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捨てられた荷物持ちの俺、死にかけて覚醒する  作者: beck2026


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第39話 新たな存在の覚醒

亀裂が、ゆっくりと塞がっていく中、俺たちは、力を緩めずに作業を続けていた。


「あと、少しだ」


亀裂の表面が、徐々に淡くなっていく。第十二層での経験よりも、明らかに穏やかな進行だった。


『……ありがとう……』


声が、わずかに、安堵したような響きを帯びた。


『……痛みが……消えていく』


「そうだ。傷が治れば、お前も、穏やかになれる」


最後の一筋の光が、亀裂の中に消えていく。地面の振動が、完全に止まった。


「塞がった……」


セレンが、装置を確認しながら呟いた。


亀裂があった場所から、淡い光が、ゆっくりと浮かび上がってきた。第十二層の災厄よりも、小さく、より透き通った輝きをしている。


『……我は……どうなるのだろう』


光から、戸惑うような声が響いた。


淡が、静かに、その光に近づいた。


「心配しなくていい。我も、かつて、同じ道を歩んだ。そなたも、新しい姿を、得られるはずだ」


『……新しい、姿……』


光が、淡の方に向かって、ゆっくりと近づいていく。まるで、淡を「先輩」のように感じているかのようだった。


「ロウさん、ミラさん」淡が、こちらを向いた。「この子に、少し、力を貸してくれないか。我一人では、上手く導けないかもしれない」


「もちろんです」


俺とミラは、淡と共に、光に向けて、改めて力を集中させた。これまでの「傷を縫う」力とは違う、淡が経験したような「形を保つ」ための力だった。


「繋がれ、形に」


「遅れろ、安定するまで」


淡が、自分の経験を語りかけるように、光に向かって、静かに言葉をかけた。


「恐れることはない。そなたは、もう、傷ではない。一つの、独立した存在になろうとしている」


光が、ゆっくりと、形を変えていく。これまでの淡の覚醒と同じように、徐々に、人のような輪郭が現れてきた。


「これは……」セレンが、興奮した様子で記録を取った。


光が収まると、そこには、小さな子供のような姿の存在が立っていた。淡よりも、さらに幼い印象を受ける。


「……これが、我の、新しい姿、なのか」


声は、まだ、少し不安定で、幼さを感じさせるものだった。


ミラが、優しく微笑みながら、近づいた。


「驚かせて、ごめんなさい。私たちは、あなたを、傷つけるつもりはありません」


「分かっている……感じる。そなたたちが、我を、助けてくれたことを」


淡が、その小さな存在の前に、膝をついて、目線を合わせた。


「我は、淡という。そなたも、これから、新しい名前が必要だろう」


小さな存在が、淡を、不思議そうに見つめた。


「そなたも……我と、同じ存在だったのか」


「そうだ。我も、かつて、歪みから生まれた。そして、ロウとミラのおかげで、こうして、新しい姿を得た」


その言葉に、小さな存在の表情が、少しずつ、安心したものに変わっていった。


「我も……そなたのように、なれるのだろうか」


「もう、なっている」淡が、優しく答えた。「あとは、これから、何を学び、どう生きるか、それを見つけていくだけだ」


俺は、その小さな存在に向けて、声をかけた。


「名前は、考えているか? もし、まだ決まっていないなら、一緒に考えよう」


小さな存在が、少し考え込むように、沈黙した。


『……分からない。だが、そなたたちが、決めてくれるなら、それを受け入れたい』


ミラが、優しく提案した。


「『(なぎ)』、なんてどうでしょう。混乱していた気持ちが、穏やかに静まっていく――そんな意味を込めて」


「凪……」


小さな存在が、その名前を、確かめるように繰り返した。


「良い名だ。受け取ろう」


セレンが、感慨深そうに、二人の新しい仲間――淡と凪を見つめた。


「これは、本当に、歴史的な発見だ。歪みが、独立した存在として、安定する現象――しかも、複数の事例が確認できた」


ガレンへの報告も、急いで進める必要があるだろう。だが、今は、新しい仲間を迎える喜びを、まず感じたかった。


「凪さん、これから、よろしくお願いします」


「うむ……よろしく、頼む」


西の地方での新しい挑戦は、新たな仲間と共に、確かな成果を残していた。ロウ、ミラ、淡、そして凪――四人の旅が、これから、さらに広がっていく。

お読みいただきありがとうございます!


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