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捨てられた荷物持ちの俺、死にかけて覚醒する  作者: beck2026


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第36話 出発の準備

西の地方への出発を数日後に控え、俺たちは準備に取り掛かっていた。これまでの第十二層での経験とは違い、未知の土地での長期的な任務になる可能性が高い。


「持っていく道具を、整理しないとな」


俺は、《保管》の中に収めている荷物を、一つずつ確認していった。荷物持ちだった頃の習慣が、こんな場面でも、自然と発揮されている。


「ロウさんは、本当に、整理が得意ですね」


ミラが、感心したように言った。


「荷物持ちとして、長くやってきましたから。何をどう持っていくか、考えるのは、得意分野です」


淡が、興味深そうに、《保管》から取り出される道具の数々を見ていた。


「これだけの量を、その小さな空間に、収めているのか」


「はい。空間そのものを操る力なので、見た目以上に、たくさん入ります」


「不思議な力だ。我が、歪みであった頃は、ただ空間を『壊す』ことしか、知らなかった。そなたは、空間を『活かす』ことを、知っている」


その言葉に、少し考えさせられた。


「壊すことと、活かすこと……同じ時空魔法でも、使い方次第で、全く違う結果になるんですね」


「そうかもしれない」淡が、静かに頷いた。


セレンが、訓練場に新しい資料を持って現れた。


「出発前に、もう一つ、確認しておきたいことがある」


「何ですか」


「淡殿の力についてだ。今のところ、ほとんど力を失っている状態だが、もし、また何らかの『歪み』に遭遇した時、何か反応が起きるかもしれない」


淡が、少し緊張した様子で尋ねた。


「我が、また、不安定になる可能性がある、ということか」


「断定はできない。だが、可能性として、考慮しておく必要がある」


セレンが、淡に向けて、いくつかの簡単な検査を行った。空間への反応、感情の動き、力の残量――これまでの観察結果を、改めて確認していく。


「今のところ、安定している」セレンが、結果を見ながら言った。「だが、西の地方の歪みに近づいた際、何か変化が起きる可能性は、否定できない」


「もし、何か起きたら、どうすればいいですか」俺は尋ねた。


「すぐに、淡殿を、現場から離すこと。それと、ロウ殿とミラ殿の力で、安定させる試みをしてほしい」


「分かりました」


ミラが、心配そうに淡を見た。


「淡さん、大丈夫ですか」


「分からない」淡が、正直に答えた。「だが、もし、何か起きたとしても、そなたたちが、傍にいてくれるなら……それだけで、心強い」


その言葉に、俺とミラは、互いに頷き合った。


「淡さんのことは、俺たちが守ります」


「我が、守られる立場になるとは……不思議な気分だ」


淡が、少し戸惑った様子で、それでも、安心したような表情を見せた。


準備が進む中、ガレンが、出発前の最後の打ち合わせのため、再び拠点を訪れた。


「準備は、順調か」


「はい。あとは、出発を待つだけです」


「西の地方には、ギルドの支部もある。到着したら、まず、現地の状況を確認してほしい」


「分かりました」


ガレンが、改めて、三人を見渡した。


「君たちの旅は、これまでとは違う、新しい挑戦になる。だが、これまでの経験が、必ず役に立つはずだ」


「はい。頑張ります」


出発の日が、確実に近づいていた。荷物持ちだったロウ、無自覚だったミラ、そして歪みから生まれた淡――三人の旅が、新たな土地へと、その一歩を踏み出そうとしていた。

お読みいただきありがとうございます!


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