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捨てられた荷物持ちの俺、死にかけて覚醒する  作者: beck2026


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第27話 文献調査

歪みの「元」についての情報を集めるため、ギルドの本部から、古い文献や記録が次々と取り寄せられた。臨時拠点の一室が、いつの間にか資料室のようになっていた。


「アーシェル殿の時代の記録は、思っていたより少ない」セレンが、積み上げられた古い書物を見ながら言った。「ほとんどが、伝承や口伝として伝わっているだけだ」


俺とミラも、簡単な読み書きができる範囲で、資料の整理を手伝っていた。荷物持ちとして、こういった地味な作業には慣れている。


「これ、見てください」


ミラが、一冊の古い記録を指し示した。劣化した紙に、かすれた文字が並んでいる。


「『時の傷』……という言葉が書かれています」


セレンが、急いでその記録を確認した。


「『時の傷』、か。これは初めて見る表現だな」


記録には、断片的な記述が続いていた。


『時の傷とは、空間の歪みが極限に達した際に生じる、現実の裂け目である。アーシェル殿の時代、その傷は完全には癒えなかったと伝えられている』


「歪みの『元』というのは、この『時の傷』のことかもしれませんね」


「可能性は高い」セレンが頷いた。「もう少し、詳しい記述を探そう」


調査を続けるうち、別の文献から、もう一つの重要な記述が見つかった。


『時の傷は、完全に消し去ることはできぬ。だが、適切な力をもって「縫う」ことで、安定させることが可能であるという』


「縫う……」


「これは、災厄を封じるという発想とは、違うアプローチですね」俺が呟いた。


セレンが、興味深そうに頷いた。


「災厄を抑え込むのではなく、傷そのものを修復する、という考え方か。これなら、根本的な解決に繋がる可能性がある」


「どうすれば、縫うことができるんですか」


文献をさらに調べていくと、もう一つの記述が見つかった。


『傷を縫うには、空間と時間、二つの力を同時に、同じ場所に集中させる必要がある。さらに、それを長く保ち続けるための、強い意志が求められる』


「空間と時間……俺とミラさんの力が、まさにそれですね」


「そうだな」セレンが、興奮した様子で資料をまとめた。「これまでの封印強化とは、アプローチが全く違う。傷を縫うことができれば、災厄そのものも、自然と力を失う可能性がある」


ガレンが、部屋に入ってきて、議論に加わった。


「進展があったようだな」


「歪みの『元』――『時の傷』を、修復する方法が見つかりそうです」セレンが説明した。「ただ、まだ具体的な手順は不明だ。さらに調査が必要になる」


ミラが、少し不安そうな表情で口を開いた。


「もし、傷を縫うことができたとしても、それには、どれくらいの力が必要なんでしょうか」


「正直、まだ分からない」セレンが答えた。「だが、君たちの力だけでは、まだ足りない可能性が高い。さらなる修練が必要になるだろう」


俺は、これまでの道のりを思い返した。荷物持ちだった頃から、覚醒、ミラとの出会い、そして今、歪みの根本的な解決方法に近づこうとしている。


「やるべきことが、見えてきましたね」


「はい」ミラが頷いた。「焦らず、一つずつ進めていきましょう」


セレンが、新たな資料を取り出した。


「次は、『傷を縫う』ための、具体的な力の使い方を探ろう。古い記録の中に、何かヒントがあるかもしれない」


資料室の灯りの下、調査は夜遅くまで続いた。荷物持ちだった頃には想像もできなかった、地道で、しかし確実に前進する作業――それが、今、自分たちの力になっていることを、改めて実感していた。

お読みいただきありがとうございます!


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