表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
規格外の実力を持つ俺、学園で唯一の最低ランク〜誰にも理解されないまま無双してしまう〜  作者: vastum


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/41

■第13話「崩れた基準」

 静寂は、数秒だけだった。



「……は?」


 誰かの声。


 それをきっかけに。


 空気が、壊れた。



「勝った……?」


「今の、どうなった!?」


「ヴァンが……負けたのか?」



 ざわめきが爆発する。


 声が重なり、広がり、止まらない。


 誰もが同じことを言っている。


 だが。


 誰も、同じ理解をしていない。



 中央。


 カイルは、ただ立っていた。


 いつもと同じ。


 何も変わらない。


 だが。


 周囲の“すべて”が変わっていた。



「……マジかよ」


 グレンが呟く。


 声が震えている。


「……ヴァン、だぞ」


 現実を確認するように言う。


「三年の……あのヴァンが……」


 言葉が続かない。



 セラは、笑っていた。


 いつも通り。


 だが、少しだけ違う。


「いいね」


 小さく呟く。


「やっぱそうなるか」


「“やっぱ”で済ませるな……!」


 グレンが叫ぶ。


 だが、セラは肩をすくめるだけだった。



 ナナは、何も言わない。


 ただ、じっとカイルを見ている。


 目が、さっきまでと違う。


 “理解しようとする目”。



 中央では。


 ヴァンが、ゆっくりと立ち上がっていた。



 ふらつきはない。


 だが、完全に整ってもいない。


 呼吸が、わずかに乱れている。


 それでも。


 姿勢は崩れない。



「……完敗だ」


 改めて、口にする。


 その声は、静かだった。


 だが。


 よく通る。



 ざわめきが、さらに広がる。


「認めたぞ……!」


「本人が言った……!」



 ヴァンは気にしない。


 視線は、カイルに向けられたまま。



「理解できなかった」


 はっきりと言う。


「最後まで」



 カイルは、何も答えない。



「だが」


 ヴァンは続ける。


「理解できないこと自体は、問題ではない」


 その言葉に、周囲が静まる。



「問題なのは」


 ほんのわずか、間を置く。



「“理解の外にあるものが存在する”という事実だ」



 その言葉は。


 この場にいる全員に刺さった。



 学園は、評価で成り立っている。


 ランク。


 順位。


 数値。


 すべてが“測れる”ことを前提としている。



 だが。


 今、目の前で。


 それが崩れた。



「……やばいな」


 グレンが呟く。


「何がだ」


 カイルが聞く。



「全部だよ」


 即答だった。



「今のはな」


 グレンは周囲を見る。


 ざわめき。


 混乱。


 理解不能。



「“基準が壊れた瞬間”だ」



 その言葉は、正しかった。



 ディアスが前に出る。


 ざわめきが、少しだけ収まる。



「試合は終了だ」


 短く言う。


 だが、その声にもわずかな重みがあった。



「勝者、カイル」



 その一言で。


 再び、ざわめきが爆発する。



「最低ランクが……!」


「ヴァンに勝った!?」


「ありえねえ……!」



 だが。


 誰も否定できない。


 結果は、そこにある。



 カイルは、小さく息を吐いた。


(……面倒だな)



 その時だった。



「――カイル」



 低い声。


 ディアスだった。



「少し来い」



 拒否権はない。


 カイルは、何も言わずに歩き出す。



 背後で。


 ざわめきが、さらに広がっていく。



 教員棟。



 重い扉が閉まる。


 外の音が、遮断される。



 室内には、数人の教師がいた。


 全員、無言でカイルを見る。



「座れ」


 ディアスが言う。



 カイルは椅子に座る。


 空気が重い。



「一つ聞く」


 ディアスが言う。



「何をした」



 短い質問。



「何も」


 カイルは答える。



 沈黙。



「ふざけているのか?」


「ふざけてない」



「では説明しろ」


「できない」



 再び、沈黙。



 教師たちの表情が変わる。


 苛立ちではない。


 困惑でもない。



 ――“判断不能”。



「……本当に分からないのか」


 別の教師が言う。



「分からない」



 即答。



 ディアスは、しばらくカイルを見ていた。



「……いい」


 やがて言う。



「無理に説明しろとは言わん」



 その言葉に、他の教師が少しだけ驚く。



「だが」


 ディアスの声が低くなる。



「お前は“例外”だ」



 はっきりと。



「この学園の基準から外れている」



 カイルは何も言わない。



「そして」


 一瞬、間を置く。



「それは、放置できる範囲を超えた」



 その言葉は重かった。



「今後、お前の戦闘は記録される」


「そうか」



「監視もつく」


「そうか」



「……理解しているのか」



「面倒だなとは思ってる」



 ディアスは、小さく息を吐いた。



「それでいい」



 短く言う。



「下手に理解されるよりはな」



 その言葉は、意外だった。



「行っていい」



 カイルは立ち上がる。


 そのまま、部屋を出た。



 廊下。



 音が戻る。


 ざわめきが、遠くから聞こえる。



(……変わったな)



 昨日までとは違う。


 完全に。



 その時。



「カイル」



 振り返る。



 ヴァンだった。



 一人で立っている。



「どうした」



「一つだけ」



 近づく。



「君は」


 静かに言う。



「“どこまでズラせる”?」



 意味は、分からない。


 だが。


 問いとしては、理解できる。



 カイルは少し考えた。



「さあな」



 同じ答え。



 ヴァンは、わずかに笑った。



「そうか」



 納得ではない。


 だが、受け入れている。



「なら」



 一歩、下がる。



「いずれ、もう一度」



 それだけ言って、去った。



 カイルは、その背中を少しだけ見てから。


 空を見上げた。



 青い空。


 変わらない。



 だが。



(……確実に、面倒になったな)



 小さく息を吐く。



 そして。



 その“面倒”は。


 すでに。



 この学園の外へと、広がり始めていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ