■第16話「外へ」
学園の外は、広い。
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それは誰でも知っていることだ。
だが、“どれだけ違うか”を知っている者は少ない。
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石造りの門。
重く、古く、それでいて整備された巨大な門。
学園の象徴の一つ。
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その前に、カイルは立っていた。
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(……出るのか)
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特に感慨はない。
ただ。
少しだけ、面倒だと思っている。
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「お前ほんと軽いな……」
横でグレンが言う。
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「初の外任務だぞ?」
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「そうなのか」
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「そうだよ!」
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グレンは頭を抱える。
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「普通もっとこう、緊張とかあるだろ!」
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「ないな」
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「だろうな!」
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セラは楽しそうに門の外を見ている。
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「いいね」
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「何がだ」
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「“外”」
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短く言う。
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「ここからが本番って感じする」
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確かに。
そういう空気はあった。
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門の外には、街が広がっている。
石畳の道。
人の流れ。
馬車。
商人。
冒険者。
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学園とは違う。
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“評価されない世界”。
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「全員揃ったか」
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低い声。
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ディアスだった。
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その後ろには、数人の教師。
そして、数名の生徒。
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今回の外任務メンバー。
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「今回の任務は単純だ」
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ディアスが言う。
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「周辺地域の確認」
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「確認?」
グレンが聞く。
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「最近、妙な動きがある」
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一瞬、間。
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「“外部勢力”のな」
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その言葉に、空気が少しだけ変わる。
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カイルは、何も言わない。
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だが、思い出していた。
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あの男。
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(……あれか)
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「戦闘は想定される」
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ディアスが続ける。
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「だが、無理はするな」
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視線が、一瞬だけカイルに向く。
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「特にお前はな」
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「何でだ」
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「目立つからだ」
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即答だった。
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「そうか」
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「そうだ」
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短いやり取り。
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「では、出るぞ」
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門が開く。
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重い音。
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外の空気が、流れ込む。
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カイルは一歩、外に出た。
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瞬間。
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(……違うな)
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思う。
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空気。
音。
気配。
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すべてが、違う。
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学園は、整っている。
管理されている。
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だが、外は違う。
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“混ざっている”。
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強いものも。
弱いものも。
危険も。
安全も。
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すべてが、同じ場所にある。
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「……嫌な感じするな」
グレンが言う。
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「分かる」
セラが笑う。
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「いい感じに“雑”」
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「褒めてんのかそれ……」
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街を抜ける。
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人の流れが減る。
建物が少なくなる。
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やがて。
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森が見えてきた。
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「ここから先だ」
ディアスが言う。
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「注意しろ」
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空気が、変わる。
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静かになる。
音が減る。
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森の中は、別の世界だった。
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光が遮られる。
風が変わる。
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そして。
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“何かいる”。
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(……いるな)
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カイルは思う。
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気配。
だが、明確ではない。
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“見えていない”。
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「止まれ」
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ディアスの声。
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全員が止まる。
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「前方、三」
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短く言う。
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グレンが身構える。
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「三?」
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「人だ」
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その瞬間。
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前方の影が、動いた。
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現れる。
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三人。
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軽装。
だが、隙がない。
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冒険者。
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いや。
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(……違うな)
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カイルは思う。
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“仕事”の匂いがする。
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「学園の連中か」
先頭の男が言う。
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軽い口調。
だが、目は笑っていない。
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「そうだ」
ディアスが答える。
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「何の用だ」
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「確認だよ」
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男が笑う。
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「最近、面白い話が流れてきてな」
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一歩、近づく。
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「最低ランクが、上位を潰したって」
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視線が、カイルに向く。
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「お前か?」
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「そうらしいな」
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カイルが答える。
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男は、少しだけ目を細めた。
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「へえ」
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「見た感じ、普通だな」
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「よく言われる」
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「でもよ」
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男が一歩踏み込む。
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「普通じゃねえんだろ?」
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空気が張る。
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グレンが小さく呟く。
「……来るぞ」
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セラは笑う。
「いいね」
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ナナは、静かに見ている。
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男が、手を上げる。
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「ちょっとだけ、試させろよ」
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その瞬間。
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動いた。
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速い。
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ヴァンほどではない。
だが、十分に速い。
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拳が来る。
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カイルは。
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動かない。
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当たらない。
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男の目が変わる。
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「……は?」
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次。
さらに速く。
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当たらない。
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カイルの手が伸びる。
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触れる。
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男の体が、崩れる。
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「なっ……!?」
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地面に膝が落ちる。
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静寂。
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残りの二人が動く。
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同時に。
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左右から。
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だが。
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当たらない。
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触れる。
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崩れる。
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終わり。
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数秒。
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完全な静寂。
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「……何だ今の」
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ディアスが呟く。
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初めてだった。
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教師側が、言葉を失うのは。
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男たちは、立てない。
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崩れたまま。
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「……やっぱりか」
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倒れた男が、笑った。
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「噂通りだな」
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カイルは何も言わない。
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「おい」
男が言う。
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「気をつけろよ」
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「何をだ」
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「もう見られてるぞ」
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一瞬、間。
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「“外”に」
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その言葉は、軽くなかった。
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カイルは少しだけ考える。
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(……そうか)
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理解する。
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もう。
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学園の中だけじゃない。
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この異常は。
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“外”に出た。
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男たちは立ち上がらないまま、笑った。
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「また会おうぜ」
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それだけ言って。
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消えた。
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森の中に。
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静寂が戻る。
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グレンが、ゆっくりと口を開く。
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「……なあ」
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「何だ」
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「これ、やばくね?」
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「多分な」
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セラが笑う。
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「いいじゃん」
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「よくねえよ!」
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カイルは空を見上げた。
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木々の隙間から見える空。
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変わらない。
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だが。
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(……面倒だな)
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確実に。
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世界が、広がっている。




