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捨てられた荷物持ちの俺、死にかけて覚醒する  作者: beck2026


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第35話 ギルドからの新たな依頼

数日後、淡は少しずつ、人としての暮らしに慣れていった。食事をする、眠る、街を歩く――かつて「歪み」だった存在には、どれも新鮮な経験のようだった。


「この食べ物は、不思議な味がする」


朝食の席で、淡がパンを見つめながら呟いた。


「美味しいですか?」ミラが尋ねる。


「分からない。だが、悪い感覚ではない」


そんなやり取りに、俺は思わず笑ってしまった。荷物持ちだった頃には、こんな穏やかな朝を過ごせるとは、想像もしていなかった。


食事を終えた頃、ギルドからの使者が訪ねてきた。


「ロウ様、ミラ様。ガレン様が、お三方をお呼びです」


「三方……淡さんも、ですか」


「はい。新しい依頼の件で、ご相談があるとのことです」


ギルドに到着すると、応接室に、ガレンとセレンが揃って待っていた。


「来てくれたか。早速だが、本部から、新しい依頼が届いている」


ガレンが、資料をテーブルに広げた。


「西の地方で、似たような『時空の歪み』の兆候が報告されている。まだ確証はないが、第十二層と同じような現象かもしれない」


「同じような現象……つまり、また別の『傷』がある、ということですか」


「可能性がある。アーシェル殿の時代、歪みが生まれたのは、この地だけではなかったのかもしれない」


セレンが、地図を指し示した。


「もし、これが本当に同種の現象なら、君たちの経験が、何よりも貴重な手がかりになる」


淡が、少し緊張した様子で口を開いた。


「我のような存在が、他にも生まれている可能性がある、ということか」


「その可能性は、否定できない」セレンが、慎重に答えた。「だが、今回は、最初から君たちが対応できる。前回のような、手探りの状態ではない」


ミラが、少し不安そうに尋ねた。


「西の地方というのは、どれくらい離れているんですか」


「馬車で、二週間ほどの距離だ」ガレンが答えた。「ロウ殿の力を使えば、もっと早く着けるかもしれないが、未知の土地での移動は、慎重に進めた方がいいだろう」


「俺たちが、行くべきですか」


「強制はしない」ガレンが、はっきりと言った。「だが、君たちの経験は、他の誰にも代えられないものだ。可能であれば、協力してほしい」


俺は、ミラと淡の方を見た。


「どう思いますか」


ミラが、少し考えて、答えた。


「もし、本当に同じような苦しみを抱えた存在がいるなら……助けてあげたいです」


淡も、静かに頷いた。


「我のような存在が、もしいるなら……我にも、何か、できることがあるかもしれない」


俺は、改めてガレンとセレンに向き直った。


「分かりました。行きます」


セレンが、安心したように微笑んだ。


「ありがとう。準備は、こちらでも進めておく。出発は、数日後を予定している」


応接室を出ると、淡が、少し考え込むような表情を見せていた。


「淡さん、大丈夫ですか」俺は尋ねた。


「……我のような存在が、他にもいるとしたら。その存在も、苦しんでいるのだろうか」


「分からない。でも、もしそうなら、お前の経験が、きっと役に立つはずだ」


淡が、小さく頷いた。


「そうだな。我は、もう一人ではない。そなたたちと一緒なら、向き合えると思う」


ミラが、温かい笑顔で言った。


「一緒に頑張りましょう、淡さん」


第十二層で始まった物語は、新たな土地へと、その舞台を広げようとしていた。荷物持ちだったロウの旅は、まだ、終わりが見えない。

お読みいただきありがとうございます!


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