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唯さん!アイドルになる!?

係長、企画できました。

係長に起案書を提出。ハンコを貰って課長へ。


課長「今年のリサイクル展示会」の進行は藤井君に任せるよ」

蓮、はい!

異動したての蓮であれば、ゴミのリサイクルのイベントなど、いちばんやりたくない仕事だった。

しかし、今の蓮は違う。

ゴミ収集の現場、ゴミ処理の問題、リサイクルの課題…。

唯に感化されてやる気に溢れている。


イベントの企画

生ゴミの堆肥化

プラスチックのリサイクル


蓮は企画を練っているが、このお堅いテーマで人が集まるのか?しかも、ゴミを考えるイベント単体で。


蓮は、起案をやり直した。


【子供祭りと同時開催】

これなら、子供、そして親世代。孫を連れてきている高齢者。

さらに、祭りなので屋台も出る。

これなら、若者の集客も見込める。


しかし、子供祭りは人気のイベントだけに、ゴミリサイクルのブースは埋もれてしまう可能性が高い。


蓮は、昨年の子供祭りの様子を思い浮かべた。

たしか、総務課でもいろんなこと手伝ったな…。


そうか!白バイと消防車の展示をやった!

警察官と消防士も1名ずつ出てもらってた。


蓮は、パッカー車はなかなか間近で見る機会はない。特に、子供は喜ぶ。

さらに、大型がいちばん目立つ。

蓮の頭にはすでに唯の顔が浮かんでいる。

下衆な考えだけど、大型パッカー車を小柄な若い女の子が運転しているギャップもウケるはず!


蓮はすぐに山本商事に電話した。

社長に話すと、自分の会社の宣伝にもなるし、断る理由がないと快諾してくれた。


会場準備。

会場の公園の柵が取り外される。

白バイ、消防車が入ってくる。

屋台の準備も着々と進んでいる。


そのとき、低いディーゼルエンジンの音を響かせながら、大型のパッカー車が現れた。

狭い会場も余裕ですり抜けてくる。

やがて、所定の位置に止まった。


運転席のドアが開いた。

黒い作業着に茶色のMLBのキャップを被った唯が飛び降りる。


一斉に唯の方を見るひとたち。

やはり、ギャップがすごいらしい。


唯は、周囲の人たちに

「よろしくお願いします!!」

笑顔で挨拶をした。


蓮は唯に近づいて

唯さん、協力してくれてありがとう。

いいよ、いいよ。わたしだって蓮さんに助けてもらいっぱなしだし。


この前の車の件とか…。

そういうと、唯の顔が赤くなった。


蓮も、あ、あれは、仕事だから!

完全に「好き」が溢れている。


祭り当日。


天気がいいこともあり、例年より盛況だ。

白バイ、消防車はやはり人気だ。


唯の方を見た。


なんと、人集りができている。

運転席に乗る男の子、ゴミを回収する機械の構造をましまじ見る人。

そして…唯と一緒に写真を撮るひとの列ができている!

家族連れ、カップル…。おい、おい、男ひとりはやめてくれ。


その様子を目敏く見つけた地元のテレビ局が撮影を始めた。

さらに人集りができる。ちょっと緊張気味でインタビューを受ける唯。


蓮は、このままでは唯がアイドルになってしまう。

こころがザワザワした。


祭りが終わり、皆、片付けに追われている。


唯は蓮の元に小走りで駆け寄り、今日はありがとうございました!

と大きな声で言った。


お礼を言うのはこっちの方だよ。

あんなに盛況になるなんで。


…なんだか、唯さん、アイドルみたいだったよ。

遠くにいってしまうような。

あ、、あ!

あの、その、変な意味じゃなくて!


蓮は顔を沸騰させた。


そんな蓮を見て、唯は優しく微笑んだ。


「わたしはどこにもいかないから」

「今までと何も変わらない」

「逢沢唯です」

なんてね!


蓮は、そっか…。そうですよね!

ホッとしたように答えた。


唯はパッカー車を眺めた。


今日の「リサイクル展示会」コーナで人が集まったのって、結局、ゴミ収集車の運転手が女の子だからってことでしょ?


ゴミのことに関心があったわけじゃない。


ごめんね、蓮さん。


わたしね、この仕事に就いて、本当に大変だと思った。正直、辞めようかと思ったこともあった。


今、夏でしょ?

ゴミ袋にコバエが群がってるのは当たり前。

蛆が湧いてるのだってたくさんある。

ゴミ袋をパッカー車に投げ込んだとき、袋が潰れて、臭い汁が顔にかかったりもするんだ。

もちろん、汗びっしょだし。


でも、この世界、どこの国だってわたしたちのような仕事をする人は必要だよね。

だから、少しでもこの仕事を理解してもらいたいの。

別に尊敬してとは言わないよ?

ただ、わたしたちがいないと世の中は回らないことだけは理解してほしい。


めちゃめちゃ矛盾したこと言っちゃうけど、さっきさ、女の子だから人が集まったって言ったよね。

だったらさ、それ、利用してやろうって思うの。

客寄せパンダでも構わないよ。


蓮は唯の真剣な横顔を見つめて、この人には敵わないなと思った。


蓮は、思い付いた。


ならさ、市役所の市報で特集を組もう!

ホームページにも掲載してもらおう!


唯は、笑って、そんなことできるの?


蓮は、やってみせるよ…。

拳を握りしめた。


唯はそんな蓮を見て


やっぱり、わたし、この人のことが好き…。


確認するように呟いた。







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