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1535年5月2週目。大友領の市の立ち上げを行っていた兄様達が帰宅。大内大友と話がまとまりそうな雰囲気。姫君が増えるかもwww

五月も二週目に入り、豊後へ派遣されていたニ郎、三郎をはじめとする八郎の兄たちが、

ようやく領地へ帰ってきた。

 大友商会の市は八つまで立ち上がり、残りは大友家の者たちだけでも順番に増やしていける

 見通しが立った。

 芋の作付けについても、水はけの悪い畑や米作りに向かない土地を中心に広げる方針が決まり、

 農民たちへの引き継ぎまで終えている。

「皆様、お疲れさまでございました」

 屋敷の広間で迎えた八郎が頭を下げると、三郎は疲れた顔で手を振った。

「ほんまに疲れたで。市を立ち上げるより、大友商会の者たちに自分でやる気になってもらう方が

 大変やったわ」

「芋の方も似たようなもんやな」

 ニ郎も苦笑した。

「最初は、こんなもん植えて何になるんや言われたけど、焼き芋を食わせて芋焼酎を飲ませたら、

 最後は皆やりたい言うてたわ」

 兄たちが持ち帰ったのは、仕事の成果だけではなかった。

「それでな。前に八郎家から大友家へ渡していた一千万文を返してもろた。

 それに市と芋の立ち上げへの礼として、もう一千万文を上乗せしてもろた」

「合わせて二千万文ですね」

「そういうことや。大友の殿様から、ちゃんと八郎に渡してくれと言われたで」

「ありがとうございます。皆様のお仕事に対する報酬ですから、本当は兄様方へ

 お渡しすべきかもしれませんが」

「いらん、いらん。どうせまた借金返済に使うんやろ」

「はい。肥前の借金へ回します」

 八郎が当然のように答えると、兄たちは顔を見合わせた。

「やっぱりそうなるんやな」

「この二千万文があれば、今月から来月にかけて、肥前の借金もかなり片づくと思います」

 そこで三郎が、帰り道ですれ違った早馬のことを思い出した。

「そういや、帰ってくる途中で早馬とすれ違ったけど、何かあったんか」

「大内様との話です」

「大内?」

 兄たちの表情が変わった。

「大内様から、博多の市と交易路を開放する代わりに、同盟を結べないかという話が来ました」

「俺らがおらん間に、また変なことになってんな」

「同盟は結びませんよ」

 八郎はすぐに説明した。

「大友様との関係がありますから、大内、大友、八郎家の三者で、一年ほど停戦を結ぶ方向で

 話を進めております」

 大内は博多の市場を開放し、大内領内での交易を認める。

 さらに、明との交易にも八郎商会を参加させることを検討する。

 八郎は領地の割譲を断り、その分を大友家への譲歩に回すよう求めていた。

「大友様も筑後の一部と交易権を得られます。大内様は攻められる危険を避けられます。

 うちは兵を出さずに博多と明への道を得られます」

「確かに、皆に利はあるな」

 次郎が感心したようにうなずいた。

「一兵も動かさず、それだけ取れるなら悪くない」

「それに、停戦が一年続けば、その間に肥前の立て直しを進められます」

「そしたら、次は四国か」

 三郎がにやりと笑った。

「いよいよ八郎の野望が動き出すわけやな」

「僕の野望は、前からずっと動いておりますよ」

「自分で言うんか」

 広間に笑いが起こった。

「南伊予では、もう炊き出しを始めております。港や村を回りながら、借金や商いの困り事を聞いて、

 八郎商会の市を入れられないか相談しております」

「もう手を入れてるやないか」

「まだ飯を配って話を聞いているだけです」

「八郎の場合、その飯の後に市ができて、証文が破られて、いつの間にか傘下に入っとるからな」

 琉球についても交易を増やす考えはあるが、距離が遠いため、今すぐ領地として押さえる必要はない。

「琉球は商いができれば十分です。まずは南伊予の方が近いですし、

 大内様との停戦中に少し進められると思います」

「なるほどな。ほんま、俺らがおらん間に次々動いとるわ」

 八郎はもう一つ、兄たちへ伝えておくべきことを思い出した。

「それから、大内家の姫君が、こちらへ遊学に来られるかもしれません」

 兄たちの顔が、そろって引きつった。

「何でや」

「大内様としても、停戦の間に八郎家との縁を深めたいそうです」

「それは八郎との縁やろ」

「いえ。兄様方とも仲よくしたいという話が出るかもしれません」

「いやいやいや、俺らはもう十分や」

 三郎が慌てて手を振った。

「よかったですね。ますます姫君たちが集まってこられますよ」

「全然よくないわ」

 すると、近くで話を聞いていた兄たちの妻や姫君たちが、そろって美しい笑顔を浮かべた。

「まあ、それは喜ばしいことでございますね」

「大内家の姫君とも、ぜひ仲よくなさってくださいませ」

「お家のためでございますものね」

 声は柔らかい。

 表情も満面の笑みである。

 しかし、兄たちはなぜか一斉に背筋を伸ばした。

「その笑顔、ちょっと怖いんやけど」

 ニ郎が恐る恐る言うと、春姫はさらに笑みを深くした。

「何も怖いことなどございませんよ」

「それが一番怖いねん」

 広間に大きな笑いが起こった。

 大友商会の立ち上げを終え、兄たちは無事に帰ってきた。

 肥前の借金返済にも目処が見え、大内との戦は停戦交渉へ変わり、

 南伊予では八郎商会の市が入り込もうとしている。

 八郎家の動きは、また一段大きくなっていた。

 ただし兄たちにとって、一番差し迫った問題は大内でも四国でもない。

 笑顔を張りつかせた妻たちの機嫌を、どうやって直すかということであった。

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