市報に載せる!?企画課とバトル!!
蓮は【企画課】に電話した。
【環境衛生課】の藤井です。
市報担当者の桜樹さんはいらっしゃいますか?
はい。変わりました、桜樹です。
キリッとした、しかし、どこか冷たい若い女性が出た。
蓮は、あの、市報に特集組んでもらいたいことがあってですね。
あの、市報はページが限られています。
市のお知らせだけでもページが埋まるんです。
そこに特集ですか??
よっぽど市民の関心のあることじゃないと無理です。
で、一応、聞きますけど、どんな内容ですか?
蓮は待ってましたとばかりに、ゴミ問題を熱く桜樹に話し始めた。
ある程度蓮が話すと、桜樹は
もう結構です。
ゴミ問題?しかもゴミ収集車の話題を中心に?
ため息をつきながら、誰も見ないです。
企画課としても、変な記事を載せると、それだけで苦情の電話が来るんですよ。
市報は週刊誌じゃないんです。
攻めた内容なんていらないんです。
お知らせで埋めとけば文句は出ません。
それじゃわたしも忙しいので。
ガチャン。
電話は切れた…。
くやしい。桜樹を陥落させなければ、唯との約束が守れない。
蓮は夜中までゴミ収集車の現場の過酷さを訴える文章を作った。
これを【企画課】まで持参して、桜樹と膝を付き合わせて話せばなんとかなるかもしれない。
翌日、蓮は【企画課】へ向かった。
桜樹さんいらっしゃいますか?
「おーい、桜樹、他部署のひと、呼んでる」
奥の方の席から人が立ち上がったのが見えた。
スーツを着こなし、スラッと背の高い綺麗な女性がツカツカ歩いてきた。
威圧感がある…。
あなたが藤井さん?
桜樹はネームを見せて
桜樹美鈴です。
よろしくお願いします。
昨日の件ですよね?
しつこいですよ?
【環境衛生課】ってそんなに暇なんですか?
蓮はめげずに、取り敢えず、桜樹さん!
この文章だけは時間があるときで良いんで読んでください!
蓮のあまりにもの熱意に、桜樹も折れ
わかりました。
読むだけは読んでみます。
蓮の書いた文章を持っていった。
読んでくれただけでも先ずはOKだ。
夜、唯に電話をする。
蓮は今日の出来事を伝える。
唯は「蓮さん、そんなにムリしなくていいよ」
「ごめん。わたしが変なこと言っちゃったから」
そんなことないよ!それにこれはボクがやりたいことなんだ!
唯はフフッと笑って
「蓮さんて変わったよね」
「ま、ゴミ袋をバケツリレーしてくれたとこから、変な人だなとは思ってたけど」さらに笑った。
でも…。こんな熱い人だとは思わなかった。
かっこいいよ…。うん。かっこいい…。
蓮は耳を疑った。
唯は確かに今、ボクのことをかっこいいって言った?
蓮はドキドキして、頑張るよ!
絶対に載せてみせる!
声が上ずった。
蓮は、唯さんも素敵だよ…とか気の効いた言葉すら言えなかった自分が情けなかった。
数日後、桜樹がら電話がかかってきた。
だいたい内容はわかりました。
ただし、掲載するからには、それ相応の価値の裏付けが必要ですね。
現場取材します。
蓮は「え?現場取材ですか?」
何とぼけた声出してるんですか?
特集組むからには、適当な記事だと困るんです
あ、まだ、掲載するとは言ってませんから。
だから、この目で確かめます!
蓮は気圧されて、は、はい。
としか言えなかった。
桜樹は蓮の一生懸命さに、やる気のない仕事だったが、心に火が着いたようだった。
翌日。
朝のルーティン作業。昨日の収集車の運行記録のチェックをしていた。
バァン!
事務所のドアが勢いよく開いた。
おはようございます!!
【企画課】の桜樹美鈴です!
取材に来ました!
蓮は、まさかこんなに早く来るとは思わなかった。
桜樹さん、現場取材って具体的になにやるんです?
そりゃ、決まってるでしょ。
わたしがパッカー車に同乗するんです!
蓮は「でも許可が…」
うるさい!やるったらやります!
なんか言われたら、藤井さん!
あなたが責任取ってくださいね!
わたしの心に火をつけたんですから。
そう言うと、事務所から出て行った。
数分後…。
桜樹は着なれない作業着を着て、右手には安全靴を持っている。
蓮は呆気にとられた。
で、逢沢唯さんってどこ?
あ、もう少しで来ます。
低いディーゼルエンジンの音が聞こえてきた。
おはようございます!!
いつもの唯だ。
あなたが逢沢さん?
は…。はい。
今日、1日、あなたに密着取材させていただきます!
桜樹美鈴と言います!
よろしくお願いします!
桜樹は唯に有無を言わせず強引に宣言した。
早速、桜樹は安全靴を履くと、パッカー車に乗ろうとしたが
「なにこれ?めちゃめちゃ座席が高いじゃない!」
唯は「ここの持ち手を持って力を入れて上ってください」と丁寧に教えた。
桜樹が席に収まると、唯は
「出発します!」
再びエンジンをかけた。
ガァォン!!
けたたましい音が響く。
トラックが小刻みに揺れる。
アクセルをゆっくり踏むと、大型パッカー車はクリーンセンター内に入っていく。
クリーンセンター内はとにかく狭い。
最大、3t車までしか考えられていない。
しかし、唯は慣れたもので、場内をスイスイ入っていく。
大きな曲がり角が近づいた。
唯はハンドルを逆方向へ切る。
ミラーが壁ギリギリ数センチを通過する。
桜樹が叫んだ
「ぶつかる!!」
唯は笑って
「大丈夫ですよ。思いっきりふくらまないと、ここ曲がれないんです」
大きなハンドルを慣れた手つきでくるくる回している。
桜樹は思った。
これは記事にできるかもしれない。
とことん取材してやるわ。
メモ帳を胸のポケットに入れて、真剣な顔をして前を向いた。
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