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捨てられた荷物持ちの俺、死にかけて覚醒する  作者: beck2026


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第8話 討伐報告

ギルド職員に案内され、俺は応接室のような場所に通された。普段、荷物持ちが入ることのない部屋だ。革張りの椅子に座るだけで、どこか落ち着かない気分になる。


しばらくして、ギルド職員とは別に、もう一人の人物が部屋に入ってきた。年配の男性で、襟元に上級職員を示す紋章が付いている。


「失礼する。私はこの支部のギルド長を務めている、ガレンだ」


ギルド長――支部の最高責任者が直接出てくるとは思っていなかった。危険度Aの討伐報告というのは、それだけの重みがあるということなのだろう。


「先程の報告について、確認させてほしい。《深層喰らい》を、単独で討伐したというのは本当か」


「本当です。証拠もあります」


俺は《保管》を発動し、テーブルの上に巨大な牙を取り出した。職員が驚いた様子で身を引く。


「これだけでなく……まだ何かあるのか?」


ガレンの視線が鋭くなる。何かを察しているような目だった。


「巨体も、丸ごと収めてあります」


「丸ごと……?」発した。


部屋の空気が一瞬、固まった。ガレンは少し言葉を選ぶように沈黙し、改めて口を開いた。


「君は、確か――ダルトのパーティに所属する、荷物持ちだったはずだな」


「はい。ですが、たった今、パーティを抜けました」


「理由を聞いても?」


「重傷を負った俺を置いて、パーティが撤退したからです。その後、覚醒した魔法で討伐し、ここまで一人で戻りました」


ガレンは黙って俺の話を聞いていた。表情からは何を考えているか読み取れない。


「……ダルトたちのパーティからは、《深層喰らい》との接触で荷物持ちが死亡したと報告を受けている」


「死亡、と」


思わず声が低くなる。撤退するだけでなく、嘘の報告までしていたとは思っていなかった。


「事実と異なるようだな。詳細な事情聴取が必要になる。君にも、改めて話を聞かせてもらいたい」


「構いません」


ガレンは少し間を置いて、こちらを見据えた。


「ひとつ、確認したい。君の魔法は、本来どういう系統のものだ? 荷物持ちが単独で危険度Aを討伐するなど、通常ではあり得ない」


「時空魔法です。これまでは《保管》しか使えませんでしたが、今日、覚醒しました」


「時空魔法、か……」


ガレンの表情がわずかに変わった。何か思い当たることがあるような反応だった。


「時空魔法の使い手は、この国でも数えるほどしかいない。それも、覚醒前と覚醒後でこれほど差が出るとは……」


「何か知っているんですか?」


「いや……今は、君の討伐報告を正式に処理することが先だ。詳しい話は、後日改めて」


ガレンは話を切るように立ち上がった。何かを隠しているような、含みのある態度だった。


「討伐報酬と、ダルトたちの件については、追って連絡する。今日はゆっくり休んでくれ」


「分かりました」


部屋を出ながら、俺は先程のガレンの表情が引っかかっていた。時空魔法について、何か知っている――そんな気がしてならなかった。


ギルドを出ると、夕暮れの街が広がっていた。今日一日で、あまりにも多くのことが変わった。荷物持ちとして見下されていた自分が、今は一人の冒険者として認められようとしている。


「これから、どうなるんだろうな」


不安はあったが、それ以上に、これからの可能性に胸が高鳴っていた。

お読みいただきありがとうございます!


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