1533年2月2度目の市の日。昼過ぎに漁師のところに話に行く八郎。市毎でしたが毎日下魚売ってもらえませんか?
市を出している昼過ぎ。
少し落ち着いたところで、八郎は四郎、五郎を連れて漁師たちのところへ向かった。
「こんにちは」
「おう、坊主!」
「今日も魚使ってくれとるか?」
「もちろんです」
「ありがたいわ」
漁師たちは本気で喜んでいた。
「前まで捨ててた魚やからな」
「値がつくだけで全然違う」
「こちらこそ助かってます」
八郎は頭を下げる。
「それで相談なんですが」
「なんや?」
「今は週二回ですよね」
「ああ」
「これを増やしたいと思っています」
「増やす?」
「はい」
「今、三郎兄様に味付けを覚えてもらっています」
「あの炒め飯の兄ちゃんか」
「はい」
「兄様がつみれ汁を作れるようになれば、市の日以外でも売れます」
漁師たちは驚く。
「毎日か?」
「いきなり毎日は無理です」
「でも週二回を週七回に近づけたいです」
「そうなったら……」
漁師が考える。
「下魚、もっと買うんか?」
「買います」
「しかも」
「弟子を育てます」
「弟子?」
「はい」
「ここで下処理できる人を作ります」
「そして隣の市にも出します」
漁師たちが固まる。
「待て待て」
「はい?」
「お前、隣にも店出すんか?」
「予定です」
「この領地、市三つありますから」
「三つ?」
「はい」
「できれば三つとも」
一瞬沈黙。
そして。
「わはははは!」
漁師たちは大笑いした。
「お前、三歳児ちゃうやろ!」
「三歳です」
「三歳児が市三つ押さえるとか言わん!」
「押さえるんじゃないです」
「店を出すだけです」
「一緒や!」
また笑いが起きる。
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漁師の一人が笑いながら言った。
「でもありがたい話や」
「俺らからしたらな」
「今まで捨ててた魚が飯になる」
「銭になる」
「子供に飯食わせられる」
「それ作った坊主に五万文払えってか」
少し顔が険しくなる。
「まあ、それは……」
八郎が苦笑する。
「決まったものは仕方ありません」
「だから稼ぎます」
「ただ」
「稼ぐ時に、自分だけ儲けても意味ないです」
「魚買って」
「人雇って」
「仕事作って」
「みんなで返します」
漁師たちは黙った。
「坊主」
「はい」
「ほんま変な奴やな」
「よく言われます」
「でも」
漁師は笑った。
「嫌いじゃないぞ」
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帰り道。
五郎が言った。
「八郎」
「はい」
「お前また話広げたな」
「そうですか?」
「市三つ全部とか言うてたやろ」
「必要ならです」
三郎も苦笑する。
「俺、炒め飯だけの予定やったんやけどな」
「兄様ならできます」
「また勝手に決める」
「嫌ならやめてもいいですよ」
「いや」
三郎は笑った。
「面白くなってきたから困る」
父も笑う。
「ほんまやな」
「一ヶ月前まで借金どうするか悩んでた家とは思えん」
八郎は荷車を押しながら言った。
「まだ何も終わってませんよ」
「五万文もあります」
「村の借金もあります」
「やること山ほどあります」
父が呆れる。
「三歳児の背負う量ちゃうわ」
「だからみんなでやるんです」
その一言に、誰も反論できなかった。




