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偏差値70なのに恋愛経験0の二人の理性が崩壊するまで〜財前慶一郎と伊集院桜子の恋  作者: 間宮芽衣


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第四十一話◇桜の咲く頃に。〜伊集院桜子視点


◇◇ 伊集院桜子視点


「──時間です。筆記用具を置いて下さい!」


試験官のその言葉で一斉にカリカリという音が止む。


 ──二日間の共通試験がようやく終わりました。


(──やれることはやりました。手応えはありましたわ。見直しの時間もきちんと取れましたし)


私はぎゅっとポケットの中のお守りを握りしめます。


 ──今頃慶一郎様もホッとしていらっしゃる頃でしょうか。


「やっと、終わったー!!」

「おい、ラーメン食って帰ろうぜ!」


周りで試験を受けていた皆さんも肩の荷が降りたような顔をしており、なんだか顔が綻んでしまいます。


(…慶一郎様がお勧めしてくださった参考書と同じ問題が出ましたわ。)


もう窓の外はすっかりと陽が落ちておりました。


 私はいそいそとケロちゃんのペンケースに筆記用具を仕舞うと、試験会場を出て渋谷に向かいました。


 ──今日は朱里さんと二人でご飯を食べに行く予定です。


 自己採点をしたら眠れなくなってしまいそうなのでこの日はもう出かけてしまおう、と約束したのです。


 朱里さんは私大文系なので、共通試験は昨日で終わり、渋谷で待ち合わせをしました。


 ハチ公前は混むので、朱里さんが家具を見たいと言ったのもありIKEAで待ち合わせしました。


(今日は門限が21時です!)


なんだか悪い事をしているようでワクワクしてしまいます。


 普段の門限は20時ですが、今日ばかりは試験が終わるのが六時過ぎなので特別に母が許可をくれたのです。


 その代わり、永井さんは帰宅しているのでタクシーで帰ることになっています。


『IKEAに着きました。今どこですか?』


朱里さんにメッセージをすぐに返ってきました。


『3階にいるよ! 今ラグのコーナーをうろうろしてる。』

『では、3階にいきますね』


3階に上がると朱里さんが真剣な顔でラグを見比べていました。


「朱里さんっ!」


私に気がつくと、パッと笑顔になりました。


「桜子ー!!試験どうだった?」


そう言って労いの声をかけてくださいました。


「はい。理数科目も大きなケアレスミスが無ければ大丈夫だと思います。」


「良かった!私も昨日は緊張したなぁ…。ねえねえ、NHKの近くにお洒落なカフェがあるみたいだから、そこに行こうよ。」


朱里さんの言葉に私は頷き、二人で並んで歩き出しました。


「今日は何か買ったんですか?」

「んーん、見てただけ。大学生活で使う家具を見てたらさ、モチベーション上がるかな…なんて。」


その言葉に思わず笑ってしまいます。


「ふふっ、気が早いですね。」


「最近、やる気が落ちてきたら『どんな部屋にしようかな』ってことばっかり考えてるよ。 初めての一人暮らしだし。」


そんな事を話しているうちにカフェに着きました。


 暖色系の照明の店内にはジャズが流れており、ゆったりと座れそうな茶色い革張りのソファが置いてありました。デートの方や、お友達同士やOLさん、色んなお客さんがゆったりと過ごしています。

 

「わぁ、素敵なお店ですね。」

「ねっ!桜子何頼むー?」


私はキャラメルラテとデミグラスオムライスのプレートを、朱里さんはジンジャエールとハンバーガーのプレートを注文しました。


「…実はこのお店、四之宮君に教えてもらったんだ。」


照れたように言う朱里さんに思わず目を丸くしてしまいます。


「そうだったんですね。結構連絡取ってるんですか?」


「…うーん。受験勉強もあるから頻繁に連絡来ると嫌だろうし。本当にたまにだけど。


 向こうから連絡くれたのは、財前君が倒れた時くらいかな。


 ──あーあ、本当はバレンタインもチョコを渡したいけど負担になっちゃったらやだしなぁ。」


(…確かにバレンタインがありましたけど、受験前ですし。流石に私に行くのは負担になってしまいそうですわね。)


「でしたら私、慶一郎様にチョコレートをお送りするので、あかりさんの分も一緒に入れませんか?

 

 四之宮さんに渡して欲しいって。」


その言葉にジワジワと朱里さんの顔が赤くなります。


「えー…、いいのかな。」

「お店を教えてくれた御礼って言えばいいんじゃないですか?


 ──あ、お店で一緒に写真を撮って慶一郎様と四之宮さんに送りましょうよ。」


私は手の空いている店員さんを見つけると、写真を撮ってくれるようにお願いしました。


「いきますよー!いちたすいちはー?」

「「にー」」


取れた写真は店内の雰囲気も映っており、なかなかいい写真でした。


「ありがとうございます!」

「いいえー。」


朱里さんと一緒に四人のグループラインを作りました。


『共通試験お疲れ様です。二人で打ち上げしてます。』

『四之宮君、お店、教えてくれてありがとう。』


私と朱里さんが一言ずつメッセージを送って写真も送付しました。


「なんて返ってくるかな?」

「ワクワクしますね。」


二人でそんな事を話していると四之宮さんから返信が来ました。


『奇遇だな。僕達も二人で夕飯を食べている。』


下には二人が回転寿司でお食事をしている姿が映っていました。


「ウケるー!四之宮君、回転寿司も行くんだねっ!」


そう言って朱里さんが目をキラキラさせています。


『お疲れ様です。お二人とも試験はどうでしたか?』


慶一郎様からメッセージがきて私は逸る気持で返信をします。


『はい、なかなか手応えがありました』

『私も桜子も結構自信ありだよー。二人は?』


すると、四之宮さんから何故か、『余裕』というゴリラのスタンプが返ってきました。


その下に慶一郎様からも

『僕も大丈夫そうです。』

とメッセージが来て、嬉しくなってしまいました。


「見てー!四之宮君、ゴリラのスタンプ使ってる!可愛いー。」


四之宮さんのスタンプを見て朱里さんが興奮しております。


 今までこんな朱里さんの姿を見ることはあまりなかったので、なんだか微笑ましくなってしまいます。


『次は前期日程や、朱里さんは本命の大学の試験ですね。頑張りましょう』


私がそう打つと、皆さんから一斉に『頑張ろう』という色んなスタンプが送られてきてなんとなく会話が終わりました。


「さてと。あまり遅くなるのも微妙だし帰ろっか。  明日の朝は自己採点しなきゃだし!」


「そうですね。今日はもう何も考えずに寝ましょう。」


そんなことを言いながら私達はカフェを後にしました。


◇◇


──次の日。朝起きると、私は朝食の前にいそいそと自己採点を始めました。


 思っていたよりも点数が良く、嬉しくなってしまいます。


(…良かった。これなら問題なく帝都大の経済学部が受験出来そうですわ。慶一郎様はどうだったのかしら?)


そう思った時にまるで心を読んだかのように、スマートフォンが鳴りました。


『桜子さん、自己採点どうでしたか?僕は大丈夫そうです。』


「よかっ、た…。」


慶一郎様からのメッセージに思わず声を漏らすと慌てて返信します。


『私も大丈夫そうです。』


──会えないけれど心は繋がっているような気がして嬉しくなってしまいます。


 それからも私達は会うこともなく、お互いに前期試験に向けて勉強に打ち込みました。


(慶一郎様と夢のキャンパス生活のためですわ!)


──そして前期日程試験がついに終わり、桜が少しずつ色付き始めた頃。


 私はドキドキしながらパソコンの前に座っていました。


 祈るような気持ちで恐る恐る受験番号を入力します。


『──合格』


画面に表示されたその文字に思わず涙が溢れます。


「お母様!合格でしたわ!!」


勢いよく階段を降りて現れた私を母が抱きしめてくれました。


「──頑張ったわね。」

母は満面の笑みを浮かべて微笑みました。


「──はいっ、本当に良かったです。」


(…慶一郎様はどうなったかしら…?)


不安になって、スマートフォンに電話をしてみましたが出ません。


(…大丈夫だと思うのですが…。)


「っ、お母様っ!ちょっと出かけてきますわ!」


痺れを切らした私は上着を羽織ると家を飛び出します。慶一郎様のお家に会いに行くべく、走って駅に向かいました。


「はぁっ、はぁっ、はぁ、」


(早く慶一郎様に会いたいっ、)


──その時です。スマートフォンの着信音が鳴りました。


『──今どこですか?』


慶一郎様からでした。


「今慶一郎様に会いに行こうと…。駅に向かってます!」


すると息を呑む音がしました。


「──桜子さんっ!!」


声がして振り向くと慶一郎様が走ってくるのが見えました。


「…っ、慶一郎様!!」


すると、彼が嬉しそうにギュッと私を抱きしめました。


「…申し訳ありません。心配かけてしまいましたね。

 桜子さんに直接伝えたくて。──合格しました。」


その言葉に私の目から涙が溢れ出してきました。


「──っ、私も合格しましたっ!!」


すると、彼がさらに笑みを深めました。


「…これからは同じ学校で、毎日会えますね。

  桜子さんと胸を張ってまた会う為に頑張りました。──大好きです。」


「…私も慶一郎様が大好きですっ。」


そう言って彼の背中にそっと腕を回しました。



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