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失踪夫、夫が失踪した。なぜなんだ?  作者: 井埜利博(いのりはく)
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ホテルの防犯カメラに映っていた人物は?

   五

 深川事務所へ戻り、銀山からの聴き取り内容を深川へ詳しく報告した。


 深川は、

「銀山は嘘を言っているとは思えないなぁ。しかし、教団の幹部からの資金提供を受けていることは認めた訳だ。外務省事務次官とは驚きだ。そんな大物が現われるなんて……。墨田や春平さんを拉致したことを知っている銀山に金を使って黙らせたということだ。しかし、彼が言う通り心中事件には関与していないのかも知れないなぁ」と言った。


「夫が生きていると不都合な奴は誰なのかということだわね。教団のことをペラペラしゃべられ、しかも外務省事務次官もそれに関わっていることが分かったら大変よねぇ」


「柳瀬刑事さんも資料室へ異動になったようですし、警察上部でこの事件をもみ消しにかかっているんじゃない?」と華の鋭い指摘。


「そうかも知れんなぁ。もう一度当日のホテル従業員に確かめてみようか。真里花さん、華、いいか? 私も違った方面から調べてみるけど……」と深川の提案に私も賛成した。


 品川プリンスホテルのフロントで目撃者がいるかも知れない。柳瀬がいなくなった捜査一課はもう当てにならない。前日に墨田彩芽によってホテルの宿泊予約をしたことは確からしい。正確には墨田彩芽の名前で予約してあったのだ。


 翌日、深川、華と私の三人でホテルの支配人を尋ねた。深川は私のことを先日の心中事件の男性の奥様ですと紹介し、夫が心中し傷心の中であるので、是非当日のことを教えて欲しいと話をしたら積極的な姿勢で応じてくれた。


「前日の宿泊予約は電話ではなく、ネット予約になっていますね。この場合はご本人ではなく誰でも電話番号とメールアドレスさえあれば予約できます。予約の名義は墨田彩芽となっていますが……。当日のチックインはご本人様ですね。一一二五号室です。これを見てください。住所、名前は墨田様です。その後、誰がその部屋に入室したかですか?」と支配人は答えた。


「防犯カメラがありますがご覧になりますか?」


「是非……、奥様、どうされますか?」と深川の演技っぽい言い方だった。私は下を向いて唯、黙って首を縦に振るだけだった。


「この防犯カメラは警察の方はご覧になったのですか?」と深川の質問に支配人は、

「いぇ、見ませんでした。何か早く終わりにしたいという感じでしたよ」と首を捻って答えた。深川と私はお互いに顔を見合わせた。


 防犯カメラの映像が保存してある守衛室へ向かった。守衛室には各部署のカメラ動画の液晶画面が四つずつ二段に八つ並べてあり、二人の守衛がそれを眺めていた。セキュリティーはしっかりしているのだと感じた。


 支配人はパソコンで映像をあれこれと操作し、当日の映像を映し出した。


「どうぞ、ご覧ください。終わったらフロントへお知らせください」と言って、守衛室から出て行った。私たちはその映像を三人で食いついた。


 映像では一一二五室の階にある廊下が映し出されていた。


 最初に墨田が入室するのが確認された。時間は午後二時十分となっていた。


 その後入室する人物を見て、三人は驚かされた。


 最初に女性が一人午後三時半に入室した。その女性は上下の紺色のジャージを着て、黒いキャップを被り、白いマスクをしていた。推定の身長は一六〇センチ前後、中肉中背の若そうな女性だった。


 その次に午後三時五十分、男性が二人入室した。一人は夫の春平と施設の運転手だった。運転手の名前は確か代田(だいた)とか言う男だ。春平が施設に囚われていた時の同僚運転手だ。


 つまり、午後三時五十分から五時三十分の間に、一一二五室には四人の人物がいたことになる。午後五時三十分で最初の女性と運転手が退出しているのが確認された。


「深川さん、これって凄く怪しいですよね? 夫の遺体が発見されたのが午後六時半ですので、三時五十分から五時半の一時間半で殺害されたことになりますね。その部屋内で起こったことは犯人か墨田しか分かりませんが……」


「ワイングラスに付着していた指紋はその女性か代田という運転手のものなのでしょうか?」


「そこからは捜査一課にやってもらわなければなりませんね。我々の力ではどうにもなりません。唯、墨田がだんまりを決めているので、それがキーになるのだと思います」


 深川は捜査一課へ頼みたいと考えていたが、柳瀬は資料室へ異動になっているので、実際には動けない。しかし、このまま放置すれば心中事件として処理される可能性がある。捜査一課が動かなければどうにもならない。


「どうしましょうか? 深川さん」

 深川には私の顔が『どうにかしてくれ』と懇願しているように見えていたのだろう。


「うむ……。困りましたね」 


 そこで華がこんなことを提案した。

「警察がだめなら、マスコミに頼るのはどうかなぁ? テレビや新聞あるいは週刊誌などに取り上げてもらうというのは?」


「マスコミか、いいかも知れんぞ。誰かマスコミ関係で適任者はいないか?」


「……」私も、深川も、華も沈黙だ。


「私、知ってるわ」

 佑香の唐突な答えに、皆そっちを向いた。そしてこの心中事件は意外な方向へ進展していった。



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