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失踪夫、夫が失踪した。なぜなんだ?  作者: 井埜利博(いのりはく)
12/45

際どい潜入捜査に私も……

  三

 私はあれから何の進展もないまま日々の生活を(こな)した。


 結婚式を挙げたまでは良かったが、今は全くの独身生活だ。もちろん夫の春平からは何の連絡もないし、誰かから何の情報もない。やはり深川探偵事務所に依頼したのは間違ったかと思った。


 その矢先、深川からラインが届いた。

『真里花さん、春平さんのことでお願いがあります。お時間がある時に事務所へ来て頂けますか?』とのこと。


 私は待っていた知らせがやっと来たと思った。直ぐに『今から伺います』と返信して、職場の上司には親戚の忌中で二、三時間暇をくださいと言って、直ぐに身支度してタクシーで深川の事務所へ向かった。


 事務所のドアと開けると、深川と華が待っていた。


「真里花さん、今までの進捗状況をお話しします。それと真里花さんにやって頂きたいことがありますので……」と言った。私は待ちに待った報告だ、きっと吉報なのだろうと願った。


 深川は自分たちが調査し、知り得た情報を私に全て伝えてくれた。十年前に深川が警視庁に在籍していた時、二つの殺人事件があり、その一つは春平の父親とその部下であったことを詳細に話した。


 その報告を聞いて、彼らが無駄に時間を費やしていないことを思い知らされた。私の知らなかったこと、もちろん夫の父、義父のことなのだ。知る筈もない。夫の春平からも聞いていなかったことだ。


 それに義父を殺したのは梅沢組の構成員かも知れないとの話も聞いた。


「そうでしたか。それで私にやって欲しいことって何ですか?」と私は気が付いたら口を半開きにしていた。


「華と一緒にその鎌田がバーテンをしているバーに行って、春平さんのことなど調べてもらいたいのです。私ではもしかしたら面が割れているかも知れないので……。それに女性二人なら怪しまれないと思いまして」


「私に潜入捜査をしろってことですか?」


「そうです。すみません」


「……」ちょっと私は躊躇った。梅沢組なんてヤクザの組織の中に飛び込むなんて、そんな無謀なことが私にできるのかしらと思った。まずは恐怖が先に立った。


 深川は、

「真里花さん、真里花さんなら春平さんのこと良く分かっているし、それに鎌田は十年前お父さんの春樹さんを手に掛けたかも知れない男なんですよ。どんな奴か見たいでしょう。話をしてどんな感触を得たのかも教えて欲しいのです。ご主人を早く発見したいのなら、やってください。お願いします」と言った。


 深川はじっと私の顔を覗き込んで、言葉も少し強く出た。どうしてもやってもらいたいという気持ちが出ていた。


「それもそうね。いいわ。やるわ。でも一人では無理よ。華さんと一緒なら……どうにか。じゃぁ、華さん、日にちを決めましょう」


 私はそう言ってしまった。それは華と二人なら何となくできそうな気がした。それだけ華は若いが何となく頼りになりそうな雰囲気を持っていた。


 そう言って華と一緒に手帳のカレンダーを見ながら潜入する日にちを決めた。ウイークデイの夜を選んだ。


 当日の夜七時、華は思いっきり露出した格好で現れた。超ミニでノーブラ、結構巨乳みたいだ。私にも見たらそれが分かった。華の考えていることは直ぐに理解できた。何と度胸の据わったお嬢なんだ。


 そのカウンターバーは錦糸町駅前のビルの二階にあった。入口の焦げ茶色の高級そうに見える木製のドアには小さくショットバー『ハナウマ』とプレートが貼ってあった。


 ハナウマとはオアフ島のハナウマベイのことだろうと思った。深川から鎌田はハワイに三年も滞在していたと聞いていたからだ。


 私たちが店に入ると、

「いらっしゃいませ」と男がこっちを見てニコッと笑った。カウンターの中にはその男一人しかいない。金髪の目の鋭い男で、白のワイシャツに黒のベストを着てピンクの蝶ネクタイしていた。


 まるで薄っぺらいチンピラじゃぁないか。客は誰もいなかった。時間が早いせいもあったのだろう。私は華と並んで真ん中のカウンターに座った。


「何にしましょう?」と訊かれたが、カクテルなど名前は知らない。


「ジンフィズで。真里花さんは?」と華に訊かれたので、「同じもので……」と答えておいた。

 

 男の胸に『鎌田』の名札が付いていた。こいつだ。間違いはない。


「いいお店ですね」と私が話かけた。


「ありがとうございます。お仕事の帰りですか?」と鎌田は優しい声で訊いてきた。


「はい。そうです。ハナウマってハワイのハナウマベイのことですか?」と華が訊いた。


「そうなんですよぉ。向こうにいましたのでね」


「えぇ、ハワイに住んでたの? すごーい。何年くらい住んでたんですか?」と私が訊いてみた。


 店内の壁にハワイの写真が額に入れて沢山飾ってあった。鎌田は私より華の方をチラチラ見ていて興味がありそうだった。あいつはきっと若い子が好きなんだ。華はそれを悟ったらしく、私に目配せした。自分を残して帰れと目が言っていた。


 翌朝、華からメールが届いた。『色々分かったわよ。今日、事務所に来られる?』と。


『仕事帰りに行きます』と返信しておいた。華はお店が終わった後、鎌田とお鮨を食べに行ったらしい。その時、会話の中で知り得たことを私に話してくれた。


「真里花さん、鎌田は梅沢組の組員よ。入れ墨してたわ。私としたいって」


「したいって?」


「セックスしたいんだって」と華は笑って答えた。傍で聞いていた深川も笑っていた。私は『これが東大生か』と思った。


「鎌田の話では山下社長の下で長い間働いていたことは確かよ。鎌田は山下からお金をもらってハワイへ高飛びしたらしい。向こうでバーテンの修業をして帰国したんだって。山下は元々は中国人みたいよ。帰化したのよ、きっと。日本語も我々と変わりがないわ。それと社長室には妙な壺や置物があって、どうも何かの宗教に凝っていると言ってたわ」


「宗教ですか? 中国の宗教って何でしょうかね?」と私の疑問に対して、


「真里花さん、まぁ、そう焦らずに行きましょう」と深川に宥められた。


「鎌田は自慢げに、『ずっと昔におれは人を殺めたことがあるんだよ』だってさ。あいつ馬鹿じゃぁないの。私と寝たいために何でも話したわ」


 深川はさすがに、「おい、華、あまり際どいことやるなよ。おまえの身が危ないからな」と少し心配そうな言い方をした。


「大丈夫よ。結局、鉄砲玉として山下に上手く使われたってとこね。ハワイに行ったのは山下に足がつかないように国外逃亡させた訳なのよ。おそらく……」


「でも春平が失踪したのとどう関係するのかしら? それについては何かしゃべったの?」と私としてはその方の情報を聞きたかったのだ。


「それは今のところ分からないわ。もう少し調べてみる」と華は右手の拳を握った。


「華、それはこの間話した国民真理の会じゃぁないか?」と深川はニヤッと笑った。


 それを聞いた私は「国民真理の会ですかぁ?」と思わず呟いた。


「国民真理の会は、元々中国発祥の宗教なんだよ。中国でも数百万人の信者がいるらしい。教祖は何て言ったかなぁ? (ちょう)何とかとか……」


「そうですか。主人はその宗教と関係しているのですか? 主人は全く宗教などには無縁だと思いますが……」と言ったものの、百パーセントは否定できない。


 それに十年前の義父春樹の殺害と夫春平の失踪と宗教……、どう繋がっているのだろうか?


 結局、ハナウマへの潜入捜査は私ではなく華の力で一歩進んだ情報が得られた。


 私も何かやらなければならないと思った。女としては華よりも私の方が綺麗だと思う。多少、年齢は華よりも上だが、まだ女としては衰えていないし、自分で客観的に見ても魅力的だ。胸は華と比べて小さいが……。


 一週間後の月曜日の夜、私は勇気を奮って一人でハナウマへ出かけた。ハナウマの重厚なドアを開けるとやはり客はいなかった。


「あぁ、この前のお嬢さん、いらっしゃい。今日はお一人ですか?」と鎌田は好色そうな笑顔で迎えた。


「一人で来ちゃった。いいかしら?」


「どうぞ、どうぞ、いいに決まってるじゃないですか。何にしますか?」


「私、カクテルは詳しくないので、何か美味しいもの作ってくださる?」とできるだけ甘ったるい声を出した。今日はこの間の華の真似をして、ミニスカートになるべく胸が見えるようなブラウスを着てきた。鎌田の視線は私の胸に注がれた。


「華ったらずるいわよね。この前、鎌田さんとお鮨食べたって聞きましたよ。私だって……」と自分でもこんな言い方ができるなんて驚きだ。


「いやいや、華さんに無理やり誘われたんですよ」


「嘘ばっかり、華はそんなこと言ってなかったわよ。私だって鎌田さんとお鮨食べたいわ」


「いいですよ。じゃぁ、お客様も来ないので、早くお店を閉めますから、これから行きましょうか?」


 鎌田はそう言って、私がカクテルを飲み終わるのを見計らって、

「じゃぁ、行きましょう」と言った。


 鎌田は華を連れて行った錦糸町駅裏でショットバーから歩いて五分くらいの所の鮨屋に私と入った。


 やはり華の時と同じように食べながら話しているうちに、鎌田は酒が回ったのか本性が出てきた。あいつの求めているのは私の身体だ。


 華と同じことを聞いても仕方がない。私の興味は春平一点だ。それには山下社長に会わなければ……。

「ハナウマのオーナーは誰なんですか? 鎌田さんなんですか?」


「そうだよ」


「あの場所であれだけのお店を開くのはお金がかかったでしょ?」


「あぁ、まあね」


「私もあういうお店を持ちたいと思っているのよ」と口から出まかせを言った。


「へぇ、そうなの。資金はあるの?」


「あるわ。どのくらいあればいいのかしら? 一千万くらい?」


「それじゃぁ、足りないね」


「えぇ、そんなに? どうしようかしら……」


「そればっかりはねぇ。まぁ、今日は飲もうよ」


 飲んで私を酔わせてどうにかするつもりなのか? そうは行かないわよ。鎌田は冷酒を一合開けて、二合目に入った。顔も大分赤くなっていた。


「鎌田さんにはどなたか出資して下さる大物がいるんですか? もしいたら紹介して頂きたいわ」


「まぁね。本気で考えているんなら紹介してもいいよ」


「紹介してもいいけど、それにはねぇ」と言って鎌田は右手を隣に並んでいた私の左太ももに置いた。あっ、きたと思った。


「そうねぇ、鎌田さんなら構わないけど……」


「いいの?」


「いいわよ。でも今日はダメ。華にも知られたらまずいから……。華にも同じこと言ってんでしょ?」


「それは思い過ごしだよ。彼女、適当なこと言ってんだよ」


「そうかしら。それはそうとその大物って前に鎌田さんがいたところでしょ? 華が言ってたわ」


「そうか。じゃぁ、話が早いな。山下さんっていう人なんだよ。東日土木建設の社長だよ」


「紹介して下さるの?」


「いいよ。君次第だよ」と鎌田の右手がさらに体の中心部へ向かって伸びてきた。私は自分の左手で拒んだ。


「それは成功報酬ってことでね」とはっきり言った。鎌田は右手を引っ込めた。


 私はこのくらいで納めておこうと思った。トイレに入って華にラインした。


『直ぐに私に折り返し電話して。お願い』と。席に戻って五分もすると携帯のコール音が鳴った。


 その電話に出て、「あぁ、はい。直ぐ行きます」とわざとらしく言って、鎌田には「ごめんんさいね。行かなくっちゃ」と告げて鮨屋を出た。帰る前にラインを交換しておいた。その足で深川事務所へ直行した。華と深川は二人とも笑って待っていた。


「どうだった? うまくいった?」と華は笑った。


「えぇ、まぁ、華と同じように迫られたわ。私がハナウマのようなお店をやりたいので資金を出してくれる人はいないかと訊ねたら、鎌田の奴、山下を紹介するような素振りだったわ。とにかく東日土木建設の山下に会わなければね」


「そうね。危ないから二人で行きましょう。一人では心配よ」


 深川は二人の話を聞いていて唇を噛んだ。心配だったのだろう。しかし、今は二人に任せるしかないと考えていた。


   四

 翌週、私は鎌田にラインをした。


『鎌田さんのお時間がある時にこの間の山下社長をご紹介くださらない?』と。直ぐに返信がきて、『いいですよ。山下社長の都合を訊いてご連絡します』


 その翌日、鎌田から山下社長との面会のアポが取れたとラインをもらった。私はその週末の約束日に早速、東日土木建設へ華と一緒に出掛けた。


 東日土木建設は新宿区新宿二丁目で新宿御苑と太宗寺というお寺の間にあるビルの一階と二階を占めていた。そのビルの隣には広い敷地があって、大型トラックやいくつかの重機が置かれてあった。


 敷地内は雑草などもなく、整備されていた。見た感じは地方にある建設会社の建て構えだったが、都内の一等地では珍しいと感じた。


 ビルの一階にあった受付の女性に山下社長にアポイントを取ってあることを告げると、直ぐに二階の社長室へ案内された。そこまでは全く普通の会社の姿だった。社長室のドアをノックし入室した。


「あぁ、話は鎌田から聞きましたよ。どうぞお座りください」


 山下の物腰は柔らかだったが、身に着けているものはヤクザの親分そのものだった。白いスーツ、黒のワイシャツ、品のない花柄のネクタイ、金の時計、金縁の眼鏡。笑うと金の入れ歯が光った。


 社長室には山下が使用すると思われる大きな机と茶色の革のソファーが置いてあった。社長の机の後には大きな家紋が飾られていた。『これって、ヤクザの組長の部屋だ』と思った。部屋に入るや否や華と顔を見合わせた。


藤田(ふじた)真里花と深川華です」と私は旧姓を名乗った。山根沢では感づかれると思ったからだ。華はニコニコ笑っていた。何て胆の据わった子なんだろうと思い返した。


「ところで鎌田の話では、お店を出したいってのは藤田さんですか?」


「そうです。ショットバーのような……」

 そう訊かれてバレないか不安であった。


「なるほど。それで資金はどのくらいお持ちなんですか?」


「一千万ほどです」


「それでは少し足りないですね」


「どのくらい必要ですか?」


「お店の場所によりますが、都内の山手線内であれば最低でも三千万はないとね……。それでも足りないかも知れませんねぇ」


「三千万ですか……。銀行も二、三当たりましたが、貸してくれそうもないのですよ」


「それはそうですよ。あなたの年齢ではねぇ。お父様の職業にもよりますがね、連帯保証人としてそれなりの人であれば別ですが……。お父様のお仕事は何をされているのですか?」


「国家公務員です。外務省の役人です」と言ったら山下の目と唇が少し歪んだのを華は見逃さなかった。


 華は私と山下が話している最中、あちこち眺めていたようだった。山下との話の内容を聞いているのかどうか疑問に思うくらいサイドボードの上にある壺や仏像などをじっと眺めていた。その理由は後で華から聞いて知った。


「鎌田の紹介ということであれば銀行と同じくらいの金利でお貸ししても構いませんが……」


 私はまだ山下の心の内を読めなかった。鎌田のような単純な思考を巡らす男ではないようだ。気をつけないといけない。


「そうですか。助かります。一旦は家に帰って家族と相談します。叔父でうるさい人がいますので……」


「では決心がついたら連絡をください。鎌田を通しても構いません。あるいはこいつ、今呼びますね。彼女を通してください」と言って山下は内線電話で「ちょっと社長室へ来てくれ」とその相手に告げた。


 しばらくして若い女性が入ってきた。その女は社長室へ入って頭をちょこんと下げた。


朝比(あさひ)です。よろしくお願いします」と私たちに向かっても頭を下げた。目立たないが綺麗な女性だなと思った。銀縁の眼鏡をかけ、焦げ茶色に染めたロン毛で白いブラウスに紺のスーツを着けていた。


 私は何となく見たことがある女性だなと思った。もしかしたらテレビに出ている人かなとも思った。

「藤田さん、決心がついたらこの朝比に連絡してください。私は忙しくて電話に出られないことが多いので。朝比は私の秘書替わりですから……。女性同士の方がいいでしょう」


「分かりました。よろしくお願いします」


 朝比は私と華に名刺を差し出した。私はそれをバッグの中に入れて東日土木建設を後にした。

   *

 私と華は深川の事務所へ戻り、三人で話し合った。


「どうだった?」とまずは深川の第一声。


「そうね。見た目はヤクザの親分という感じだけど、言葉使いは社長さんよね。綺麗な秘書もいるしね」と華の答え。


「まずはこれを見て」と言って先ほどかけていた眼鏡を外し、デスクトップとケーブルで繋いだ。そして画面に画像を映し出した。画像には山下本人と社長室が映し出されていた。


「あっ、これって隠しカメラだったの?」と私はその眼鏡をまじまじと眺めた。


「そうよ。よくできてるでしょ?」と華は自慢げに話した。


「全然分からなかったわ。あなたがどうして今日は眼鏡をかけていたのか、コンタクトで具合が悪いのかなぁと思っていたんだけど」と言ったが、そんなことよりなぜ部屋を映したのか、私にはまだ分からなかった。さらに華は深川に見せるように画像を見ながら続けた。


「お父さん、これ見て。家紋は梅沢組の家紋よね? それとこの壺と仏像、怪しいでしょう? どう思う?」


「うむ……。見るからにヤクザだな。梅沢組は間違いない。おれが警視庁にいた時に散々苦労させられたからな。それからこの壺と仏像、画像を拡大してくれないか?」


 深川は華によって拡大されたパソコン画像に顔を近づけた。


「ほらよく見てみろ。仏像の台座に小さく国民真理の会と書いてある。山下と教団は繋がっているのは確かだ」


「あぁ、ほんとね」と私は思わず声をあげてしまった。華とも顔を見合わせた。


「真里花さん、春平さんの情報は得られなかったですかね?」と深川は申し訳なさそうな顔をした。


「はい。でも少しずつ分かってきているのではないでしょうか? 十年前の義父、山根沢春樹は当時梅沢組のヒットマンの鎌田誠一によって殺害されたと考えていいのではないですか? その理由は国民真理の会という教団と何か関係しているということですよね?」


「そうですね。そこまではいいですよ。当時、私は山根沢春樹さんの殺害事件ではホシは物証を残さず、計画的でその道のプロの犯行だと考えていましたからね。だが、捜査が進めないように警察組織の上層部の圧力があったのも確かです」


「夫の行方は分かりませんね?」


「今のところは、もう少し調査しますよ。真里花さんにもお手伝いをお願いするかも知れませんが……」


「いいですよ。ショットバーの話はどうしましょう? 口から出まかせを言っただけなんで」と私はいくらか度胸がついてきたと自分でも思った。


「それはまだ結論を出さないでいてください。山下とは繋がりを持っておいた方がいいですので。しかし、銀行と同程度の利子でいいとは、山下には余程資金があるのでしょう」


 三人は東日土木建設にはこれ以上深く突っ込むと危険だと判断し、調査を友人関係に絞ることを優先しようということになった。


 ヤクザを甘く見るととんでもないことになる。あいつらは人の命を奪うことなどなんとも思わない連中だと私は深川に脅された。


 東日土木建設に潜入し、深川事務所にて三人で今後のことを相談したその日の夜、六時頃に思いがけない連絡が入った。



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