表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
規格外の実力を持つ俺、学園で唯一の最低ランク〜誰にも理解されないまま無双してしまう〜  作者: vastum


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
57/90

■第57話「広がる違和」

 夕方の街は、変わらず穏やかだった。


 人が行き交い、店先には灯りが灯り始める。


 笑い声も、呼び声も、いつもと同じように流れている。


 だが。


 その中に、確実に“ズレ”があった。


「……なあ」


 グレンが小さく言う。


「これ、さ」


 言葉を選ぶ。


「さっきより、増えてないか?」


 レイヴンはすぐに答えなかった。


 周囲をじっと見ている。


 人の流れ。


 足の運び。


 声のタイミング。


 すべてを観察している。


 そして。


「……増えてるな」


 低く言う。


 ナナが頷く。


「広がってる」


 セラは楽しそうに笑う。


「いいね」


 だが、その笑いは今までとは違う。


 ほんのわずかに、音が重なる。


 一瞬だけ。


 グレンが顔をしかめる。


「……それやめろ」


「気持ち悪い」


「ひどいなあ」


 セラは軽く言う。


 だが。


 その“軽さ”が、どこか浮いている。


 ナナが静かに言う。


「セラだけじゃない」


「は?」


「周囲」


 その言葉に、全員が改めて街を見る。


 最初は分からない。


 普通だ。


 何もおかしくない。


 だが。


 よく見ると。


 人の動きが、ほんの一瞬だけ止まる。


 そして、続く。


 会話の間が、微妙にズレる。


 笑い声が、少しだけ遅れる。


「……おい」


 グレンの声が震える。


「これ、全員じゃねえか」


「全員じゃない」


 ナナが言う。


「一部」


「でも」


 一拍。


「増えてる」


 つまり。


 感染ではない。


 だが、確実に広がっている。


 レイヴンが言う。


「原因は分かってる」


「……カイルか」


 グレンが呟く。


 ナナが頷く。


「影響」


 セラが笑う。


「いいね」


 だが、その声は二重に響く。


 今度は、はっきりと。


 グレンが後ずさる。


「……やばいって」


 その時だった。


 通りの中央。


 一人の男が、立ち止まる。


 普通の人間。


 服装も、動きも、何も変わらない。


 だが。


 その男の影が、動かない。


 本人が歩いているのに。


 影だけが、止まっている。


「……見たか」


 レイヴンが低く言う。


「見た」


 ナナが答える。


 グレンが固まる。


「いや、今の」


 男は、何も気づいていない。


 普通に歩く。


 影は、そのまま置いていかれる。


 そして。


 数歩後。


 影が、追いつく。


 何事もなかったかのように。


「……おい」


 グレンが呟く。


「これ、普通じゃねえぞ」


「当たり前だ」


 レイヴンが言う。


 セラが楽しそうに笑う。


「いいね」


 その時。


 別の場所で、声が上がる。


「……あれ?」


 女の声。


 小さく。


「今、誰かいた?」


 振り返る。


 誰もいない。


 だが、確かに“いた”。


 その感覚だけが残る。


 ナナが言う。


「欠落」


「は?」


「存在が抜けてる」


 つまり。


 “いたものが消える”。


 しかも。


 誰も気づかない。


 違和感だけが残る。


 グレンが頭を抱える。


「……やめろって」


「なんだよこれ」


 レイヴンが言う。


「広がってるな」


「完全に」


 その時だった。


 空気が変わる。


 今までとは違う。


 強い。


 だが、押しつぶすような圧ではない。


 “整える”ような圧。


 ナナがすぐに反応する。


「来る」


 その言葉と同時に。


 空間に、線が走る。


 今までよりも明確に。


 街全体に。


 無数に。


 交差する。


「……またかよ」


 グレンが呟く。


 だが。


 今回は違う。


 線が、人に触れる。


 そして。


 “固定される”。


 影が、戻る。


 ズレが、消える。


 声が、正常になる。


 違和感が、消えていく。


「……戻ってる?」


 グレンが言う。


 ナナが首を振る。


「違う」


「上書き」


 つまり。


 元に戻したのではない。


 “整えた”。


 処理班が現れる。


 今度は数が違う。


 街全体に。


 無数に。


 同時に。


 同じ動きで。


 レイヴンが言う。


「……本格的に来たな」


 処理班の一人が口を開く。


「対象拡張」


異端ノイズ


「影響範囲、街全域」


 その言葉で、全てが確定する。


 グレンが呟く。


「……街ごとかよ」


 ナナが言う。


「止めに来てる」


 セラが笑う。


「いいね」


 処理班が続ける。


「段階移行」


「封鎖レベル上昇」


 その瞬間。


 空気が重くなる。


 動きが、制限される。


 完全ではない。


 だが。


 確実に、自由が減る。


 グレンが叫ぶ。


「おい、これやばいって!」


 レイヴンが言う。


「もう“個”じゃねえな」


「街ごと対象だ」


 ナナが静かに言う。


「間に合わない」


「何がだ」


「拡張」


 その言葉が、重く落ちる。


 セラが笑う。


「いいね」


 その笑いが、また二重に響く。


 今度は、消えない。


 重なったまま。


 グレンが後ずさる。


「……やばいって」


 その時だった。


 遠く。


 街の外れ。


 空気が、歪む。


 明確に。


 強く。


 レイヴンが目を細める。


「……来たな」


 ナナが言う。


「中心」


 つまり。


 カイル。


 その存在が、再び動き出している。


 処理班の動きが、変わる。


 一斉に。


 そちらを見る。


「優先対象変更」


異端ノイズ本体」


 その言葉で。


 全てが動き出す。


 グレンが呟く。


「……これ、やばいぞ」


 レイヴンが笑う。


「今さらだな」


 セラが楽しそうに言う。


「いいね」


 ナナが静かに前を見る。


 そして。


「行く」


 短く言う。


 全員が動く。


 街の中を。


 歪みの中を。


 中心へ。


 そこに。


 全ての答えがある。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ