表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
規格外の実力を持つ俺、学園で唯一の最低ランク〜誰にも理解されないまま無双してしまう〜  作者: vastum


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/41

■第12話「踏み込んだ先」

 空気が、壊れる。



 次の瞬間。


 ヴァンが動いた。



 速い。


 だが、それはもう見慣れている。


 問題はそこじゃない。


 “精度”。


 すべてが噛み合っている。


 迷いがない。


 無駄がない。


 そして。


 ――止まらない。



(……完全に来てるな)


 カイルは思う。


 今までの延長じゃない。


 “踏み込んでいる”。


 結果の側へ。



 拳が来る。


 避ける。


 当たらない。


 だが。


 次。


 さらに次。


 選択肢が潰されていく。


 距離が詰まる。


 逃げ場が消える。



「……っ」


 カイルの足が、わずかに止まる。



 その一瞬。


 ヴァンの拳が――


 “届いた”。



 鈍い音。


 カイルの体が、わずかに揺れる。



 観客が叫ぶ。


「当たった!!」


「初めて当たったぞ!!」



 完全な直撃ではない。


 だが。


 確実に、触れた。



 カイルは一歩、後ろに下がる。


 静かに。


 何事もなかったかのように。



(……なるほど)


 思う。


 分かる。


 この男は。


 ――“届く”。



「やっとだ」


 ヴァンが言う。


 息は乱れていない。


 だが、目は完全に熱を帯びている。


「触れた」


 カイルを見る。


「これで、条件が揃った」



 意味が分からない。


 だが。


 空気は理解していた。


 ――ここからが本番だと。



 ヴァンが踏み込む。



 今までとは違う。


 “選択しない”。


 最初から決めている。


 最短。


 最速。


 最適。



 拳が来る。


 カイルが動く。


 だが。


 ズレが、間に合わない。



 当たる。



 その瞬間。



 カイルの目が、わずかに変わった。



(……少しだけ、上げるか)



 ほんの少し。


 本当に、ほんの少し。


 “合わせる量”を変える。



 世界が、ずれる。



 ヴァンの拳が来る。


 完璧な一撃。


 避けられない。


 ――はずだった。



 だが。



 “当たった後に、外れていた”。



「……は?」


 ヴァンの声。



 拳は確かに触れた。


 感触があった。


 だが。


 結果が、成立していない。



 カイルの手が伸びる。


 触れる。


 それだけ。



 ヴァンの体が、揺れる。



「……!」


 踏みとどまる。


 崩れない。


 だが。


 確実に、ズレる。



(……これでも耐えるか)


 カイルは思う。


 やはり。


 この男は特別だ。



 ヴァンが距離を取る。


 呼吸が、初めて乱れる。


「……今のは」


 言葉が止まる。


 理解が追いつかない。



「当たった」


 自分で言う。


「だが」


 拳を見る。


「成立していない」



 カイルは何も言わない。



「……そうか」


 ヴァンが小さく笑う。


 納得ではない。


 だが、受け入れた。



「そこまで行くか」



 構える。


 完全に。


 すべてを出す形。



 空気が震える。


 観客が息を呑む。



「最後だ」


 ヴァンが言う。



 次の瞬間。



 すべてが消えた。



 音も。


 風も。


 気配も。



 ただ。


 “結果だけが来る”。



 拳。



 カイルは。


 ――何もしない。



 ただ、手を出す。



 触れる。



 その瞬間。



 すべてが、崩れた。



 ヴァンの体が止まる。


 いや。


 止められる。



 膝が落ちる。



 静寂。



 完全な、静寂。



「……そこまで」


 ディアスの声。



 勝敗が、決まる。



 誰も、動けない。


 誰も、理解できない。



 ただ一つ。


 確かなこと。



 ――カイルが勝った。



 ヴァンが、ゆっくりと顔を上げる。


 息が乱れている。


 だが、目は澄んでいる。



「……完敗だ」



 その一言で。


 空気が、壊れた。



 ざわめきが爆発する。


「勝った……!」


「ヴァンが負けた!?」


「何が起きたんだよ!!」



 誰にも分からない。



 カイルは、ただ立っていた。


 いつも通り。


 何も変わらない。



 ヴァンが立ち上がる。


 ゆっくりと。



「一つだけ」


 言う。



「君は」


 少しだけ間を置く。



「どこまで行ける?」



 カイルは少し考えた。



「さあな」



 答えは、ない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ