第51話 四人の修練
翌日から、俺たち四人は、改めて、本格的な修練に取り組むことになった。これまでの戦闘経験を活かしつつ、新しい可能性を、さらに引き出すための時間だった。
「まずは、それぞれの力の、限界を確かめよう」セレンが、訓練場で説明を始めた。
俺は、座標点を、できるだけ多く同時に展開する練習から始めた。これまでは、数個程度が限界だったが、もっと増やせないか、試してみる。
「繋がれ……繋がれ……」
意識を分散させながら、複数の座標点を、同時に操作する。額に、すぐに汗が浮いた。
「五個まで、増えました」
「悪くない進歩だ」セレンが、記録をつけながら言った。「もっと数を増やせれば、複数の敵に、同時対応できるようになる」
ミラは、時間操作の範囲を広げる練習をしていた。
「これまでは、小さな範囲しか、遅延させられませんでした。もっと、広い範囲で、できないか試しています」
「遅れろ……」
ミラの周囲、これまでよりも、明らかに広い範囲の空間が、わずかに時間の流れを変えた。
「これは……すごいですね」エリアスが、感心したように言った。
淡と凪は、それぞれ、新しい力の使い方を、模索していた。
「我は……空間を歪ませるだけじゃなく、何か、別の使い方ができないか」
淡が、自分の手を見つめながら、考え込んでいた。
「例えば、どんなことを、考えていますか」俺は、尋ねた。
「歪みであった頃、我は、空間そのものを、不安定にする力を持っていた。今は、その力は、ほとんど失われている。だが――もしかすると、小さな『揺らぎ』を作る程度のことは、できるかもしれない」
「揺らぎ、というのは」
「相手の足元を、わずかに不安定にする、というような効果だ」
「試してみますか」
淡が、的に向かって、意識を集中させた。
「揺らげ」
的の周囲の地面が、ほんの少しだけ、揺れた。的そのものは倒れなかったが、明確な変化だった。
「これは、新しい技ですね!」ミラが、嬉しそうに言った。
凪も、同じように、何か新しい力を、試そうとしていた。
「我は……まだ、よく分からない。だが、何か、できる気がする」
凪が、しばらく集中した後、小さな声で言った。
「視る」
その瞬間、凪の周囲に、淡い光が広がり、少し離れた場所の様子が、まるで透けて見えるように、視界に映り込んだ。
「これは……まさか、遠隔視のような力ですか」セレンが、驚いた様子で確認した。
「分からない。でも、何か、見える」
「それは、すごい発見ですね」俺は、感心しながら言った。「もし、これを使いこなせれば、敵の動きを、事前に把握できるかもしれません」
エリアスが、感慨深そうに、皆の様子を見ていた。
「皆様、それぞれ、新しい可能性を、見つけ始めていますね」
セレンが、満足そうに、記録をまとめた。
「これは、良い進展だ。それぞれの力が、まだ、発展の余地を持っている、ということが、はっきりと分かった」
修練を続けるうち、いつの間にか、日が傾いていた。
「今日は、ここまでにしましょう」
汗を拭いながら、皆で、訓練場を後にした。
「ロウさん、今日の修練、どうでしたか」ミラが、隣を歩きながら尋ねた。
「正直、まだまだ、伸ばせる部分があると、実感しました。淡さんや凪さんも、新しい力を見つけて、すごいと思います」
「そうですね。みんなで、もっと、強くなっていきたいです」
淡と凪も、それぞれ、満足そうな表情を見せていた。
「我は、今日、新しい自分を、見つけた気がする」淡が、静かに言った。
「我も、同じだ」凪が、頷いた。
四人それぞれの成長――それが、これからの旅を、さらに支える力になっていくことを、皆が、確かに、感じていた。貴族連合との対立に向けて、新しい力が、確実に、育まれ始めていた。
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