恋のバケツリレー!?
うん?
建設課からメールだ。
『道路通行制限』2件
ゴミ収集車は市内のあらゆるところを走る。
もちろん、道路工事も頻繁にある。
そこをどう抜けるのか考えるのも蓮の仕事だ。
1件は片通(片側交互通行)か。問題はないな。
特に問題がない場合はドライバーさんに知らせるのも後回しにできる。
もう1件は…。
全禁(全面通行止)か…。めんどくさいな。
蓮は建設課から来たメールの地図をよくよく見た。
えと…。迂回路は…と。
ない!?
蓮は慌てて建設会社に電話した。
あの、全禁なんですけど、迂回路表示がなくて。
現場責任者が電話に出た。
あのさ~あそこ8時30~17時までは通れないのよ。
迂回路はあるよ?一旦、国道に出てもらえれば。
だめなんです!
全禁の区間にゴミステーションあるんです。
パッカー車が入れないと収集ができないんです!
じゃあ、8時30分前に回収すればいいじゃないの?
それが、ゴミ出しの時間は8時30分までならOKなんです。その時間前の回収はできません!
じゃあ、近所の人に言っとけばいいでしょ?
それには区長の許可が必要なんです。
だけど、全禁期間が近すぎて許可が取れないです。
はぁ~。これだから、お役所は嫌だいやだ。
なんでも、申請、許認可、書類。
こっちはこっちで工期もあるんだよ!!
お役人も規則、規則じゃなくて自分で考えろよ!!
怒鳴られて電話は切れた。
蓮はPCでゴミステーションマップを開く。
詳細な地図はもちろん、道幅から、ステーションの形状まで表示される。
該当箇所を見た。
ムリだ…。どうしようもない、詰んでる。
このステーションの担当者が表示されている。
山本商事 逢沢唯
逢沢唯…。あ!この前の女の子か!
夕方、山本商事に電話をする。
環境衛生課の藤井です。逢沢さんはいらっしゃいますか?
あー唯ちゃんね。今、パッカー車洗ってるわ。
ちょっと待って、呼んでくる。
お電話変わりました、逢沢です。
逢沢さん?環境衛生課の藤井です。
あ~藤井さん。お久しぶりです。
直に電話とか珍しいですね。
あの、逢沢さん担当の西区4番のステーションの前が、全禁になってしまって、普通車ですらはいれないんですよ…。
唯はクスッと笑って。
たしか、そのステーションの全禁区間前は、4tパッカーでも転回できるはずです。
蓮根は、そういうことじゃなくて、パッカー車自体が入れないんですよ!?
唯は自身ありげに、パッカー車、転回さえできればいけるんです!
でもどうやって…。
人力です!!わたしがステーションまで走って取りに行って、パッカー車に投げ込めばいいだけです!
藤井さんは考えすぎですよ?
手足が動くなら、動かせばいいんです。
任せてください!
でわでわ。
電話が切れた。
人力って言ったって、全禁手前からステーションまで90メートルはある。そこから30袋ちかくのゴミ袋を手で持って走ってパッカー車に投げ込む。
ムリだ…。
全禁当日。
蓮は早朝出勤して気合いを入れた。
作業着よし!安全靴よし!
軽トラのエンジンをかけた。
西区4番ステーションに到着。
近隣住民が次々にゴミ袋を持ってくる。
蓮は、せめて今日だけはゴミ出し待ってくれ…。
祈る気持ちでステーションを見つめている。
8時30分になった。時間ピッタリに、いつものディーゼル音が響いてきた。
唯は4t車から飛び降りると
あれ?藤井さん?何してるんですか??
いや、ステーションのゴミ袋の数見てください!
あんなのムリですよ!
唯一は、首を傾げて、じゃ、わざわざ止めろって言いに来たんですか?
蓮は、ちょっと顔を赤らめながら、
そ、そうじゃなくて、二人でやった方が早いし。
蓮は小声でゴニョゴニョ言っている。
唯は、さ、どいてどいて!
軍手をはめた。
唯さん!!
あ、しまった、逢沢さんじゃなくて、下の名前で呼んでしまった…。今はどうでもいい!
逢沢さん!ボクも手伝います!
ボクがステーションからゴミを持ち出して、あの電柱まで運びます!
逢沢さんは、そこからパッカー車に投げ入れてください!
え…唯は驚いた。公務員がこんなことを?
唯も世間一般のステレオタイプの公務員のイメージを持っていた。
蓮はステーションに走って行った。
ステーションの扉を開け、固定する。
ゴミ袋を持ち上げた。
ぐっ!重い!
可燃ゴミ袋とは言え、ほとんどの家庭は生ゴミを新聞紙にくるんで中に突っ込んでいる。
現実の可燃ゴミは紙類だけではない。
蓮はひょろひょろの青白い細い腕に力を込めた。
二人袋が限界だ。
よろよろしながら走る。
運動の保護者リレーで張り切っているお父さんみたいだ。
電柱にゴミ袋を置く。
唯は蓮を見て頷いた。唯の体格からは想像できない力でゴミ袋を3つ、4つ抱えて走る。
両手では持ちきれないので、唯は脇に抱えたり、胸で抱えたり。
ゴミ袋から、生ゴミの腐った汁が唯の作業着を濡らしていく。
蓮は、ステーションからすべて運び出すと、電柱の下で倒れ込み激しく呼吸をしている。
唯が汗だくで蓮の元に来た。
藤井さん?大丈夫ですか?
笑いながら見ている。
あ、逢沢さん…。ありがとうございました…。
唯は、逢沢さんじゃなくて、
唯でいいですよ?
だって、さっき、そう呼んだでしょ?
クスクス笑っている。
その代わり、わたしも、藤井さんことは
蓮さん、って呼ばせてもらいます!
あ、あの、唯さん、蓮は唯の汚れた作業着を指指して、生ゴミの汁でかなり汚れていますよ。
ボクのジャンバー使ってください。
蓮は軽トラまで走って行って、蓮の市役所のジャンバーを貸した。
唯は、市役所のジャンバーって民間人に貸したら蓮さん始末書ものでしょ?
それに、こんなこと慣れっこです。
蓮はようやく立ち上がって、ダメです!
唯さんは今日はこれを着てください!!
あまりの勢いに、唯は笑ってしまった。
じゃ、借ります!!
唯はその場で山本商事のジャンバーを脱ぐと、市役所ジャンバーに着替えようとした。
唯がTシャツ1枚になった瞬間、蓮はつい目が行ってしまった。
唯の体に似合わない豊満な胸元に。
唯は、蓮さん!
ちょっと、変な目で見たでしょ!
女の子ってさ~、男が自分の胸見てるってすぐん分かるんですからね!
というと、また唯は笑った。
じょーだんです。じょーだん!
蓮は、真っ赤な顔して、唯さん、からかわないでくださいよ…もう。
じゃ、ジャンバー借りますね!
そう言うと、唯はパッカー車に飛び乗った。
大きな声で、『このお礼は必ずします!』
そう言うと、大型パッカー車を何度も切り返し、元来た道を低い音をたてながら走っていった。
蓮はそのパッカー車をいつまでも見つめていた。
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