表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
規格外の実力を持つ俺、学園で唯一の最低ランク〜誰にも理解されないまま無双してしまう〜  作者: vastum


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
58/90

■第58話「世界が敵になる瞬間」

 空気が、変わったのは一瞬だった。


 街の外れ。


 人の気配が薄くなるその境界。


 そこに、カイルは立っていた。


 何もしていない。


 ただ、そこにいる。


 それだけで。


 空間が、歪んでいた。


 地面が、わずかに波打つ。


 風が、避ける。


 音が、遅れる。


 その中心に、カイルがいる。


(……来るな)


 考える前に、分かる。


 これは、今までとは違う。


 処理班ではない。


 空白でもない。


 もっと大きい。


 もっと、根本的なもの。


 その瞬間。


 空が、割れた。


 音はない。


 だが、確実に。


 空間が、裂ける。


 光でも闇でもない何かが、そこから落ちてくる。


 形を持たない。


 だが、“圧”がある。


「……対象確認」


 声が響く。


 どこからでもない。


 空間そのものから。


異端ノイズ


 その言葉で、世界が反応する。


 地面が固まる。


 空気が止まる。


 重力が、わずかに増す。


 カイルの体が、ほんの少しだけ沈む。


 初めてだった。


 “環境そのものが干渉してくる”。


「排除不可」


「封鎖困難」


「再定義を実行する」


 その言葉と同時に。


 世界が、書き換わる。


 空が消える。


 地面が消える。


 街が消える。


 残るのは。


 ただの空間。


 だが。


 今までの“空白”とは違う。


 これは。


 “定義された空間”。


 カイルの位置が、固定される。


 逃げ場はない。


 ズレも、成立しない。


 ただ、“そこにある”。


 レイヴンたちは、少し離れた場所にいた。


 だが。


 その距離が、異常だった。


「……おい」


 グレンが声を上げる。


「遠すぎだろ」


 目の前にいるはずのカイルが、遠い。


 何十メートルも離れているように見える。


 だが、実際は数歩。


 ナナが言う。


「距離が伸ばされてる」


「は?」


「干渉させないため」


 つまり。


 カイルと、それ以外を分断している。


 セラが笑う。


「いいね」


 だが、その声は届かない。


 完全に。


 カイルのいる空間が、切り離されている。


 世界の声が続く。


「第一定義」


「位置固定」


 カイルが動こうとする。


 だが。


 動かない。


 完全に。


 体は動いている。


 だが、位置が変わらない。


 空間そのものが、拒否している。


(……なるほど)


 カイルは理解する。


 逃げる。


 避ける。


 そういう概念を、消されている。


 なら。


 関係ない。


 カイルは、その場で立つ。


 何もせずに。


 その瞬間。


 空間が、わずかに揺れる。


「……誤差」


 世界が反応する。


「第二定義」


「影響分散」


 カイルの周囲の歪みが、広がる。


 薄くなる。


 街全体に、分散される。


 ナナが言う。


「来てる」


「何がだよ」


「全体化」


 つまり。


 カイルの異常を、薄めることで制御する。


 セラが笑う。


「いいね」


 だが、その声は少しだけ歪む。


 グレンが叫ぶ。


「おい、これやばいって!」


 レイヴンが言う。


「落ち着け」


「まだ終わってねえ」


 その瞬間。


 空間に、無数の線が走る。


 今までの処理班のものとは違う。


 もっと細かく。


 もっと正確に。


 カイルの体に、重なる。


「第三定義」


「構造解析」


 その言葉で。


 カイルの体が、わずかに透ける。


 内部構造が、見える。


 骨でも、筋肉でもない。


 “何か”。


 グレンが息を呑む。


「……なんだよ、あれ」


 ナナが言う。


「見られてる」


 レイヴンが低く言う。


「完全に」


 セラが笑う。


「いいね」


 その瞬間。


 カイルが、動く。


 一歩。


 踏み出す。


 その動きは、固定されているはずだった。


 だが。


 進む。


 ほんのわずかに。


 空間が、軋む。


 線が、ズレる。


「……不一致」


 世界が言う。


 カイルは、もう一歩。


 踏み出す。


 さらに進む。


 固定が、崩れる。


 グレンが叫ぶ。


「動いてる!」


 レイヴンが笑う。


「やっぱりな」


 ナナが言う。


「通じてない」


 セラが楽しそうに笑う。


「いいね」


 世界が反応する。


「再定義」


「強制適用」


 その瞬間。


 空間が、さらに固まる。


 今度は。


 カイルの体そのものが、固定される。


 完全に。


 指一本、動かない。


 グレンが叫ぶ。


「……止まった!」


 レイヴンが歯を食いしばる。


「くそ」


 ナナが言う。


「限界」


 セラが小さく笑う。


「いいね」


 その瞬間。


 カイルの周囲の空間が、歪む。


 何もしていない。


 だが。


 歪む。


 固定が、崩れる。


 ゆっくりと。


 確実に。


 カイルの指が、動く。


 ほんのわずかに。


 だが。


 確実に。


「……解除」


 世界が言う。


 だが。


 遅い。


 カイルが、完全に動く。


 一歩。


 踏み出す。


 その瞬間。


 空間が、弾ける。


 音が戻る。


 風が戻る。


 重力が戻る。


 グレンが息を吸い込む。


「……っ!」


 レイヴンが笑う。


「やるな」


 ナナが言う。


「通じない」


 セラが楽しそうに笑う。


「いいね」


 世界が、初めて沈黙する。


 そして。


「……確認」


 低く言う。


異端ノイズ


 一拍。


「危険度更新」


 その言葉が、重く落ちる。


 空が、再び歪む。


 今度は、さらに大きく。


 さらに深く。


 カイルは、前を見る。


 静かに。


 だが、確実に。


 進む。


 世界と、対峙しながら。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ