ずっと幸せでありますように。
唯の運転するパッカー車は狭い住宅街を縫うように走る。
桜樹は
「よくこんな大きなトラック運転できますね」
唯は
「わたしだって最初は擦りましたよ」
苦笑いする。
「慣れですよ慣れ」
そんなものですか…。
パッカー車が止まる。
さあ、ここから回収が始まります!
唯はトラックから飛び降りると、すぐにゴミステーションを開けて、ゴミ袋を次々と投げ込む。
異臭がしたり、汚い汁が飛ぶ。
桜樹は思わず顔をしかめた。
唯はお構いなしに放り込んでいる。
「さ、次行きます!」
そう言うとすぐに運転席に飛び乗った。
桜樹も慌てて乗り込んだ。
次のゴミステーション。
数百メートル走るとある。
また飛び降りる。
ゴミ袋をパッカー車に投げ込む。
パッカー車には冷房は付いているが、数百メートルごとに乗り降りするのでほぼ意味はない。
桜樹はパッカー車から降りると、軍手をはめた。
「桜樹さん?どうしたんですか?」 唯は驚く。
「体験しなくては何もわかりません!」
ゴミ袋を持つ。1つ持つだけでよろよろする。
パッカー車に投げ入れた。
ゴミ袋から汁が飛び出した。
桜樹は構わず、二つ目を投げ入れる。
息が切れる。
肩で息をしてうずくまった。
「桜樹さん!ムリしないでください!」
桜樹は、ごめんなさい…邪魔しちゃって。
パッカー車に戻ると、唯は桜樹にスポーツドリンクをわたした。
「いきなりはムリですよ」
「しかも、いちばんキツイ真夏ですから」
桜樹はシートにもたれながら、こんなこと毎日やってるんですね…。とため息をついた。
考えたこともありませんでした。
ゴミ袋に入れて時間までに出す。そしたら片付けられている…。
当たり前に思いすぎて、回収してくれている人のことなんて考えもしなかったです。
唯は
「それでいいんです」
「社会はそうやってまわってるんです」
「ただ、そこにお互いの思いやりがあることが大切だと思うんです」
「どんな仕事が偉くて、どんな仕事が蔑まれるのか」
「そういうことがない社会にしたいんです」
「どんな仕事も大変。楽な仕事なんてないですから。」
桜樹は黙って唯の言葉を聞いていた。
1日の収集が終わって桜樹はクリーンセンターに戻ってきた。
桜樹の髪は乱れ、汗でメイクが落ちている。
桜樹さん、お疲れ様です。
蓮は、汚れた桜樹の作業着を見た。
桜樹さん!?大丈夫ですか?
桜樹は蓮を見て、この汚れが、わたしが取材した証なんです。
記事にします!!
特集、組みます。
クレーム来たら言ってやります。
「あなたのゴミは誰が片付けているんですか!?」
って。
桜樹は着替えると、ではお疲れ様!
と言っていなくなった。
蓮は、嵐のような人だなと思っていた。
月末、市報が各家庭に配布された。
【ゴミ収集の現場。あなたは知っていますか?】
そこには、桜樹が実際にやってみた感想、唯の写真、違反ゴミについて再度考えてみるようにも促されていた。
蓮は、この市報を読んで胸が熱くなった。
たまらず【企画課】の桜樹に電話した。
桜樹さん!ありがとうございました!
すごく良い記事だと思います!
まぁ、わたしも苦労したので頑張って記事にしましたよ。
もう無茶は言わないでくださいね。
桜樹は笑って電話を切った。
唯にも市報を見せた。
唯は「これで少しでもゴミ収集に理解のある人たちが増えるといいな」
蓮さん、ありがとう。
まさか、こんなことが実現しちゃうなんて。
すごいよ…すごすぎるよ。
それから唯がゴミ収集していると、ちらほら
「ありがとう」
と言われるようになった。
市民の心も徐々に変わりつつある。
ね、蓮さん?
…いろいろありがとう…。
蓮さんは公務員だからさ、また異動してどっかにいっちゃうでしょ?
蓮は何も言えずに唯の足元を見ている。
だからさ、蓮さんがどっか行っちゃうなら
わたしが蓮さんをずっと捕まえてる…。
だから、ずっとわたしの側にいてください!
好きなんです。わたし蓮さんのことが大好きなんです!!
唯は顔を真っ赤にして涙ぐんで蓮を見つめた。
蓮は
ボクも唯さんのことが大好きです!!
ずっとボクの側にいてください!!
蓮もまた、赤面して涙ぐんでいる。
蓮は、唯の手を引っ張った。
そして、強く唯を抱き締めた。
ゴミを取り巻く問題は課題が山積みです。
もう少しでなくなりそうな埋め立て地。
なかなか進まないリサイクル。
分別を守らない住民。
この小説をきっかけに、少しだけゴミ問題について考えてみませんか?
最後に
蓮と唯がずっと幸せでありますように…。
完
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