第47話 ギルドの依頼板
市場での騒動が落ち着いた数日後、俺たちは久しぶりに、村のギルド出張所に立ち寄った。貴族連合の動きが気になりつつも、いつまでも警戒一色でいるわけにはいかない。日々の依頼をこなすことも、冒険者としては大切な仕事だ。
「依頼板、見てみましょうか」
ミラが、掲示板に貼られた紙を、一枚一枚確認していく。
「『山道に出る魔獣の討伐』『薬草採取の手伝い』『迷子の子犬探し』……色々ありますね」
「子犬探し、というのも、あるんですね」凪が、興味深そうに、その依頼書を見つめた。
「我も、それ、興味がある」
淡が、依頼書を覗き込みながら言った。
「子犬というのは、どういう生き物だ」
「小さくて、可愛い、ですよ」ミラが、笑いながら説明した。「人に懐く、優しい動物です」
エリアスが、苦笑しながら言った。
「皆様、強敵を倒すことに慣れているはずですが、こういう依頼にも、興味を持つんですね」
「強さだけが、冒険じゃないですよ」俺は、依頼書を手に取りながら言った。「こういう、地域の人を助ける仕事も、大事だと思います」
「では、これを受けましょう」ミラが、提案した。
「子犬探し、やってみよう」凪が、嬉しそうに頷いた。
依頼主の家を訪ねると、年配の女性が、心配そうな表情で出迎えた。
「子犬が、いなくなって、もう三日になるんです。まだ、生まれて半年も経っていなくて……」
「分かりました。手分けして、探しましょう」
俺たちは、村の周辺を、それぞれ別の方向に分かれて、探索を始めた。
「淡さん、何か、感じませんか」
「……分からない。だが、試しに、空間を少し広く感じる方法を、やってみよう」
淡が、自分の力を使い、周囲の空間を、少しだけ「広げる」ように意識を集中させた。これは、これまでの戦闘用の力とは違う、探索に応用した、新しい使い方だった。
「これは……」
「何か、分かりましたか」
「あちらの方向に、小さな生き物の気配がある」
淡が指し示した方向へ、皆で向かうと、小さな水路の近くで、子犬が、足を取られて動けなくなっているのを見つけた。
「いた!」
「ロウさん、助けてあげましょう」
ミラが、優しく子犬に近づき、抱き上げた。子犬は、最初は怯えていたが、すぐに、安心したように、ミラの腕の中で、おとなしくなった。
「淡さんの力が、こんな形で役に立つとは、思いませんでした」
「我も、自分の力に、新しい使い方があると、知らなかった」淡が、少し誇らしげに言った。
凪が、子犬を、興味深そうに見つめた。
「これが、子犬か。確かに、可愛いな」
子犬を依頼主の女性に届けると、彼女は、涙を流しながら、何度も頭を下げた。
「ありがとうございます、本当に、ありがとうございます……!」
「いえ、お役に立てて、良かったです」
報酬を受け取り、ギルド出張所への帰り道、ミラが、満足そうに言った。
「こういう、ささやかな依頼も、いいですね」
「ああ」俺は、頷いた。「淡さんの力に、新しい可能性が見えたのも、収穫でした」
エリアスが、感心したように言った。
「皆様の力は、まだ、これからも、色々な形で発展していきそうですね」
夕暮れの中、五人は、穏やかな気持ちで、帰路を歩いていた。貴族連合という脅威は、まだ、その影を潜めている。だが、今は、こうした日々の積み重ねが、何よりも、大切な時間に感じられた。
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