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1533年1月3回目の飯屋。昼居酒屋も始める。常連さん達とも話しなじむ。領主から1500石の徴税を任され照る話を常連が聞きドン引きするwww

正月が過ぎ、八郎が三歳と一月になった二週目の市の日。

朝早くから、家の中は今まで以上に慌ただしかった。

「今回は、少し勝負します」

八郎がそう言うと、父も母も兄たちも顔を見合わせる。

「また何か考えたんか?」

父が聞くと、八郎はうなずいた。

「はい。まず飯の数を増やします。混ぜ飯、つみれ汁、炒め飯、揚げ物。それぞれ二十食ほど

 増やします」

「そんな作れるんか?」

「だから皆様の力が必要なんです」

八郎は笑った。

以前なら母一人が味付けをしていた。

だが今は違う。

三郎は炒め飯を覚え始め、父はつみれ汁を見ることができる。

雇った娘も、野菜を切ったり、器を運んだり、火加減を見るぐらいならできるようになっていた。

「最初は全部母上でした。でも今は違います。みんなが覚えてくれました」

母は少し嬉しそうに笑った。

「三歳の子に褒められるのも変な気分やね」

「母上が一番すごいんですよ。味を決める人がおらんかったら、何も売れません」

「ほんま口まで達者になったな」

父が苦笑する。

そして八郎が続けた。

「あと、今回はもう一つ増やします」

「まだあるんか?」

「酒です」

その言葉に兄たちが驚く。

「酒屋でも始めるんか?」

「違います。酒を売るんじゃなくて、飯と一緒に楽しんでもらう場所を作ります」

「昼から酒か?」

「はい。夜は無理です」

「なんでや?」

八郎は真顔で答えた。

「私が寝ます」

一瞬静まり返り、その後みんな大笑いした。

「そうやった!お前三歳やった!」

「忘れられてますけど、まだ子供です」

「中身は全然子供ちゃうけどな」

そう言われながら市へ向かった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

市につくと、すでに常連客が何人か待っていた。

「お、坊主来たか!」

「今日は何するんや?」

八郎は頭を下げる。

「今日は少し増やしました。それと酒も用意しました」

「なんやて?」

「坊主の店で酒が飲めるんか!」

一気に男たちの顔色が変わる。

「ただし、飲み過ぎは困りますよ」

「なんでや?」

「夕方には帰ってもらわないと、私が眠くなります」

また笑いが起きた。

「ほんまや!店主が三歳やった!」

「忘れとったわ!」

そして酒席が始まる。

一杯十五文。

「酒は値引きないんか坊主」

いつもの客が笑いながら聞く。

八郎は首を振った。

「すみません。飯は人数が増えたら少しできます。でも酒は仕入れがありますので」

「商売人やなあ」

「でも、ぼったくりではありませんよ」

「十五文か」

「はい。飯を食べながら少し飲むなら悪くないと思います」

「まあ確かにな」

男たちは酒を飲み、つみれ汁をすすった。

「うまいなあ……」

「この魚、本当に昔なら捨ててた魚なんか?」

漁師の男が笑う。

「最近は下魚にも銭がつくから助かるわ」

八郎は答える。

「こちらも助かっております。骨や頭を取っていただけるので、兄様方の手間が減りました」

「三歳がそんなこと言うな」

客たちは呆れながら笑った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

酒席ができたことで、客の滞在時間が伸びた。

ただ食べて帰るだけではない。

「最近どうや?」

「今年の米はなあ」

「卵売ったら銭になったぞ」

そんな話が自然と集まる。

八郎はそれを聞いていた。

市は物を売る場所だけではない。

情報が集まる場所。

それが分かっていた。

そんな中、客の一人が聞いた。

「しかし坊主、お前ほんま何者なんや?」

「ただの庄屋の八男です」

「嘘つけ」

周りが笑う。

父も苦笑しながら言った。

「実はな……八郎が今、千五百石分の徴税を見る話になっとる」

「は?」

酒を飲んでいた男が止まった。

「千五百石?」

「うちの領主様の一割ほどや」

「三歳児が?」

八郎は慌てる。

「父上が中心ですよ」

「いやいや、お前やろ」

母まで笑った。

「料理考えてるのも八郎やしねえ」

客たちは顔を見合わせる。

「なんか……とんでもないもの見てる気がするな」

「まあでも、市で銭使ってくれるしな」

「魚も買ってくれる」

「卵も買う」

「寄進もしとる」

少しずつ、八郎の存在は受け入れられていった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夕方前。

準備した料理はほぼなくなった。

酒も想定以上に出た。

父が銭袋を見る。

「……重いな」

前は嬉しかった。

しかし今は少し怖かった。

「父上、一つにまとめない方がいいです」

「分かっとる」

銭袋を三つに分ける。

父。

母。

兄たち。

それぞれが持つ。

「盗られたら洒落にならんな」

「はい。もう普通の農家が持つ銭ではありません」

家に帰り、改めて数える。

「……六千三百文」

父の声が震えた。

兄たちも黙る。

「六千三百……」

「一日で?」

八郎は帳面を開く。

「でも全部利益ではありません」

いつもの説明が始まる。

「飯の売り上げがおよそ五千四百文。酒が九百文ほどです」

父はため息をつく。

「それでも異常やぞ」

「はい。でも仕入れ、人件費、寄進があります」

八郎は続けた。

「魚を買った人、卵を売った人、野菜を作った人、働いた人。みんなに銭が回っています」

父は黙って聞いた。

「うちだけが金持ちになると恨まれます。でも、みんなが少し楽になるなら応援してくれます」

父は八郎を見る。

「お前、本当に三歳か」

八郎は笑った。

「三歳になりました」

「そういう意味ちゃう」

家族全員が笑った。

だが父だけは、その笑いの奥で感じていた。

この子はもう飯屋だけを見ていない。

村を見ている。

人を見ている。

そして、おそらくその先まで。

和尚が言った言葉を思い出す。

――驚くのはこれからやぞ。

父は小さくつぶやいた。

「ほんま、その通りになりそうやな……」

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