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捨てられた荷物持ちの俺、死にかけて覚醒する  作者: beck2026


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第5話 単独行

霧の奥へ進むほど、ダンジョンの空気が変わっていくのを感じた。湿った岩肌から漂う冷気が、肌に絡みつくように重くなる。第十二層――本来、ここまで深く潜るのは中級から上級の冒険者だけだ。荷物持ちの自分が独りで歩いていることが、今更ながら奇妙に思えた。


「……戻るか、進むか」


帰還用の魔法陣は、確か三層分ほど戻った場所にあったはずだ。だが、今の自分にどれほどの力があるのか、まだ把握できていない。せっかく覚醒した力を試すなら、ここで確かめておきたいという気持ちもあった。


「少しだけ、先を見てみよう」


歩き始めてすぐ、足元の感触が変わった。岩から、滑らかな石材のようなものに変わっている。


「ここは……遺跡か?」


霧が薄くなった先に、古びた石造りの通路が続いていた。壁には見たことのない文字が刻まれている。ダンジョンの第十二層にこんな構造物があるなど、ギルドの資料にも記載されていなかったはずだ。


「《深層喰らい》がここにいた理由……これと関係あるのか?」


通常、危険度Aの魔物が中層に出現することはない。何か特殊な要因があったはずだ。この遺跡が、その答えに繋がっているのかもしれない。


慎重に足を進める。覚醒したばかりの時空魔法はまだ不安定で、いつ反動が来るか分からない。油断はできない。


通路の先、開けた空間に出ると、中央に台座があった。その上に、淡く光る小さな結晶が浮いている。


「これは……」


近づこうとした瞬間、頭の奥に鋭い痛みが走った。これまでの頭痛とは違う、もっと深く、もっと冷たい感覚だった。


『――時空の血を引く者か』


声が響いた。どこからか、というより、頭の中に直接流れ込んでくるような声だった。


「な……誰だ!?」


結晶が一際強く光り、台座の周囲に文字のような光の筋が浮かび上がる。これまで見たことのない言語だが、なぜか意味が分かるような気がした。


『この遺跡は、時空魔法の祖が眠る場所。お前の中に流れる力――まだ目覚めて間もないようだな』


「祖……? 俺の魔法のことを、知っているのか」


『お前が覚醒させたのは、ほんの欠片にすぎぬ。本当の時空魔法は、もっと深い』


結晶の光が強くなり、俺の足元にも同じ光の筋が浮かび上がってきた。まるで、結晶と自分が繋がっているかのようだった。


「待ってくれ、説明を――」


『選ぶがいい。このまま欠片のままで生きるか、真の力に近づくか』


体の奥から、何かが引き出されるような感覚が走る。これまでの覚醒とは比べ物にならない、もっと大きな何かが動き出そうとしていた。


「……決まってる」


俺は迷わず答えた。


「真の力に、近づきたい」


結晶が強烈な光を放ち、視界が真っ白に染まっていく。


第十二層の奥、誰も知らない遺跡の中で、ロウの時空魔法は、新たな段階へと進もうとしていた。

第5話、お読みいただきありがとうございます!


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