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捨てられた荷物持ちの俺、死にかけて覚醒する  作者: beck2026


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第19話 ミラとの出会い

セレンの報告から数日後、ギルドに新しい来訪者が到着した。俺はガレンと共に、受付近くで彼女を待っていた。


「あの方が、ミラ殿だ」


ガレンが指し示した先に、小柄な女性が立っていた。旅装姿で、緊張した様子であたりを見回している。年齢は、自分と同じくらいだろうか。


「初めまして。ミラと申します」


近づいてきた彼女は、少し硬い表情で頭を下げた。


「ロウです。よろしくお願いします」


「セレン様から、事情はある程度伺いました。でも、正直まだ、よく分からないことばかりで……」


ミラの声には、不安が滲んでいた。突然、自分の中に伝説の魔法使いの力があると言われたら、当然の反応だろう。


「分かります。俺も、最初は混乱しました」


「ロウさんも、同じだったんですか」


「俺は荷物持ちでした。戦闘職じゃなく、ただ荷物を運ぶだけの役割で、パーティの中でも一番下に見られていました」


ミラが少し驚いたように俺を見た。


「ロウさんが、危険度Aを単独で討伐したという方ですよね。荷物持ちだったなんて、想像できません」


「覚醒する前は、本当にそうだったんです。《保管》しか使えなくて、戦闘では役に立たないと、ずっと言われ続けていました」


ミラの表情が、少し和らいだ気がした。


「私も、似たような感じです。薄い時間の遅延なんて、薬の調合に役立つくらいで、誰も魔法だとは思っていませんでした。私自身も、最近まで気づいていなかったんです」


ガレンが、応接室へ案内する形で声をかけた。


「詳しい話は、座って進めよう。ロウ殿、ミラ殿に時空魔法の概要を説明してもらえるか」


「分かりました」


応接室に座り、俺はこれまでの経緯――《保管》しか使えなかったこと、覚醒した経緯、遺跡でアーシェルの記憶に触れたこと――を、できるだけ分かりやすく説明した。


ミラは熱心に聞きながら、時々質問を挟んだ。


「アーシェル様が、自分の力を欠片に分けて残した、ということですか」


「そうらしいです。俺たちが持っている力は、その欠片の一部、ということになります」


「私の中にも、その欠片があるなんて、まだ実感がないです」


「最初はみんなそうだと思います。俺も、覚醒するまで、自分の中にそんな力があるなんて、考えもしませんでした」


セレンが部屋に入ってきて、話に加わった。


「ミラ殿、覚醒を促す試みを、いくつか考えている。だが、無理に進めるつもりはない。本人の意志を優先したい」


ミラは少し考え込み、ゆっくりと頷いた。


「正直、怖いです。でも、もし私の力が、本当に何かの役に立つなら――協力したいです」


その言葉に、少し胸が熱くなった。荷物持ちだった頃の自分を思い出す。役に立たないと言われ続けていた力が、実は何かの助けになるかもしれない――それを知った時の感覚を、ミラも今、味わっているのかもしれない。


「無理はしなくていいです。でも、もし覚醒できたら、きっと、自分でも驚くような力が見えてくるはずです」


ミラが小さく笑った。


「ロウさんの言葉、なんだか説得力があります」


セレンが資料を取り出し、説明を続けた。


「覚醒の試みは、第十二層の遺跡で行うのが、最も効果的だろう。アーシェル殿の力が、最も強く残っている場所だ」


「俺も、同行します」


「頼む。ロウ殿の存在が、ミラ殿の覚醒を促す可能性もある」


ミラが少し緊張した様子で、俺を見た。


「よろしくお願いします、ロウさん」


「こちらこそ。お互い、頑張りましょう」


応接室を出ながら、俺は不思議な感覚を覚えていた。荷物持ちとして独りで戦ってきたこれまでの日々が、ここで、もう一人の同じ立場の人間と繋がろうとしている。


「アーシェル様、これが、あなたが見越していたことなんですかね」


第十二層の遺跡へ、再び向かう日が、もう決まっていた。

お読みいただきありがとうございます!


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