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婚約破棄された公爵令嬢は辺境伯に溺愛される~戻ってこい? お断りします~  作者: 冬木ゆあ


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第6話 王命

 王室主催の新年会が今年も開かれた。

 アメリア、ルイス、ロバート、ヴァネッサは、そろってアメリアの実家から馬車で王城へと向かった。

 アメリアは深緑のドレスに、白いファーを纏い、ルイスの手を借りて馬車から降りた。昨年は、アメリアは出席しなかったので、王都を出てからはじめての新年会である。ルイスの腕に手を添えてアメリアは会場へと入っていった。

 すでにパーティははじまっていて、賑やかな雰囲気に包まれていた。アメリアのもとに茶髪の赤いドレスを着た女性が近づいてきた。


「アメリア!」

「ローズ!」


 二人は手を握り合い、再会を喜んだ。アメリアはルイスに視線を向けた。


「貴族学院時代の友達のローズよ」


 ローズはルイスにお辞儀をした。


「お初にお目にかかります。ローズ・ケーシーです」

「ルイス・ムーアです」


 ルイスもローズにお辞儀を返した。

 ローズはアメリアの腕をとり、こっそりと耳打ちした。


「手紙で聞いていたよりいい男じゃない」


 アメリアは苦笑した。それと同時に変わっていないローズにほっとした。


「ダニエルは? 一緒じゃないの?」


 ローズは呆れた視線を背後に向けた。そこには男友達と談笑しているダニエルの姿があった。


「婚約者をほったらかして、なにやら盛り上がっているわ」


 アメリアはふふっと笑った。それを見たローズは、微笑みながらアメリアの肩に手を置いた。


「元気そうでよかった。手紙だけだと心配だったのよ。会えてよかった」

「私もよ、ローズ」


 ローズはアメリアに近寄り、声を落として言った。


「ジュリアン殿下、今回もひとりでいらしているわ。さっきまでいらしたけど、今は姿が見えないわね」

「エミリー嬢は?」


 ローズは首を横に振った。


「卒業後、アメリアはすぐにムーア領にいってしまったから知らないのね。エミリー嬢もいっさい社交界には出ていないわ」

「まぁ、どうして?」


 ローズは肩をすくめて、首を横に傾げた。

 しばらくローズと談笑していると、ボーイがアメリアに声をかけてきた。


「陛下がお呼びです。ムーア伯爵もご一緒にいらしてください」


 アメリアとルイスはお互い顔を見合わせた。それから、アメリアはローズに視線を向けた。


「ちょっといってくるわね」


 ローズは手を振り、二人を見送った。

 アメリアはルイスの腕を掴む手が震えた。嫌な予感がするのだ。ルイスはそんなアメリアを慰めるように手を重ねた。

 ボーイについていき、辿り着いた場所は応接間だった。室内には、王であるサイモンがソファーに座り、その左脇には険しい顔をしているロバートとハンカチで涙を抑えているヴァネッサ、右脇には青白い顔で立っているジュリアンがいた。アメリアの嫌な予感は確信へと変わった。

 アメリアとルイスがサイモンに挨拶しようとすると、サイモンはそれを手で制した。


「挨拶はいい。そこに座りなさい」


 すすめられた向かいのソファーにアメリアとルイスは座った。サイモンはそれを確認して、話しはじめた。


「まずは二人に謝罪をしなければならない。愚息が、迷惑をかけて申し訳ない」


 サイモンが深々と頭を下げたので、アメリアは腰を浮かせた。


「陛下、どうかおやめください」


 サイモンは顔を上げ、小さくため息をつく。


「ジュリアンがしでかしたことは、アメリア嬢に対して、失礼極まりないことだ。しかし、あのときはこのような事態になるとは思わなんだ。こんなことならば、ジュリアンが婚約破棄をしたと知ったときに、あなたに頭を下げて、撤回するべきだった」


 アメリアはルイスの膝に手を置いた。その手は震えていて、ルイスはその手を優しく包んだ。それを横目で見ながらサイモンは話を続けた。


「二人を繋げたのは、このわしだったな。ムーア伯爵も巻き込むことになってしまった。だが、申し訳ない。アメリア嬢にジュリアンの婚約者に戻っていただきたい。そして、重ねてのお願いだが、エミリー嬢の側妃についても、ご容赦いただきたい。ジュリアンとの噂で、あちらも婚約が破棄になっている。責任をとらなければならない」


 サイモンは深くため息をつき、あご髭に手をやった。しばらく間をおいてから、サイモンはまた口を開いた。


「……アメリア嬢の子のみに王位継承権を与える。それで、どうか許してはもらえないだろうか。わしはあなたが未来の王妃に一番相応しいと、ずっと思っている」


 また頭を下げたサイモンに、アメリアは静かに言った。


「陛下、おやめください。承知いたしますから……」


 ルイスは、はっとアメリアの横顔を見た。アメリアは部屋にいる全員の顔をゆっくりと眺めながら言った。


「最後にルイと二人きりにさせてください」


 サイモンは立ち上がり、うなずいた。


「さぁ、わしたちはいったん部屋を出よう」


 全員が部屋を出てすぐに、ルイスはアメリアを抱きしめた。


「いやだ。アメリア……」


 アメリアは震えているルイスの背に手をやった。


「これは王命です。逆らえば、私だけでなく、両親や、ルイ、あなたまでこの国にはいられなくなってしまう……」


 そこまで言って、アメリアの瞳から涙がこぼれた。ぎゅっとルイスの服を握った。


「ルイ、愛しています。離れたくない……!」

「アメリア……」

「けれど、あなたには守るべき領民がいるでしょう。私たちの身勝手で、彼らの生活を危険にさらしてはいけない……」


 二人は離れ、お互い涙を流しながら見つめ合い、最後のキスをした。

 そして、二人は部屋を出た。ルイスはサイモンたちにお辞儀をし、その場を去った。アメリアはその背中を見送り、最後に一筋だけ涙を流した。

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