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1535年4月1週目。大内を除く九州中の有力者との御宴会。

 週末に九州中の有力者。大内を除くがwww宴会が開催された。

 当主だけではなく、それぞれの家の重臣や、年頃の姫君、若君たちも連れてきての大宴会である。

 八郎の家と縁を結ぶためだけの宴ではない。

 八郎の家が仲介役となり、九州の有力者同士に新たな縁を結ばせる。それによって家同士の争いを

 減らし、九州全体の治安を安定させようというのが、この宴の本当の目的であった。

「当主同士が顔を合わせるだけでも、随分と違いますからね」

 八郎は、集まった当主たちを前にそう説明した。

「別に、今日ここで必ず縁談を決める必要はありません。若い者同士が顔を覚えて、

 何度か話をする。その中で気の合う相手がおれば、後から話を進めればよいと思っております」

「なるほどな」

 大友の当主が感心したようにうなずいた。

「八郎の家だけで姫を抱え込むのではなく、九州中へ縁を広げるか」

「一つの家だけが強くなるより、皆が少しずつ強くなった方が、交易も回りやすくなりますから」

 道中の争いが減れば、商人は安心して荷を運べる。

 家同士が縁戚になれば、領境で小さな揉め事が起きても、すぐに戦へ発展することは少なくなる。

 米も塩も鉄も、九州の中を順繰りに動くようになる。

「もちろん、八郎家との縁談も大事にしたいと思っております。ただ、これほど大きな宴です。

 一つか二つ、新しい縁が生まれれば十分でしょう」

「その考え方ができるあたり、余裕があるな」

 大友の当主が笑うと、島津本家と分家の当主もそろってうなずいた。

「いやいや、こちらもありがたい話じゃ」

「島津同士で顔を合わせても、どうしても本家と分家の話ばかりになるからな。

 他家の若者まで一堂に集まる機会は、そうそうない」

 すると島津本家の当主が、少し羨ましそうな顔で分家の当主を見た。

「しかし、分家はええのう。すでに二人も八郎のところへ嫁がせておるではないか。

 うちは何とかならぬのか」

 その言葉に、周囲から笑いが起こった。

 八郎も困ったように笑いながら答えた。

「夏姫には、ようやってもろうておりますよ。側室候補の姫君が何人もおる中で、

 皆をまとめる役まで引き受けてくれております」

「夏姫が、そのようなことまでしておるのか」

「はい。ですから、無理に別の姫君まで迎えようとは思っておりません」

 八郎はそこで少し考え、続けた。

「ただ、姫君が大勢いる家に入るより、一人の男から一番に愛される方が幸せやと思う姫もおります。

 そういう姫には、このような縁を大事にしてもろうた方がええと思っております」

 さらに八郎は、自分の年齢ではまだ子を成すこともできないと率直に話した。

「僕がもう少し大きくなり、家の中も落ち着いてきたら、改めて縁を結ぶこともあるでしょう。

 ただ、それまで何年も待たせるのが、その姫にとって幸せかは分かりません」

「夏姫の先のことまで考えてくれておるのか」

 島津分家の当主は、驚いたように目を見開いた。

「まあ、まだ何も決めておりません。少し待ってください」

 八郎はそう言ってから、いたずらっぽく笑った。

「それに、どちらが面白いかにもよりますからね」

「面白いか、とな」

「僕と一緒に京都を目指す方が面白いのか。それとも、自分一人を愛してくれる男と

 家を盛り立てる方が面白いのか。夏姫自身に選んでもらえばよいと思っております」

「なるほどのう」

 当主たちは、それぞれに考え込んだ。

 宴の様子を見れば、八郎の考えはうまく回っていた。

 大友の若君と島津の姫が笑いながら話し、龍造寺の重臣の子と大友の姫が、

 領地で取れる作物について語り合っている。すぐに婚姻へ進まなくとも、顔と名を覚えるだけで

 意味はある。

「これは、やってよかったのではないか」

 大友の当主が満足そうに言った。

「ところで、八郎殿。宴が終われば、そなたの兄上方と姫君たちを、大友へ連れてきてくれるの

 じゃろうな」

「やります、やります」

 八郎は軽く答えた。

「兄様方には市の立て直しを手伝ってもらいますし、姫君たちにも領内を見てもらいます。

 それで大友と肥前の方が落ち着けば、次はいよいよ大内をどうするかの話です」

「どうするも何も、そなたは博多が欲しいのであろう」

「博多は欲しいです」

 八郎はそこだけは、迷いなく答えた。

「ですから筑前と筑後を、大友と相談しながら分けていく形になるのかなとは思っております」

「やはり考えておるではないか」

「考えてはおりますよ。ただし、今日や明日に攻めるつもりはありません」

 八郎は宴の広間を見渡した。

 今はまず、大友を立て直す。

 龍造寺、島津本家、島津分家との関係を安定させる。若者同士の縁を作り、

 商人が安心して九州中を動けるようにする。

 その土台ができてから、大内と博多の話へ進むのだ。

「攻めぬと言った言葉には、たがっておらぬようじゃな」

「そうです。まずは、その辺をきちんと片づけるところからです」

 五歳児の言葉とは思えぬほど順序立った答えに、当主たちは顔を見合わせた。

 酒と笑い声に満ちた大宴会の向こう側で、九州の新しい形が少しずつ組み上がろうとしていた。

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