■第17話「外の基準」
森を抜けた先に、それはあった。
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街。
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だが、学園の近くのものとは違う。
もっと雑で。
もっと荒くて。
そして。
――強い匂いがする。
(……なるほど)
カイルは思う。
ここは、“選ばれた場所”じゃない。
誰でもいる。
誰でも来る。
その代わり。
――“結果でしか見られない”。
「着いたぞ」
ディアスが言う。
「ここが今回の拠点だ」
門をくぐる。
中は騒がしかった。
声。
笑い。
怒号。
酒の匂い。
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完全に別世界だった。
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「うわ……」
グレンが顔をしかめる。
「なんか濃いな……」
「いいじゃん」
セラが笑う。
「分かりやすい」
「どこがだよ……」
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ナナは、静かに周囲を見ている。
だが、その目は鋭い。
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カイルは、ただ歩く。
(……見られてるな)
学園とは違う視線。
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値踏み。
興味。
そして。
――“敵か味方か”。
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分かりやすい。
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「こっちだ」
ディアスが案内する。
建物に入る。
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中は、さらに騒がしい。
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冒険者ギルド。
依頼掲示板。
カウンター。
酒場。
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すべてが一体になっている。
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「おいディアス」
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声が飛ぶ。
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振り返る。
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一人の男が立っていた。
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軽装。
だが、隙がない。
「レイヴンか」
ディアスが言う。
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「久しぶりだな」
「そっちは相変わらず堅いな」
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軽く笑う。
だが、目は鋭い。
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「それで」
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視線が動く。
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カイルへ。
「こいつか」
空気が、わずかに張る。
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「そうだ」
ディアスが答える。
レイヴンは、じっとカイルを見る。
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数秒。
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長い。
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「……へえ」
それだけだった。
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「普通だな」
「よく言われる」
レイヴンは、少しだけ笑った。
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「でもよ」
一歩、近づく。
「普通じゃねえだろ」
「そうらしいな」
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軽い返答。
だが。
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レイヴンの目が、わずかに変わる。
「……いいな」
低く呟く。
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「ちゃんと“分かってない”顔してる」
その言葉に、セラが笑う。
「分かる?」
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「分かる」
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レイヴンは頷く。
「こういうやつはな」
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一瞬、間を置く。
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「一番厄介だ」
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グレンが小さく震える。
「……やっぱやばいな」
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ディアスが口を開く。
「無駄話はいい」
「分かってるよ」
レイヴンは軽く手を振る。
「で、依頼の件だが」
空気が少し変わる。
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「最近、この辺りで妙な連中が動いてる」
「確認済みだ」
「そいつら、ただの冒険者じゃねえ」
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一瞬、視線が鋭くなる。
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「“回収屋”だ」
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その言葉に、カイルは少しだけ反応した。
(……昨日のやつか)
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「狙いは?」
ディアスが聞く。
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「分からん」
レイヴンは肩をすくめる。
「でも」
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カイルを見る。
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「お前だろ」
断言だった。
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グレンが固まる。
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「やっぱりかよ……」
セラは笑う。
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「来たな」
ナナは、静かに目を細める。
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カイルは、何も言わない。
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「で、どうする」
レイヴンが言う。
「守るのか?」
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「様子を見る」
ディアスが答える。
「判断はまだだ」
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「甘いな」
レイヴンは即答する。
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「外はそんなに優しくねえぞ」
一歩、近づく。
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「狙われたら終わりだ」
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カイルを見る。
「特にな」
視線がぶつかる。
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静かな圧。
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「……どうする気だ」
レイヴンが聞く。
カイルは、少し考えた。
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「別に」
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「何も変わらない」
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その答えに。
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レイヴンは、少しだけ笑った。
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「いいね」
「気にしてない」
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「気にしろよ!」
グレンが叫ぶ。
「狙われてんだぞ!?」
「そうだな」
「軽いな!!」
レイヴンが笑う。
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「いいよ」
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「こういうやつはな」
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一瞬、間。
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「どうせ変わらねえ」
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ディアスが言う。
「だからこそ厄介だ」
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レイヴンは頷く。
「同意」
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その時だった。
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入口の方が、騒がしくなる。
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ざわめき。
声。
「……来たか」
レイヴンが呟く。
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全員が振り返る。
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扉の向こう。
数人の影。
ゆっくりと、入ってくる。
同じ匂い。
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昨日の連中と、同じ。
だが。
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“格が違う”。
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(……強いな)
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カイルは思う。
明確に。
ヴァンに近い。
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いや。
少し違う。
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もっと“実戦寄り”。
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「見つけた」
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先頭の男が言う。
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視線が、カイルに向く。
「例外」
その一言で。
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空気が、凍った。




