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捨てられた荷物持ちの俺、死にかけて覚醒する  作者: beck2026


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第29話 持久力の修練

文献調査から数日後、俺とミラは、新たな修練に取り組むことになった。亀裂に直接近づき、力を保ち続けるための持久力――これまでの訓練とは、また違った種類の鍛錬だった。


「今日は、力の『持続』に焦点を当てる」セレンが、訓練場で説明を始めた。「短時間で強い力を出すのと、長時間、安定した力を保ち続けるのとでは、必要な技術が全く違う」


「具体的には、何をすればいいんですか」


「まずは、それぞれ単独で、長時間、力を保つ訓練をしてもらう」


俺は座標点に意識を集中し、小さな空間の歪みを作り出した。これまでの戦闘で使うような、強く一瞬の力ではなく、弱く、長く続ける力だ。


「……これは、思っていたより難しいですね」


数分後、額に汗が浮き始めた。力の量自体は小さいはずなのに、保ち続けることに、思いがけない疲労を感じる。


「集中力の質が違うんだ」セレンが説明した。「瞬発力と持久力は、別の筋肉を使うようなものだ」


ミラも、隣で同じように苦労していた。


「私も、すぐに疲れてしまいます……」


「最初は、誰でもそうだ。少しずつ、慣らしていくしかない」


訓練は、何日も続いた。最初は数分しか保てなかった力が、少しずつ、十分、二十分と、持続時間が延びていく。荷物持ちだった頃の地道な積み重ねが、こういう場面でも、自分を支えてくれているように感じた。


「ロウさん、最近、少し変わりましたね」


休憩中、ミラがそう言った。


「変わった、というのは」


「前は、もっと焦っているような感じがしました。今は、なんだか、落ち着いて見えます」


「そうかもしれません」少し考えて、答えた。「これまでは、早く力をつけなきゃ、災厄に対抗しなきゃ、って気持ちが強かったんです。でも、修練を続けるうちに、焦っても仕方ないって、気づいたような気がします」


「焦っても、仕方ない、ですか」


「結局、積み重ねるしかないんですよね。荷物持ちだった頃も、同じでした。一日一日、地味な作業を続けるしかなかった。今も、それと同じなんだと思います」


ミラが、納得したように頷いた。


「私も、同じように思えるようになってきました。怖い気持ちは、まだあります。でも、焦らず、積み重ねていけば、きっと大丈夫だって」


セレンが、訓練の記録をまとめながら、こちらに声をかけた。


「二人とも、順調に力を伸ばしている。この調子なら、亀裂に近づく試みも、近いうちに実行できそうだ」


ガレンが、心配そうな表情で口を挟んだ。


「無理はしないでくれ。十分な準備が整うまで、待ってほしい」


「分かっています」


訓練を続けるうち、俺とミラの連携も、さらに自然になっていった。力を保つタイミング、互いの疲労を補い合う感覚――言葉を交わさなくても、息を合わせられるようになっている。


ある日の訓練後、セレンが満足そうに頷いた。


「持続時間、十分な水準に達した。安全装置の準備も整っている」


「では……」


「次は、実際に、亀裂に近づく試みを行う。慎重に、だが、確実に進めよう」


俺とミラは、互いに視線を合わせ、頷いた。これまでの修練の成果を、いよいよ試す時が来た。


「やりましょう」


第十二層の奥、災厄が眠る亀裂へ向かう日が、ついに決まった。荷物持ちだった頃には想像もできなかった道のりを、確実に歩んできたことを、改めて実感していた。

お読みいただきありがとうございます!


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