、一歩引いた様な感じが無くごく自然と話しかけてきてくれる。悪意も好奇も無く、純粋にクロの友人として俺を迎えてくれているのが感じ取れると言う事は、それこそがクロがこれを企画してくれた狙いなんだろう。
 自然と笑みが浮かぶのを実感しながら、クロの動きに合わせてカップを持ちあげる。

「それじゃあ、乾杯!」
「「「「「「乾杯!!」」」」」」

 声と共に合わせられる『七つ』のカップ――アインさんも当然の様に居た!?
 そして少し苦みのあるビールに似たお酒を口に運び、カップを戻すと目の前の小皿には出来たてのバーベキュー……完璧なタイミングすぎて、逆に怖いわ!?
 肉と野菜が等間隔で刺されたお手本の様な串を手に取り、頷くクロを見てから口に運ぶ。そしてそこで思い出した。これドラゴンの肉なんだっけ? ドラゴンってトカゲみたいな印象が――ってうまっ!?
 一口噛んだ瞬間肉の繊維が程ける様に柔らかく切れ、口の中に暴力的とすら感じられる旨みがいっぱいに広がる。味は高級な牛肉の様で、シンプルに塩コショウだけの味付けながら、その量がまた絶妙で気付けば夢中で食べていた。
 正直今まで食べ中で一番美味いとすら感じるのは肉だけでなく、間にある色とりどりの野菜もこれ以上ない程に絶妙な焼き加減で、全体の味を何倍にもしているように感じた。

「流石、アイン殿……素晴らしい仕事ですな」
「ですね~お野菜も全部焼き加減を変えてるみたいです!」

 ゼクスさんは魚の刺さった串を食べており、ラズさんは野菜だけの串を手に持っている。それぞれ串のサイズも違うし、好みに合わせていると言う事だろうか? アハトさんは大きめの肉が刺さった串で、ノインさんは俺と同じオーソドックスなもの……って、ノインさん甲冑姿のままなんだけど!? どうやって食べてるのあれ!?
 まぁしかしそれを深く考える暇もない程、このバーベキューは美味しい。というかあっという間に一串食べ終えてしまった。次はどうしよ……俺もゼクスさんが食べてる魚の串も食べてみたいな。

「どうぞ」
「……あ、ありがとうございます……えと、俺まだ何も言ってないんですが?」

 そして当り前の様に目の前に差し出される魚の刺さった串。エスパー? アインさんもエスパーなの!?

「相手の求める物を察するのは、メイドとして最低限の嗜みです」
「そ、そうですか……」

 メイドすげぇよ!? 半端じゃないよ!?
 しかもこの魚の串、完全に焼きたてなんだけど……え? 俺がこれ欲しがるって予想して、求めるタイミングに焼き加減のピークを合わせたとか? ははは、まさかね……
 じゃ、じゃあ例えば……この一口でお酒も飲み終わるけど、おかわりが欲しいなぁとか思ったら?

「注いであるっ!?」

 口元から離したカップには、いつの間にか次のお酒が注いであった。しかもカップの縁等の汚れも完璧に拭いてあるというおまけつきで……アインさんってひょっとして、時間止めたりできるんじゃないのか? いや、割とマジで……
 今さらながらアハトさんの言っていたアインさんが取り仕切る限り、酒一滴すら自分で注ぐ必要はないって言葉の意味を実感した。

 拝啓、お母様、お父様――色々な方に出会いました。この世界において最強の職業は、勇者でも賢者でもなく――メイドさんかもしれません。


多分こんな感じ……

名前:アイン
技能:家事レベル限界突破、超加速、威圧、不可視攻撃、瞬間移動、時間停止、読心術ect
職業:パーフェクトメイド
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