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捨てられた荷物持ちの俺、死にかけて覚醒する  作者: beck2026


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第7話 帰還

遺跡を出ると、霧はいくらか薄くなっていた。新しく手に入れた「繋ぐ」力の感覚を確かめながら、俺はゆっくりと歩を進めた。


「……時間が、結構経ってるな」


体感よりも長く感じる。魔力の消耗も激しかったせいか、腹の底から疲労が押し寄せてくる。これ以上深く進むのは危険だ。一度、地上に戻って休む必要がある。


座標点を確認する。これまで通った道筋――というより、自分が「触れた」場所の記憶のようなものが、淡い光の線として頭の中に浮かんでいた。


「繋がれ」


試しに、入口付近で一度立ち止まった場所に向けて線を結んでみる。これまでの短距離移動とは違い、かなりの距離があるはずだ。


線が繋がった瞬間、視界が滑らかに切り替わった。気づけば、第十二層の入口付近――最初にパーティで足を踏み入れた場所に立っていた。


「……これは、反則じみてるな」


これまで何時間もかけて歩いてきた距離を、一瞬で戻ってきてしまった。荷物持ちとして地味な力だと思われていた《保管》が、こんな形に育つとは誰も想像しなかっただろう。


第十一層へ続く階段を上りながら、これからのことを考える。ギルドには《深層喰らい》討伐の報告をする必要がある。証拠の牙と、《保管》に収めた巨体――これだけあれば、誰も嘘だとは言わないだろう。


「報酬は、それなりになるはずだ」


そして、ダルトたちのパーティについても、ギルドに事実を伝えるべきかどうか。重傷者を見捨てて撤退した――それ自体は緊急時の判断として認められる場合もある。だが、「替えがきく」と言って嘲笑っていたことまでは、報告書には書けない。


「……まあ、それは後で考えるか」


地上に近づくにつれ、薄暗かった視界が少しずつ明るくなっていく。ダンジョンの入口を出ると、見慣れた街の喧騒が広がっていた。


「ロウ……?」


聞き慣れた声に振り返る。ダルトとリーネが、ギルドの受付前に立っていた。明らかに驚いた顔をしている。先に戻って、何かの手続きをしていたのだろう。


「お前、本当に生きて……いや、その《深層喰らい》は――」


ダルトの視線が、俺の背負っているはずのない巨大な気配――《保管》の中に眠る魔物の存在を感じ取ったのか、明らかに動揺している。


「ギルドに報告に来ただけだ。お前らに用はない」


俺は二人の脇を通り過ぎ、受付へと向かった。背中に視線を感じたが、もう振り返る必要はなかった。


受付のカウンターで、ギルド職員に声をかける。


「危険度A、《深層喰らい》の討伐報告をしたい」


職員が一瞬きょとんとした顔をした後、慌てて奥へ連絡を取りに行く様子が見えた。これから、色々と騒ぎになるのだろう。


「……ようやく、認められるのか」


荷物持ちとしてではなく、一人の冒険者として。


ギルドの喧騒の中、俺は静かにその時を待った。

お読みいただきありがとうございます!


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