↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
933/1041

1537年。四月一週目 約束を守って、みんなで新婚旅行?

 四月一週目。

 京へ向かう話を本格的に始める前に。

 八郎には、一つ片づけておかなければならない約束があった。

「……大友様との話、ありましたよね」

「縁組の話ですか?」

「はい」

 今回の大戦。

 大友家は大量の兵を出し、兵糧も船も用意してくれた。

 銭で精算するものは精算する。

 だが、それ以前から。

 大友の殿からは、八郎家との縁をもう少し深くしたいという話が出ていた。

「約束した以上、知らん顔するわけにもいかんでしょう」

 そこで。

 大友家の姫君たちがいるところへ、八郎は顔を出した。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「えーっと」

「何でしょう、八郎様」

「ちょっと聞きにくいんですけど」

 姫君たちが顔を見合わせる。

「この中で、僕のところへ嫁いでもええという人、います?」

 一瞬。

 静かになった。

「……聞き方!」

 夏姫が横から突っ込んだ。

「いや、仕方ないでしょう」

「もう少しあるでしょう!」

「でも僕、半分仕事で来てますから」

「もっと悪いです!」

 八郎は困った顔をする。

「大友様から、縁組してくれって言われたんですよ」

「また人のせいにしてますね」

「人のせいじゃなくて、ほんまに言われたんですって」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「一応、先に言っときますけど」

 八郎は指を三本立てた。

「僕、今、嫁が三人います」

 筆頭は夏姫。

 大友三女。

 そして尼子の姫君。

「さらに嫁候補も何人かいます」

「自分で言うてておかしいと思わないんです?」

「思ってますよ」

「なら減らしなさい」

「政治の話も混じるから無理なんです」

 七歳の口から出る話ではなかった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「それでも」

 八郎は姫君たちを見る。

「こんな感じの僕でも、嫁いでもええという方がいたら」

 何人かが、おずおずと手を挙げた。

「……結構おる」

「そらおるでしょう」

 夏姫が呆れる。

「八郎様のところへ行けば家の扱いも悪くならないし、今の八郎家の勢い考えたら」

「政治的な理由もありますよね」

「あります」

「正直でよろしい」

 八郎は頷いた。

・・・・・・・・・・・

「で」

 一番困ったのは、その次だった。

「どうやって決めましょう?」

「八郎様のお好みで決めたらよろしいでしょう」

「僕の?」

「はい」

「うーん」

 八郎は本気で考える。

「姫様同士で仲良くしてくれる人がいいです」

「……」

「家庭円満が一番ですから」

「そういう意味じゃありません」

「え?」

「八郎様自身の好みです」

「だから、揉めない人」

「違います!」

・・・・・・・・・・・・・・・・

 結局。

 八郎が以前からよく話していた一人の姫君を呼んだ。

「えーっと」

「はい」

「大友様からも話がありますし」

「はい」

「もし嫌じゃなければ、うちへ来ます?」

 また夏姫が頭を抱えた。

「その誘い方、なんとかなりません?」

「でも変に格好つけるのも違うでしょう」

 姫君はしばらく八郎を見ていた。

 そして。

「そう言っていただけるなら、私は参ります」

「ほんまです?」

「ただし」

「はい」

「なんとなく決まったから、なんとなく嫁ぐ、というのは嫌です」

 八郎も頷く。

「そらそうですよね」

「八郎様が私を迎えると決めてください」

「分かりました」

 少し考え。

「では、僕からお願いします。八郎家へ来てください」

「はい」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 話がまとまると。

 周囲の姫君たちは、また八郎を見る。

「また増えましたね」

「いやいや、大友様との約束ですから」

「また人のせいにしてる」

「考えてくださいよ」

 八郎は両手を広げた。

「僕、七歳ですよ?」

「七歳が何十億文も動かして、何か国も面倒見て、嫁が三人いて、さらに増やしてるんですよ」

「はい」

「どこを七歳として考えたらいいんです?」

「そこは僕にも分かりません」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 そこで八郎は、ふと思い出したように言った。

「そうや」

「何です?」

「僕、京へ行こうと思ってるんですよ」

「京?」

「はい」

 文化人も見たい。

 本も欲しい。

 畿内の様子も知りたい。

「せっかくやから、新婚旅行にしましょうか」

 新しく縁が決まった姫君が少し驚く。

「新婚旅行、ですか?」

「はい」

「私と?」

「いや」

 八郎は周囲を見回した。

「みんなで」

「……みんな?」

「夏姫も、大友三女も、尼子の姫君も」

「それ、新婚旅行って言うんですか?」

「家族旅行?」

「言い換えても変です!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 夏姫がため息をついた。

「旦那様」

「はい」

「普通、新婚旅行に既存の奥方全員連れていきません」

「でも一人だけ連れてったら揉めるでしょう?」

「そこで家庭円満出してくるんですか」

「大事ですから」

「ほんまに七歳とは思えませんね」

「もう七歳です」

「そういう問題ではありません」

 笑いが起きる。

 四月一週目。

 京へ向かう前に。

 八郎は大友との約束を一つ果たし。

 また一人、八郎家に新しい縁を迎えることになった。

 そしてそのまま。

 複数の姫君を連れて京へ行くという、どう考えても普通ではない“新婚旅行”まで計画し始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。