人事異動
職業と恋愛を絡めたストーリーです。
この業界に筆者は今も勤めています。ゴミ収集の現実を織り混ぜながら書いて行きます。
不定期連載になりますが、よろしくお願いします。
【4月1日付人事異動】
藤井蓮
環境衛生課に配属を命ずる
蓮は年度末締め切りの書類の山に埋もれそうになっていた。
電話が鳴る。
「総務課、藤井です」
「ああ。藤井くん。ちょっと小会議室に来てくれる?」
はい。わかりました。
この忙しいのに課長は…。蓮根は少しイラつきながら小会議室に入った。
「藤井くん。まあ、座って」
「なんですか?改まって」
「環境衛生課の山根さんが辞めちゃうからさ、人が足りないんだよ、環境衛生課」
蓮は、いやな予感がして、息が詰まった。
「そこで、藤井くん、キミが環境衛生課に異動になった」
「あっちはあっちで遣り甲斐がのある部署だ。」
「がんばれ。あ、引き継ぎはしっかり頼むよ」
【環境衛生課】
それは、誰もが行きたがらない部署。
ゴミ収集の管理、ゴミピット内の現場仕事、苦情処理。
キツイ、キタナイ、キケン、所謂、3K部署だ。
蓮は…どうして、ボクが??
花形部署の総務課だぞ。出世コースなのに。
ふらふらして自分のデスクに戻る。
隣の同僚が
「藤井さん。急に課長に呼びだされて、どうしたんですか?」
「ああ。異動だってさ…。」
え!?
税務課?それとも企画課ですか?
まさか、秘書課とか?
蓮は言い淀んだ。
【環境衛生課】
同僚は聞いてはいけないことだと悟り、ま、まぁ、あそこは危険手当もつくし給料いいですからね。
すぐに自分のパソコンに視線を移した。
4月1日。
初出勤。蓮の服装はスーツから茶色の作業着に変わっている。
【環境衛生課】は市役所の出向機関にあたる。
本庁舎とは離れている。
クリーンセンター内に環境衛生課はある。
クリーンセンターにはゴミピットがあり、24時間委託業者がゴミを焼却している。
蓮はクリーンセンターの敷地に入った。
ゴミピットから鼻をつく臭いが漂う。
事務所に入った。
藤井蓮です。よろしくお願いします。
覇気がない。
新しい自分のデスクに座る。
なにやらデスクの横にかけてある。
「係長。これなんですか?」
「これって?見たまんま。ハエたたき」
え!?
「ここさ、どんなに気を付けてても、ドアの開け閉めのときにフラッと入ってきちゃうんだよ」
蓮は眩暈がしそうだった。
夏は涼しく、冬は暖かい。
大画面のモニターを見ながらスーツを着て働く。
同僚は着飾った女子職員。
総務課とは真逆の部署…。
ブー!!
ブザーが鳴る。
ブザーが鳴った方向を見る。
そこには窓口があって、計量台にゴミ収集車が載ると自動で重量の伝票が出る。
それを運転手が持ち帰るという仕組みだ。
9時。早朝の第1便でゴミ回収をしたパッカー車が次々に入る。
けたたましくブザーが鳴り、伝票がどんどん出ていく。
一際、大きなトラックが来た。
パッカー車では珍しい4t車。
普通、パッカー車は住宅街を縫うように進むので、2t〜3t月が多い。
大きなディーゼルのエンジン音が聞こえる。
計量台は4t車を想定してないので、ギリギリだ。
そこにピタリと綺麗に停まった。
受付の窓が開く
「おはようございます!」
係長「おはよう!唯ちゃん!御苦労様!」
小柄でダブダブの黒色の作業着にニューエラの茶色いキャップを被っている。
蓮は、こんな女の子がパッカー車の運転手なんて珍しいな…と思った。
翌日。
違反ゴミにシールを貼るために軽トラで出発する。
ゴミステーションに残された袋。
可燃にプラスチックが入っている。
蓮は、分別ぐらい守ってよ…。
うわ!袋から汁が垂れてきた。
作業着の袖に臭い汁がかかった。
最悪だよ…。
近所の住人と思われるオバサンが出てきた。
いちいち、そんな黄色いシール貼って、市役所の人ってやっぱり暇なのね。
税金泥棒ってホントだわ。
大きなディーゼルのエンジン音が聞こえてくる。
聞き覚えのあるエンジン音。
大型のパッカー車が停まる。
小柄な女性が飛び降りてきた。
おはようございます!
唯はそのオバサンにも明るい挨拶をした。
あ、市役所の人ですね?
あんまり見ないな…。
あ、ボク、この4月から【環境衛生課】に異動してきた、藤井蓮です。
よろしくお願いします。
わたしは、逢沢唯!
わたしも4月からこの仕事を始めました!
若い女性なんて珍しいですね?
前は、世間でいう、OLって仕事してたんですけど、体を動かす仕事の方が好きだなって思って。
蓮は、だからってゴミ収集車の運転手じゃなくたってと思った。
さっきのオバサンが、
話してないで、サッサとゴミ持ってって頂戴。
臭くてかなわないわ!
唯一は、ごめんなさい!すぐに回収します!
蓮の貼った違反シールを手に持とうと唯が手を出すと、蓮は、これは違反です。回収しないでください。
唯は困った顔して、だけど放置したらカラスやネコが漁ってぐちゃぐちゃになるんですよ?
理屈はわかりますが…。
蓮は頑なに、これは決まりです!
一歩も譲らない。
じゃあ、わたしがそのプラスチックを抜きます。
どいてください!
唯は軍手をはめると、臭い汁が垂れている、可燃のゴミ袋に手を突っ込んだ。
これですよね?
ソースがベットリと付いたコンビニ弁当容器を取り出した。
これでいいですよね?
唯は、その汚いコンビニ弁当容器をパッカー車のカゴの方に載せた。
そうすると唯は、150cmあるかないかの体からは想像できない力でゴミ袋をパッカー車に次々と放り込んでいく。
じゃ、わたしはこれで!
大型パッカー車に飛び乗ると窓を開けて
さっきはごめんなさい!蓮さんは悪くないのに。
だけど、これが現実なんです!
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