第49話 道中の襲撃
野営の翌朝、俺たちは、再び目的地へ向かって歩き始めた。穏やかな空気の中、しばらく順調に進んでいたが、昼を過ぎた頃、エリアスが、ふと足を止めた。
「……何か、おかしいですね」
「どうしました?」
「気のせいかもしれませんが、さっきから、誰かに、見られている感覚があります」
淡が、すぐに、周囲の空気を確かめるように、息を吸い込んだ。
「……エリアスの言う通りだ。何か、こちらを窺っている気配がある」
セレンが、緊張した様子で言った。
「貴族連合の関係者かもしれない」
「警戒しましょう」
しばらく進むと、道の先――森の入口に、数人の武装した男たちが、姿を現した。
「お前たちが、噂の歪み持ちの冒険者だな」
リーダーらしい男が、剣を構えながら、近づいてきた。
「歪み持ち、というのは……我たちのことか」凪が、不安そうに、淡の方を見た。
「カイエンの手の者か」俺は、鋭く問いかけた。
男が、薄く笑った。
「依頼を受けただけだ。お前たちの中にいる、二人の存在を、生け捕りにせよ、とな」
「そんなこと、させない」
俺は、座標点を展開し、すぐに戦闘態勢に入った。
「ミラさん、淡さん、凪さんを、後ろに!」
「分かりました!」
ミラが、二人を背後に庇うように、移動した。エリアスが、剣を抜き、前に出る。
「私が、前衛を務めます。ロウ様は、後方からの援護を」
「お願いします」
男たちが、一斉に襲いかかってきた。エリアスが、鋭い剣技で、先頭の一人を、瞬時に弾き返す。
「速い……!」
「セレン殿、危ない時は、すぐに合図を」
俺は、座標点を使い、敵の一人の足元の空間を、わずかに歪ませた。バランスを崩した男が、地面に倒れ込む。
「これは……空間が、歪んで……!」
「遅れろ!」
ミラの力で、別の敵の動きが、急に鈍くなった。エリアスが、その隙を逃さず、剣の柄で、相手を打ち倒す。
「淡さん、凪さん、無理はしないでください」俺は、二人に声をかけた。
「分かった……だが、何か、できることがあれば」
淡が、わずかに残った力――空間を歪ませる小さな技を、使おうとした。
「待て、淡!」
その瞬間、リーダーの男が、淡に向かって、特殊な道具を取り出した。
「これを、使わせてもらう」
道具から、奇妙な光が放たれ、淡の動きを、瞬時に封じ込めた。
「これは……動けない……!」
「淡さん!」
「これは、歪みを抑制する魔道具だ」セレンが、驚いた様子で叫んだ。「貴族連合が、独自に開発したものか……!」
凪が、淡の異変に、慌てた様子を見せた。
「淡を、放せ!」
凪の力が、不安定に揺れ、周囲の空間が、わずかに乱れた。
「凪、落ち着いて!」俺は、急いで声をかけた。
「だが……淡が……」
俺は、急いで、リーダーの男に向けて、座標点を使い、距離を一気に詰めた。
「その道具を、止めろ!」
「させるかよ!」
男が、道具を構えたまま、抵抗する。だが、エリアスが、横から、一気に踏み込んだ。
「もう、終わりです」
剣の一撃が、男の手から、道具を弾き飛ばした。光が消え、淡の動きが、瞬時に戻った。
「淡さん、大丈夫ですか」
「……すまない。少し、驚いた」
道具を失った男たちは、形勢が不利になったことを悟り、すぐに撤退を始めた。
「待て――」
「ロウ様、深追いは禁物です」エリアスが、冷静に止めた。「彼らの目的は、淡殿と凪殿の拘束です。逃げるなら、それでいい」
男たちが、森の奥へ消えていく。俺たちは、ようやく、緊張を緩めた。
「セレンさん、あの道具のこと、もっと詳しく調べる必要がありますね」
「ああ。貴族連合は、本当に、本格的に動き始めているようだ」
凪が、淡に、心配そうに寄り添った。
「淡、本当に、大丈夫か」
「うむ。そなたが、心配してくれたことが、伝わった。ありがとう」
ミラが、皆を見渡しながら、静かに言った。
「これから、もっと、警戒が必要ですね」
俺は、改めて、決意を固めた。
「淡さんと凪さんは、必ず、俺たちが守ります」
森の入口に、緊張した空気が、まだ、残っていた。貴族連合との対立が、確実に、本格化し始めていた。
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