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1534年3月2週目終盤。一郎兄様に芋焼酎を注ぎながら島津本家の贈答用として渡すついでに兄様方の懇親会をする計画を話すwww

一郎の屋敷。

八郎は先ほど出来上がったばかりの芋焼酎を、水で少し割って猪口へ注いでいた。

「兄さん。」

「そのまま飲むときついんで、水で割りました。」

一郎は香りを嗅ぐ。

「……ほう。」

「芋やな。」

「米焼酎とは全然違う。」

恐る恐る口へ運ぶ。

ごくり。

「……。」

「おっ。」

「これは飲みやすいな。」

「そのまま飲んだ時よりええ。」

八郎は満足そうに笑った。

「でしょう。」

「水で割ると香りが立って、飲みやすくなるんですよ。」

「好き嫌いはありますけど。」

「これは面白い酒になります。」

一郎ももう一口飲みながら頷く。

「それで。」

「これをどうする気や。」

八郎は当然のように答えた。

「島津本家ですよ。」

「……また始まった。」

一郎が苦笑する。

「今度、本家のお殿様が来られるでしょう。」

「その時に。」

「米焼酎と、この芋焼酎を贈答品として持って行くんです。」

「ほう。」

「新しい酒ができましたので、ぜひ飲んでくださいって。」

「それだけです。」

「それだけか?」

「表向きは。」

八郎は悪戯っぽく笑った。

「そのついでに。」

「この前の、お茶会みたいなことをしたいんですよ。」

一郎は吹き出した。

「やっぱりそれが本命やないか。」

「違います違います。」

「酒が本命です。」

「姫様方は、おまけです。」

「絶対逆や。」

二人とも笑った。

八郎は続ける。

「でもね。」

「理由がいるんですよ。」

「急に。」

『また交流会しましょう。』

『姫様集めましょう。』

「って言ったら。」

「向こう身構えるでしょう。」

一郎も納得する。

「まあ、それはそうや。」

「だから。」

「新しい酒ができました。」

「皆さんで試飲してください。」

「その流れなら自然なんです。」

「確かに。」

「それなら角が立たんな。」

八郎は地図を広げた。

「それだけじゃありません。」

「島津本家にも。」

「芋を植えてもらうんですよ。」

「今ちょうど四月前。」

「苗を植えるにはちょうどええ時期です。」

「向こうでも芋を作って。」

「芋焼酎を造って。」

「薩摩と肥後。」

「二つで産地になれば。」

「九州中へ売れます。」

一郎は腕を組んだ。

「なるほど。」

「自分だけ儲ける気はないんやな。」

「もちろんです。」

「一緒に儲けた方が大きくなりますから。」

「向こうにも利益があります。」

「こちらにも利益があります。」

「交易も増えます。」

「それに。」

八郎は机の上の芋を一つ持ち上げた。

「これ。」

「痩せた土地でも育つのが大きいです。」

「米が作りにくい土地。」

「荒れ地。」

「山際。」

「そういうところでも収穫できます。」

「不作の年でも。」

「芋があれば飢えにくい。」

「焼酎もできる。」

「だから。」

「米だけに頼るよりずっと強いです。」

一郎も真剣な顔になる。

「確かに。」

「戦が続いても芋は助かるか。」

「そうなんです。」

「米は年貢。」

「芋は暮らし。」

「その両方があれば。」

「領地はもっと豊かになります。」

一郎は感心したように笑う。

「お前。」

「芋に対する情熱がすごいな。」

「当然ですよ。」

「芋は夢があります。」

「酒になります。」

「飯になります。」

「甘味にもなります。」

「焼き芋もできます。」

「家畜も育てられます。」

「捨てるところがないです。」

「夢しかないです。」

一郎は大笑いした。

「そこまで言うか。」

「言います。」

「だから島津本家にも広めたいんです。」

しばらく二人で酒を飲む。もちろん八郎はなめるくらいだがwww

すると一郎が真顔になった。

「……ただな。」

「一つだけ心配がある。」

「何です?」

「その試飲会。」

「絶対荒れるぞ。」

八郎は首を傾げる。

「荒れます?」

「荒れる。」

「姫様方がおる。」

「兄弟がおる。」

「酒がある。」

「しかも新しい酒。」

「何も起こらんわけない。」

八郎は少し考え。

「ああ。」

「だから飲ませすぎないです。」

「試しに一杯。」

「それぐらい。」

「これ。」

「本当に強いですから。」

「飲み過ぎたら。」

「皆さん顔真っ赤になります。」

一郎は笑いながら頷いた。

「それがええ。」

「一杯だけにしとけ。」

「それ以上飲ませたら。」

「お前責任取れんぞ。」

「ちゃんと止めます。」

「約束します。」

一郎は猪口を置きながら弟を見る。

「しかし。」

「お前が行くところ。」

「なんか毎回。」

「変なこと始まるよな。」

八郎は不満そうに頬を膨らませた。

「変なことじゃないですよ。」

「新商品です。」

「交流会です。」

「産業振興です。」

「縁談です。」

「全部大事でしょう。」

「そうやけど。」

「なんというか。」

「薬売りが珍しい薬持って村回るみたいなんや。」

「『新しいもんできましたー』言うて。」

「『ついでに縁談もどうですかー』って。」

「それ。」

「完全に八郎や。」

八郎は思わず吹き出した。

「兄さん。」

「ちゃんと普通の商人です。」

「いや。」

「お前はもう。」

「歩く新産業や。」

二人は顔を見合わせると、大声で笑った。

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