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1535年1月正月。大友家の正月 八郎領の領内の暮らしは分かるが兄弟と仲良くしているか?未婚の男性陣は警戒しています。理由に大爆笑WWW

一月一日。

 大友家でも、新年の祝いが開かれていた。

 家臣たちが順番に広間へ入り、当主へ頭を下げる。

「明けましておめでとうございます。」

「今年もよろしくお願いいたします。」

「うむ。めでたい年になればええな。」

 祝い膳が並び、酒が注がれる。

 家臣の一人が、明るい声を出した。

「昨年は日向南部も加わり、国高も増えました。」

「大友家にとって、喜ばしい年でございましたな。」

 だが、大友の当主は少し渋い顔をする。

「国高が増えただけで喜ぶな。」

「あの辺は、もともと豊かな土地やない。」

「取ったらすぐ銭が湧いてくるわけでもないからな。」

「まずは治めることや。」

「はっ。」

「とはいえ、領地が増えたこと自体は悪くない。」

 当主は盃を置き、地図へ目を向けた。

「今は八郎のところとも停戦中。」

「姫たちも一部戻ってきとる。」

「あと半年は、ひとまず大きく動かんやろ。」

 重臣が頷く。

「八郎方は、二月か三月に龍造寺へ向かうと見ております。」

「その後、有馬、松浦まで肥前をまとめるつもりでしょう。」

「六月手前までは、そちらに掛かりきりかと。」

「ならば。」

 当主は小さく笑う。

「向き合うのは、その後やな。」

 そこへ、八郎領から帰ってきた姫君たちが、新年の挨拶に入ってきた。

「明けましておめでとうございます。」

「今年もよろしくお願いいたします。」

「うむ。」

 当主は目を細める。

「それで。」

「向こうの暮らしはどうや。」

 姫君の一人が、即座に答えた。

「すこぶる良うございます。」

「問題があるとすれば、八郎様も兄君方も忙し過ぎて、あまり遊んでくださらないことくらいです。」

「そこか。」

 広間に笑いが起こる。

 当主は少し不満そうに続けた。

「お前らの手紙を読んでも。」

「八郎領がどれだけ住みよいか。」

「市がどれだけ盛んか。」

「湯あみや高級湯あみがどうなったか。」

「そんな話ばっかりや。」

「わしがおらんで寂しい、という文が一つもない。」

 姫君たちは顔を見合わせ、思わず笑った。

「お父様。」

「寂しくて仕方ないような場所へ娘を送り出す方が、ひどい親ではありませんか。」

「住みよいところで良かったと喜んでください。」

「む……。」

 重臣たちが笑いを堪える。

 姫君は続けた。

「八郎領では、捨てられていたような品にも値を付けます。」

「ただし、既存の商いを潰さぬよう、値段を調整しております。」

「寺や神社の市も盛んです。」

「農民も商人も、買う楽しみを覚えております。」

「佐土原や日向とは、町の空気がまるで違います。」

「関西の大きな町を見ているようでございました。」

「話会というものも始まっております。」

「皆で話を聞き、笑ったり、考えたりする場です。」

「もう、食べるだけではなく、娯楽まで求め始めております。」

 当主は感心したように頷いた。

「農民と商人の暮らしを、下から押し上げとるわけやな。」

「はい。」

「戦については、私たちには詳しく分かりません。」

「ただ、肥前で戦うことを前提に、兵たちを毎日しごき回していることは見ております。」

「島津の兵まで教えに来ております。」

 重臣の一人が腕を組む。

「暮らしだけやなく、戦の備えもしておるか。」

「抜け目がないな。」

 当主は姫君たちを順番に見る。

「それで。」

「八郎の兄弟とは、仲良うなったんか。」

「努力しております。」

「努力?」

「はい。」

「島津の姫君たちは、すでに三人が兄君方と結ばれております。」

「ですが。」

 姫君は少し笑いを堪えながら続けた。

「残る兄君方は、八郎様を含め、女性を少々警戒しておられます。」

「なぜや。」

「島津分家の姫君と結ばれた兄君が、一夜を共にした翌朝。」

「鎧武者に囲まれ、その場で婚姻の話になったそうでございます。」

 一瞬、広間が静まる。

 次の瞬間。

「ははははは!」

 当主も重臣たちも、一斉に笑い出した。

「そこまでやるか!」

「島津もなかなかやな!」

「そら、残りの兄弟も警戒するわ!」

 姫君たちも笑う。

「面白い方々なんです。」

「ですから、もっと仲良くなりたいと思っております。」

「まあ。」

 当主は笑いを収めながら頷く。

「八郎はまだ五歳やからな。」

「せやけど、五歳であれや。」

「先々は、どこまで行くか分からん。」

 姫君が頷いた。

「本人は。」


「肥前を抑えた後は、大内、大友、八郎の三つが大きく残るだろうと見ております。」


「ですが、大きいところ同士で無理に戦うより。」


「四国の小勢力を取り込む方が得だと。」


「飛び地になっても構わないと申しておりました。」


「琉球も、取るより交易ができればよいと。」


 重臣たちが顔を見合わせる。


「大きい相手とは、今はぶつからん。」


「取れるところから取る。」


「八郎らしいな。」


 当主は遠くを見るように言った。


「それに、あやつは若い。」


「わしらより二十年、三十年長く生きる。」


「自分で攻めんでも。」


「大内や大友が内から崩れるのを待つこともできる。」


「そこが一番厄介や。」


 姫君が苦笑する。


「そこまで考えておられるかは分かりません。」


「ですが。」


「今年は肥前を取り。」


「その後は、市を立て。」


「借金を順番に消すことへ、一年ほど費やすと思います。」


 当主は静かに頷いた。


「戦より、その後が長い。」


「領地を取るたびに。」


「借金を返し。」


「飯を食わせ。」


「商いを作る。」


「それを繰り返すつもりか。」


「はい。」


 しばらく広間が静かになる。


 やがて当主は、盃を持ち上げた。


「ならば。」


「今年は八郎の動きを、よく見ておこう。」


「戦うにせよ。」


「組むにせよ。」


「知らん相手では話にならん。」


 姫君たちも深く頭を下げる。


「私たちも、よく見て参ります。」


「それと。」


「兄君方とも、できるだけ仲良くなって参ります。」


 当主は満足そうに笑った。


「それが一番大事や。」


「父上。」


「またそこですか。」


 広間に再び笑いが広がる。


 新しい年。


 大友家にとっても、八郎という存在は、もはや無視できないものになっていた。

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