第20話 遺跡での覚醒
数日後、俺とミラ、セレン、そして調査隊の数名が、第十二層の遺跡へ向かった。座標点を使って移動を短縮できる俺の力のおかげで、これまでより遥かに早く到着することができた。
「これが……」
遺跡の通路に足を踏み入れたミラが、息を呑むように呟いた。
「不思議な感じがします。懐かしいような、でも初めて来たはずなのに」
「俺も、最初に来た時、似たような感覚がありました」
台座のある空間に到着すると、結晶が以前と同じように静かに浮いていた。セレンが資料を確認しながら、準備を進める。
「ミラ殿、結晶に触れてみてくれ。無理だと感じたら、すぐに手を離していい」
ミラは少し緊張した様子で頷き、ゆっくりと結晶に近づいた。俺はその様子を、少し離れた場所から見守っていた。
ミラの指先が結晶に触れた瞬間、淡い光が広がった。前回、俺が体験した時と同じ現象だ。
『……新たな、継承者か』
声が響く。今回は、俺の頭の中にも聞こえてきた。
「私の中にも、本当に力が……?」
『そなたの中に流れる力は、まだ目覚めて間もない。だが、確かにアーシェルの欠片だ』
ミラの体が、淡い光に包まれていく。表情には驚きと不安が混じっていたが、それでも目を逸らさなかった。
「怖くないですか」俺は思わず声をかけた。
「怖いです……でも、ロウさんも、同じことを経験したんですよね」
「はい。最後まで、ちゃんと見ています」
ミラは小さく頷き、再び結晶に意識を集中させた。
光が強くなり、ミラの周囲に、これまで見たことのない座標点が浮かび上がってきた。だが、俺のものとは少し違う輝きをしている。
「これは……」セレンが興奮した様子で呟いた。「時間の流れに関わる、特性が強い力のようだ」
『そなたの力は、空間ではなく、時間に近い性質を持つ。アーシェルの力の、もう一つの側面だ』
「時間の側面……」ミラが、自分の周りに浮かぶ光を見つめながら呟いた。
『試してみるがいい。そなたの内にある力を』
ミラは少し戸惑った様子だったが、ゆっくりと手を伸ばし、近くの座標点に意識を向けた。
「……遅れろ」
その言葉と共に、座標点が震え、空間全体にわずかな変化が起きた。近くにあった小石が、ゆっくりと、まるでスローモーションのように地面に落ちていく。
「これが、私の力……」
ミラが驚いたように、自分の手を見つめた。
「時間の流れを、一部だけ操作できる、ということか」セレンが資料に何かを書き込みながら呟いた。「ロウ殿の空間操作と、組み合わせれば――」
『そう、それこそが、アーシェルが望んだことだ』
結晶の声が、静かに響く。
『空間を繋ぐ力と、時間を操る力。二つが合わさることで、初めて、完全な時空魔法に近づく』
俺とミラは、思わず顔を見合わせた。
「俺たちの力を、組み合わせる、ということですか」
『そうだ。アーシェルが独りでは至れなかった境地に、そなたたちならば近づけるかもしれぬ』
光が徐々に収まっていき、結晶は再び静かな状態に戻った。ミラは、まだ興奮した様子で自分の手を見つめている。
「私にも、本当に力があったんですね」
「はい。これから、一緒に色々試していくことになると思います」
ミラが、少し安心したように笑った。
「よろしくお願いします、ロウさん」
セレンが、興奮した様子で調査隊に指示を出し始めた。
「この発見は、本部にも急いで報告する必要がある。空間と時間、二つの力の組み合わせ――災厄への対策に、大きな進展があるかもしれない」
遺跡を出る道中、俺はミラと並んで歩いていた。
「ロウさんは、覚醒した時、どんな気持ちでしたか」
「正直、混乱していました。でも、今までずっと無駄だと言われてきた力が、初めて意味を持った気がして、嬉しかったです」
「私も、今、同じ気持ちです」
霧の中、二つの力を持つ者同士が、並んで歩いていく。荷物持ちだった頃には想像もできなかった仲間が、確かに、自分の隣にいた。
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