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捨てられた荷物持ちの俺、死にかけて覚醒する  作者: beck2026


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第25話 深層への道

新たに現れた通路は、これまでの遺跡とは明らかに違う雰囲気を纏っていた。壁に刻まれた文字が、より複雑で、より古い時代のものに見える。空気そのものが、重く張り詰めていた。


「……なんだか、息が詰まりそうです」


ミラが、小さく呟いた。


「俺も、同じ感覚があります。ここは、本当に特別な場所なんでしょうね」


通路を進むにつれ、座標点の反応が、これまでとは違う動きを見せるようになった。普段なら静かに浮いているはずの光が、まるで何かに引かれるように、一方向へ流れている。


「この先に、何があるんでしょうか」


「分かりませんが……行くしかないですね」


しばらく進むと、開けた空間に出た。これまでの台座よりも、遥かに大きな祭壇のような構造物が、中央に鎮座している。その周囲には、無数の光る紋章が刻まれていた。


「これは……」


祭壇に近づくと、頭の中に直接、声が響いた。先程の結晶とは違う、もっと重厚で、もっと古い響きの声だった。


『……二つの欠片が、ここまで来たか』


「あなたは……結晶とは、違う存在ですか」


『私は、アーシェルが残した、最後の意志そのもの。結晶は、いわば入口にすぎぬ』


声の重みに、思わず息を呑んだ。


『そなたたちが、災厄に対抗する力を求めているのは知っている。だが、力を高めるには、相応の理解が必要だ』


「理解、というのは」


『アーシェルが、なぜ独りでは災厄を消し切れなかったのか――その理由を、本当に分かっているか』


俺とミラは、顔を見合わせた。これまで、力を合わせることが鍵だと考えていたが、それだけでは足りないということなのだろうか。


『アーシェルの過ちは、力だけに頼ったことだ。災厄は、時空の歪みそのものから生まれた存在。力で押し込めることは、一時的な解決にしかならぬ』


「じゃあ、どうすればいいんですか」


『災厄の根源を、理解する必要がある。なぜ、時空の歪みから、あのような存在が生まれたのか』


祭壇の紋章が、一際強く光り始めた。


『この場所には、災厄が生まれた経緯――アーシェルが見た、最後の記憶が刻まれている。受け取る覚悟はあるか』


俺はミラを見た。彼女も、緊張した表情で頷いている。


「覚悟、あります」


『……良い。では、見るがいい』


祭壇から、強い光が放たれ、俺たちを包み込んだ。視界が一瞬、真っ白に染まる。


次に見えたのは、数百年前の光景だった。巨大な時空の裂け目――今、第十二層にある亀裂よりも、遥かに大きなもの――が、空に浮かんでいる。


アーシェルらしき人物が、その裂け目に向かって、必死に力を使っている様子が見えた。だが、裂け目は完全には閉じない。むしろ、その一部が、まるで意志を持つように、独立した存在へと変化していく。


『……あれが』


声が、静かに告げる。


『時空の歪みが大きすぎたために、完全に閉じることができず、その残滓が、独自の意識を持った。それが、災厄の正体だ』


「残滓……つまり、災厄は、本来の歪みの『一部』ということですか」


『そうだ。そして、これが重要な点だ――歪みの『元』は、まだ完全には解消されていない』


「元、というのは」


『災厄を消し去るだけでは、根本的な解決にはならぬ。歪みそのものに、向き合う必要がある』


視界が、元の祭壇の景色に戻っていく。俺とミラは、しばらく言葉を失っていた。


「歪みそのものに、向き合う……」


ミラが、不安そうな声で呟いた。


「ロウさん、これは、思っていたより大きな話になっていませんか」


「……そうかもしれません」


祭壇の光が、徐々に収まっていく。


『そなたたちには、まだ時間がある。だが、いずれ、この真実と向き合う日が来るだろう』


声が静かに消えていき、祭壇は元の静けさに戻った。


俺とミラは、しばらくその場に立ち尽くしていた。災厄を消すだけでは終わらない、もっと深い問題が、その先に待っていることを、今、初めて知った。


「セレンさんたちに、報告しないと」


「はい……でも、どう説明すればいいんでしょうか」


二人とも、答えの出ない問いを抱えながら、祭壇の空間を後にした。第十二層の奥に眠る真実は、想像していたよりも、遥かに大きなものだった。

お読みいただきありがとうございます!


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