第50話 魔道具の正体
襲撃から村へ戻った俺たちは、すぐに、ガレンへ報告を入れた。エリアスが弾き落とした、淡の力を封じた魔道具――その実物を、セレンが詳しく調査することになった。
「これは……」
ギルドの作業室で、セレンが、魔道具を慎重に観察していた。小さな結晶のような形をしており、表面に、複雑な紋様が刻まれている。
「貴族連合は、本当に、こんなものを作る技術力を、持っていたんですね」俺は、感心と警戒が混じった気持ちで、その道具を見つめた。
「これは、おそらく、歪みから生まれた存在――つまり、淡殿や凪殿のような者の力を、一時的に抑え込むために、特化して設計されたものだ」
セレンが、装置に魔力を流しながら、反応を確認した。
「構造は、単純だが、効果は、強力だ。短時間でも、これが発動すれば、ほぼ確実に、動きを封じられる」
淡が、その道具を、複雑な表情で見つめていた。
「これが、我たちを、捕らえるために、作られたものなのか」
「そうらしい」セレンが、頷いた。「貴族連合は、本気で、君たちを、手に入れようとしている」
凪が、不安そうに、淡に寄り添った。
「我たちは、また、捕まる危険があるのか」
「心配しなくていい」俺は、二人を安心させるように言った。「対策を、しっかり考えていきます」
セレンが、新たな提案をした。
「この魔道具の構造が分かれば、対抗手段も、見つけられるかもしれない。詳細な分析を、進めてみよう」
ガレンが、報告を受けて、すぐに駆けつけた。
「これは、思っていたより、深刻な事態だな」
「貴族連合は、私兵のような者まで、動員しているようです」エリアスが、冷静に状況を報告した。「今後、さらに大規模な襲撃も、考えられます」
ガレンが、険しい表情で、考え込んだ。
「ギルドとしても、これ以上、放置はできない。本部に、正式な対応を要請する」
「対応、というのは」
「貴族連合に対して、正式な抗議と、捜査を申し立てる。それと――」
ガレンが、改めて、俺たちを見渡した。
「君たちの護衛体制も、強化する必要がある。エリアス殿一人では、今回のような、複数人による襲撃には、対応が難しいかもしれない」
エリアスが、少し申し訳なさそうに頷いた。
「私一人では、限界があります。追加の人員を、検討すべきかと」
セレンが、魔道具の分析を続けながら、改めて、皆を見渡した。
「もう一つ、考えるべきことがある。淡殿と凪殿だけでなく――ロウ殿とミラ殿の力も、まだ、発展の余地が、十分にあるはずだ」
「俺たちも、ですか」
「ああ」セレンが、頷いた。「ロウ殿は、傷を縫う力まで到達したが、それ以上の応用は、まだ、試していない。ミラ殿も同様だ。今回のような、複数人による組織的な襲撃に対抗するなら、君たち自身の力も、もっと高める必要がある」
ミラが、少し考えるように、自分の手を見つめた。
「私たちも、まだ、成長できる、ということですね」
「そうだ。むしろ、四人それぞれが、もっと力をつけることで、初めて、貴族連合のような相手にも、対等に渡り合えるようになる」
淡が、その言葉に、静かに頷いた。
「我たちだけでなく、ロウやミラも、共に、強くなっていく――それなら、心強い」
凪が、少し緊張した様子で、それでも、はっきりと言った。
「我は……強くなりたい。淡を、そなたたちを、守れるくらいに」
「俺も、同じです」俺は、改めて、決意を込めて言った。「これまでは、目の前の問題に対応するだけでした。でも、これからは、もっと先を見据えて、力をつけていきたいと思います」
ミラが、笑顔で頷いた。
「私も、頑張ります。ロウさんと一緒に、もっと連携を深めていきたいです」
セレンが、満足そうに、計画を立て始めた。
「では、これから、四人全員の修練プログラムを、組んでいこう。空間操作、時間操作、そして淡殿と凪殿の新しい力――それぞれの可能性を、まだ、十分に引き出せていない」
ガレンが、改めて、全員に向けて告げた。
「これからは、護衛の強化、魔道具の対策、そして、四人全員の修練――やるべきことが、いくつもある。一つずつ、確実に、進めていこう」
作業室の中、緊張感と共に、新しい決意が、皆の中に、静かに芽生えていた。貴族連合との対立は、これから、さらに、激しさを増していくことになりそうだった。
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