第44話 訓練と腹ペコ
エリアスが正式に仲間に加わった日の午後、俺たちは、まず体を動かすことになった。
「皆様の力を、実際に見せていただけますか」エリアスが、訓練場の中央で言った。「専属護衛として、皆様の戦い方を、把握しておきたいので」
「分かりました」
俺は座標点を展開し、的に向けて軌道を逸らす動きを見せた。ミラが、時間を遅らせて、的の動きを操作する。淡と凪も、それぞれ、少しずつ使えるようになってきた力――空間を歪ませる小さな技を、披露した。
「……これは、想像以上ですね」
エリアスが、感心したように呟いた。
「特に、ロウ様とミラ様の連携――空間と時間を組み合わせた動き。これは、私の剣技だけでは、真似のできない領域です」
「エリアスさんの剣も、見せてもらえますか」
「もちろん」
エリアスが、剣を抜き、的に向かって、一瞬の踏み込みから、鋭い斬撃を放った。的が、真っ二つに切り裂かれる。
「速い……!」ミラが、驚いたように声を上げた。
「単純な剣技ですが、これだけは、誰にも負けない自信があります」
淡が、興味深そうに、エリアスの動きを見つめていた。
「我たちの力と、組み合わせれば、もっと強くなれるかもしれない」
「ぜひ、一緒に、訓練していきましょう」
訓練を続けるうち、いつの間にか、夕暮れになっていた。
「お腹、空きましたね……」凪が、小さなお腹を押さえながら言った。
その言葉に、皆が、思わず笑った。
「そうだな。今日は、皆で、何か美味しいものを食べに行きましょう」
村の食堂に向かうと、店主が、驚いた様子で迎えてくれた。
「これは、ロウ様たちじゃないですか!村を救っていただいた、お礼をさせてください」
「お礼なんて、いいですよ」
「いえいえ、ぜひ!今日は、特別な料理を、ご用意します」
しばらくして、テーブルに、香ばしい匂いの肉料理や、色鮮やかな野菜のスープが並んだ。
「これは……」淡が、料理を見つめながら、戸惑った表情を見せた。
「食べ方、分かりますか」ミラが、優しく尋ねた。
「いや……人としての暮らしに、まだ慣れていない部分が、多い」
ミラが、丁寧に、スプーンの使い方を教えた。淡が、ぎこちない手つきで、スープを口に運ぶ。
「……これは」
「美味しいですか?」
「うむ……温かくて、優しい味がする」
凪も、肉料理を、興味深そうに、口に運んだ。
「我は……これが、好きだ」
エリアスが、その様子を、微笑みながら見ていた。
「お二人とも、本当に、人間らしくなってきましたね」
俺は、皆の様子を見ながら、改めて、温かい気持ちになった。荷物持ちだった頃には、こんな穏やかな時間を、想像もしていなかった。
「これからも、こんな時間を、大切にしていきたいですね」
ミラが、笑顔で頷いた。
「はい。みんなで、色々な経験を、積み重ねていきましょう」
食事を終え、村の夜空を見上げながら、五人(と一人の護衛)は、これからの旅に、新しい期待を抱いていた。冒険、戦い、そして、こんな何気ない日常――全てが、ロウたちの物語を、豊かにしていく。
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