1533年1月。2回目の飯屋。新人の女の子は八郎と常連さんとのやりとりにびっくりするwwwwなんやかんや前回と同じくらいの売り上げ3600文
正月も過ぎ、次の市の日になった
今回から少し変わる。
今まで毎週に一度だった店を、週に二度まで増やすための第一歩。
そしてもう一つ。
家族以外の人間が加わる初めての日だった。
「緊張しております……」
新しく手伝いに来た娘が小さく言った。
母上は笑う。
「大丈夫」
「最初から全部できる人なんておらんから」
魚の下処理。
野菜を切る。
混ぜ飯を作る。
つみれの準備。
朝から皆で動いた。
前なら大騒ぎだった。
でも今は違う。
三郎兄様は炒め飯。
父上はつみれ汁。
母上は揚げ物。
自然と役割が決まっている。
「慣れてきましたね」
俺が言うと、父上が笑った。
「誰のせいじゃ」
「はい?」
「三歳児に鍛えられとるからじゃ」
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市に着くと、いつもの顔が見えた。
「おう、坊主!」
「明けてからまた来たな」
「はい」
「よろしくお願いします」
頭を下げる。
「聞いたぞ」
「週一から週二に増やすらしいな」
「様子を見ながらです」
「無理しても続きませんので」
「三歳児が言うことか」
常連のおじさんが笑った。
「今日は飯多いんか?」
「はい」
「混ぜ飯は少し増やしました」
「最近、売り切れるのが早かったので」
「ええぞ」
「昼過ぎに来たらない時あるからな」
そんな話をしていると、隣にいた娘が目を丸くしていた。
「……」
「どうしました?」
「いや」
「本当に普通に話すんですね」
「誰がです?」
「八郎様が」
「客相手に」
その時、客のおじさんが笑った。
「嬢ちゃん、新入りか」
「はい」
「すぐ慣れるぞ」
「この坊主は坊主と思ったらあかん」
「え?」
「わしら、飯食いに来とる半分」
「坊主見に来とる半分じゃ」
周りが笑う。
「それは困りますね」
「なんでや」
「料理を食べてください」
「食っとるわ」
おじさんはつみれ汁を飲む。
「これがうまいんじゃ」
「最初聞いた時は、下魚を丸めた汁なんて大丈夫かと思ったが」
「今じゃ楽しみや」
「天ぷらは今日はありますか?」
「少しだけです」
「油が高いので」
「やっぱりな」
「あれ毎回食えたら幸せなんやがな」
「銭がいくらあっても足りません」
「三歳児が財布事情語るな」
娘は完全に固まっていた。
「こんな感じなんですか?」
「はい」
「こんな感じです」
「私には何を?」
「お客さんと話してもらったり」
「料理を運んでもらったり」
「火を見てもらえたら助かります」
「……」
「どうしました?」
「あんた、本当に三歳?」
「こら」
母上が笑う。
「一応、主人やで」
「あっ」
娘は慌てて頭を下げる。
「す、すみません!」
「いいですよ」
「よく言われます」
また皆が笑った。
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商いは順調だった。
三郎兄様の炒め飯も手慣れてきた。
「父上」
「なんじゃ」
「三郎兄様、上手くなりましたね」
「ああ」
「あいつ、最近楽しそうじゃ」
農だけではない。
料理。
商い。
人と話すこと。
新しい役目が生まれていた。
そして夕方前。
「終わりです!」
最後の飯が売れた。
「また早いな」
「ありがたいことです」
売上を数える。
三千六百文ほど。
皆、もう驚かなくなってきている。
それが逆に怖い。
「慣れたら駄目ですよ」
俺が言う。
「これは大金です」
父上が苦笑する。
「一番落ち着いとる三歳児に言われるとはな」
「今回は人も増えました」
「なので、その分手間賃も払います」
「はい」
「利益は少し減ります」
「四十文ほどですね」
娘が驚く。
「私の分まで計算してるんですか?」
「もちろんです」
「働いた人には払います」
「ただ働きは続きません」
「器は前回買いました」
「だから今回はその分ありません」
「寺への寄進」
「市の顔役様への挨拶」
「百文ずつ」
「合わせて二百文」
「それでも五百文ほど残ると思います」
父上はため息をついた。
「普通、三歳児が言う話ではない」
片付けのあと。
市の顔役へ挨拶に行った。
「おお、坊主」
「また売れたらしいな」
「ありがとうございます」
「これ、いつものご挨拶です」
父上が銭を渡す。
「律儀じゃな」
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顔役は父上を見る。
「しかし」
「お前さんも出世したな」
「え?」
「これだけ店を広げて」
「領主様にも認められたんじゃろ?」
「いや……」
父上は困った顔をした。
「違います」
「何がじゃ?」
「出世したのは」
父上は俺を見る。
「八郎です」
「……」
「は?」
「領主様から千五百石分を見る話をいただいたのは」
「この子です」
沈黙。
顔役。
周りの商人。
皆が俺を見る。
「……冗談じゃろ?」
「本当です」
「三歳児が?」
「はい」
「千五百石?」
「はい」
顔役はしばらく黙り。
そして笑った。
「ははは!」
「なんじゃそれは!」
「飯屋の坊主かと思っとったら」
「もうそんなところまで行っとるんか!」
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「八郎」
「はい」
「お前、本当に何になるつもりじゃ」
少し考える。
「まずは」
「皆が飯を食えるようにしたいです」
顔役は目を細めた。
「……」
「大きいこと言う童じゃ」
「でも」
「お前なら本当にやりそうで怖いわ」
そう言って笑った。




