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捨てられた荷物持ちの俺、死にかけて覚醒する  作者: beck2026


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第18話 セレンの帰還

セレンが調査に出てから、二週間が経っていた。その間、俺は変わらず第十二層への監視を続けながら、ガレンと共に状況の整理を進めていた。


ある日の夕方、ギルドに駆け込んできた使者が、セレンの帰還を知らせた。


「セレン様が、お戻りになりました!すぐにご報告があるとのことです」


ガレンと共に応接室へ向かうと、旅装のままのセレンが、疲れた様子で椅子に座っていた。


「セレン殿、お疲れさまでした。成果は――」


「見つけた」


セレンが短く言い、資料を取り出した。


「東の国境付近で、確かに時空魔法に似た力を使う人物を見つけた。本人と話もした」


「アーシェル殿の欠片を持っている、ということですか」


「断定はできないが、可能性は高い。本人は自覚していないようだったが、空間に関する独特な感覚を持っていた」


セレンが資料を広げる。そこには、若い女性の特徴が記されていた。


「名前は、ミラ。国境の村で、薬師をしている女性だ。本人は魔法使いとしての自覚はないが、薬の調合の際に、時間の経過を操るような不思議な現象を起こしていた」


「時間を操る……」


「正確には、薄い時間の遅延、といった程度のものだ。だが、これは時空魔法の素養がなければ、起こり得ない現象だ」


ガレンが頷いた。


「ロウ殿が荷物持ちだった頃の《保管》のように、本人が無自覚なまま、力の一端を使っていた、ということか」


「その可能性が高い」セレンが答える。「本人に、事情を説明し、協力を依頼してきた」


「来てくれるんですか」


「迷っていたようだが、最終的には頷いてくれた。数日後には、こちらに到着するはずだ」


少し緊張するような感覚があった。アーシェルの別の欠片を持つ者――自分と同じ系譜の力を持つ人物と、初めて会うことになる。


「セレン殿、もう一つ気になることがあります」


「何だ」


「災厄が、『アーシェルは独りで挑んだことが、限界の理由かもしれない』と言っていました。これは、複数の欠片を合わせることで、何か違う結果が出る可能性がある、ということですか」


セレンは少し考え込むように沈黙し、答えた。


「正直、確証はない。だが、アーシェル殿が複数の欠片を残したこと自体に、何か意図があったのかもしれない」


「意図、ですか」


「一人では足りない力を、複数人で補い合うこと。それを見越して、力を分けたのかもしれない」


部屋に、静かな緊張感が広がった。荷物持ちだった自分が、まさかこんな大きな計画の一部になるとは、改めて実感が薄かった。


「ミラさんが来たら、どう進めるんですか」


「まずは、力の相性を確認する。その後、可能であれば、共同で封印強化の試みを行う」


「俺は、何をすればいいですか」


「君は、引き続き第十二層の監視を頼みたい。それと、ミラ殿が到着したら、彼女に時空魔法について説明できるのは、おそらく君が最適だろう」


「俺が、ですか」


「本人が無自覚なまま力を持っていたという点で、君と似た立場にいる。同じ経験をした者の言葉は、きっと役に立つはずだ」


その言葉に、少し納得した。荷物持ちとして見下されていた経験すら、今では誰かの役に立つ材料になっている。


「分かりました。準備しておきます」


部屋を出て、夜の街を見渡す。数日後に来るミラという人物が、どんな存在なのか、まだ分からない。だが、確実に、状況が大きく動き始めていた。


「アーシェル様、これがあなたの意図、なんですかね」


夜空に向かって、静かに問いかける。答えは返ってこなかったが、不思議と、前に進む力が湧いてくるのを感じていた。

お読みいただきありがとうございます!


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