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偏差値70なのに恋愛経験0の二人の理性が崩壊するまで〜財前慶一郎と伊集院桜子の恋  作者: 間宮芽衣


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第四十話◇『続きは受かってからです。』〜財前慶一郎視点


◇◇財前慶一郎視点


「…久しぶりですね。元気でしたか?」


僕はウキウキしながら桜子さんの指に自分の指を絡め合わせながら駅の目の前のカフェに入った。


「…はい。元気でした」

彼女は照れているのか、なかなか僕の方を直視してくれない。


「──良かった。僕はコーヒーにします。桜子さんはカフェオレですか?」


その言葉に彼女が驚いたように顔を上げた。


「…どうしてわかったんですか?」


僕は彼女がやっと僕の目を見てくれて嬉しくなってしまう。


「だって一緒に勉強した時もそうだったじゃないですか。…それより、桜子さんとやっと目が合って嬉しいです」


店員の女性が来たので僕はコーヒーとカフェオレを注文した。


 その間にも彼女の顔がジワジワと紅潮していく。控えめに言ってとても可愛い。


「…もうっ。…あの。プレゼントを渡しても良いでしょうか?」  


そう言われて僕は顔がだらし無くゆるみそうになりながら頷く。


「はい、勿論です」


僕の返事で二人とも紙袋を出して交換する。結構大きなものが入っているようで気になってしまった。


 桜子さんも気になるようで上目遣いで尋ねてくる。


「──開けてみてもいいですか?」

「はい、僕も聞こうと思ってました」


言いながら僕は丁寧に包み紙を剥がしていく。


 すると中には黒のシンプルな四角い加湿器と、紺色のマフラーが入っていた。


「これ…」


僕が驚いて顔を上げると、桜子さんも目を丸くしている。


「…まあ! 慶一郎様まで加湿器を選んでいるとは思わなかったです。ふふっ、お揃いですね」


そう言って彼女が嬉しそうに笑った。


 ──今日会ってからはじめての桜子さんの笑顔に、僕は感動に打ち震えそうになる。


(可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い…!! あー、今日も桜子さんの笑顔はこの世で一番可愛い…。)


僕は早速マフラーを首に巻く。


「──どうですか?」


僕が尋ねると彼女が視線を逸らしてからチラッと僕の方を見た。


 その顔はほのかに赤い。


「…素敵、です」


その表情に僕は胸がキュンキュン締め付けられてしまった。


「…ありがとうございます。桜子さんも相変わらず素敵です」


僕がそう言うと、桜子さんは照れて下を向いてしまった。


 僕が思わず彼女の顎を上げると彼女は真っ赤な顔で目を見開いた。


「…もうすぐ共通試験なのに、慶一郎様のことばっかり考えてしまいそうです」


その言葉に、僕は胸がくすぐったくなり、今すぐ抱きしめたくなってしまった。


 だが、カフェという公共の場だったのでなんとか我慢する。


「──じゃあ受かったら、行きたい所を考えておいて下さい」


僕の言葉に彼女は嬉しそうに笑った。


「…はい。──そろそろ行きましょうか」


桜子さんの言葉でスマートフォンを見ると、もうとっくに三十分経っていた。


「──っ、そうですね」


僕は離れがたくて仕方なかったが、言葉をぐっと飲み込んだ。


 会計を済ませてカフェを出る。


 外に出ると、白い息が出た。


 僕達は手を繋ぎながら駅に向かって無言で歩いた。


 まだ話したい事がいっぱいありすぎて、何を言ったらいいかわからない。


 ──そうしている間に、ついに駅に着いてしまった。


「…それじゃあ、また。」


僕の言葉に彼女が頷く。


「──はい。また。あの、お元気で」


その言葉で繋いでいた手が離れた。僕は決死の思いで駅に入ろうとした。


 ──その時だった。突然グッと腕を桜子さんに引っ張られた。


(…え?)


ちゅ。


驚いて振り返った僕に彼女が背伸びして頰にキスをして来た。


 突然の出来事に照れる前に固まっていると、彼女が泣き笑いのような顔で微笑んでいた。


「──続きは受かってからです。


 あと、受かったらその時は、慶一郎様のしたい事、なんでも一緒にしましょう?」


その言葉に僕は目をカッと見開く。


(──したい事を、なんでも一緒に、だと?)


僕の頭の中に桜子さんとあんなこと、こんな事をしている不埒な妄想がブワッと溢れる。


 そのまま直立不動になっている僕を桜子さんが訝しげに覗き込んでくる。


「…慶一郎様?」


僕はガシッと桜子さんの肩を掴んで真剣な顔で頷く。


「──めちゃくちゃ頑張ります!!」

「…?は、はい。」


僕は平静を装いながら、電車に乗ると『シたい事』についてめちゃくちゃ考える。


「──ただいま戻りました。」


家に帰ってすぐに、洗面所に向かい手洗いうがいをする。


 そして無言でスタスタと自分の部屋に向かっていると、母に遭遇した。


「──あら? 慶一郎。お帰りなさい。なんだかんだで久しぶりに桜子さんに会えたのだから、もう少しゆっくりしてくると思っていたのだけど。」


「いえ、受験生ですから!」


勢いよく言う僕に、母は首を傾げる。


「…そう。まあ、いい心がけね。」


そんな母に僕は頷くと、自分の部屋に入る。


 ──扉を閉めると、『フゥーッ』と息を吐いた。


『受かったらその時は、慶一郎様のしたい事、なんでも一緒にしましょう?』


そして僕は机の前に座ると、目をカッと見開いてから叫んだ。


「──絶対に、受かぁあああある!!!」


こうして僕は合宿で貰った合格ハチマキを身につけ、前にも増してガリガリ勉強し始めた。


◇◇


『慶一郎様。

 お元気ですか?

 いよいよ来週は、共通試験ですね。


 私は慶一郎様に頂いた可愛いウサギさんの加湿器のお陰で、風邪を引くこともなくとても元気です。

 

 最近勉強が辛くなった時は慶一郎様と受かったら行きたい所を考えて、やる気を出しています。


 今の所、行きたい場所は三つあります。


 一つ目は合宿の時にお伝えしたように朱里さんや四之宮さんも交えてテーマパークに皆で行きたいです。


 ちなみに日本最古の遊園地は『浅草花やしき』だそうでして、なんと開園は1853年──江戸時代の末期だったそうです。その年は黒船でマシュー・ペリーが日本に来航し、開国を迫った年でもあります。


 そんな頃から存在する遊園地が明治維新や日中戦争、太平洋戦争を乗り越えて今も親しまれているのはとても浪漫がありますね。


 二つ目は、『婚約の儀』で慶一郎様が仰っていた京都のお店に生麩田楽を食べに行きたいです。


 三つ目は、一緒に大学生活で過ごす物件探しに行きたいです。


 ──出来たら近くに住めたら嬉しいですね。


 その日を楽しみに、私も頑張ります。


 ──桜子より』


クリスマス後も僕達は受験勉強の合間に頻繁に手紙のやり取りをしていた。


 彼女の手紙を眺める度に僕はニヤニヤと妄想しながら勉強に打ち込んだ。


(──京都なら泊まりは確定だな。


 絶対に受かって桜子さんの家の近所に住む。なんならもう一緒に住みたい。婚約もしているんだし、どうせ結婚するんだから許されるんじゃないか?


 うん、そうだ。それがいい。


 …そして毎日あんな事、こんな事…。)


もはやそれが僕の一番のモチベーションになっていた。


 桜子さんににんじんをぶら下げられた僕の勉強へのモチベーションは最高潮になっていた。


 そして、いよいよ共通テスト当日。僕は少しだけ緊張しながら早めに会場に着いた。


(──出来るだけのことはやった)


ちなみに残念ながら桜子さんは別会場である。


「財前、いよいよだな。大丈夫だ。君と僕なら余裕だ。」


隣の四之宮がニヤリと笑う。


「あ、四之宮、財前!いたいた!」


そう言って宮西と和田が手を振っている。


「どこの教室だ?」


和田に言われて四之宮が会場の地図を見る。


「ふむ。向こうの奥の方だな」


(今頃桜子さんも会場に着いた頃だろうか。)


僕は友人達と一緒に指定された席に座る。


 やがて試験官が教室に入って来てスマートフォンが回収された。


 シーンと静まり返る中、試験用紙が順番に配られていき、カサカサと紙の音がする。


「それでは、はじめ!!」


──いよいよ試験が始まった。


(ふむ。予想したより簡単だな。ケアレスミスをしないように注意をしなければ。)


受験生達が一斉に試験に向かい始める。


 会場の中にはシャーペンのカリカリという音だけが響き渡っていた。


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