1534年1月2週目。ご宴会の翌日。料理の結果を三郎兄様と母と話し合い。親子丼は当然やる。鉄板の問題や鍋の工夫がいるかな?
ご縁会が終わった翌日。
八郎は三郎と母のところへ顔を出していた。
昨日の料理の結果確認である。
「三郎兄さん、母上」
「昨日の料理なんですけど」
「どう見ます?」
三郎は腕を組む。
「どうもこうもないやろ」
「親子丼」
「あれはいける」
八郎が笑う。
「やっぱりですか」
「僕もそんな感じがプンプンしてました」
三郎は呆れた顔をする。
「プンプンどころちゃう」
「あれ、めちゃくちゃ出てたぞ」
「途中から飯が足りへんかったからな」
母も頷いた。
「男衆の食いつきがすごかったねえ」
「汁物や団子とはまた違うわ」
三郎が続ける。
「あれはな」
「早いのがええ」
「座ってゆっくり食う料理も必要や」
「でも仕事途中の者は違う」
「腹いっぱいになって、すぐ戻れる飯」
「そこを掴んどる」
八郎は頷く。
「そこなんですよね」
「働く人向けですね」
「親鳥も使えるし」
「卵も使える」
「米も動く」
「全部回ります」
三郎は苦笑した。
「またそうやって全部繋げる」
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「利益ですけど」
「一店舗一日二百文ぐらい見てました」
八郎が言う。
すると三郎は首を振った。
「甘い」
「え?」
「三百はいく」
「そんなにですか?」
「ああ」
「飯玉増やして」
「昼時に集中させたらな」
「ただし」
三郎は釘を刺す。
「喜びすぎるのも違う」
「売れすぎたら他の飯を食う」
「つみれ汁も」
「団子も」
「マグロも」
「全部商売やからな」
八郎は嬉しそうに頷く。
「さすが三郎兄さん」
「そういうところ見てくれるから助かります」
「だから数量限定ですね」
「売り切れたら終わり」
「他の商品にも流す」
「それで三百文想定」
「まずそれでいきましょう」
「じゃあ親子丼は正式採用で」
八郎が言う。
「味調整しながら」
「昨日作った人たちを各地に配置しましょう」
「最初から同じ味じゃなくていいです」
「作りながら覚えてもらう」
「店を増やして原価を上げる」
母が首を傾げる。
「普通は利益を上げるって言わへん?」
八郎は笑う。
「もちろん利益も大事ですよ」
「でも今は領地全体を豊かにしたいので」
「鶏を育てる人」
「米を作る人」
「卵を売る人」
「薪を売る人」
「全部に銭が回る方が大事です」
母はため息をついた。
「ほんま商売なのか国造りなのかわからんね」
「両方です」
即答する八郎に二人は笑った。
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「で」
八郎が聞く。
「肉あんはどうでした?」
三郎は少し考える。
「あれもうまい」
「ただ問題がある」
「鉄板ですね」
「そうや」
「大量に売るなら鉄板がいる」
「今みたいな催しならいい」
「でも店ごとに出すとなると大変や」
八郎も腕を組む。
「そこですよね」
「鉄って高いですし」
「職人も限られます」
「でも」
三郎を見る。
「お好み焼きと肉あん」
「鉄板料理としてまとめるのはありですよね」
三郎の目が光る。
「ああ」
「あれはありや」
「お好み焼きも毎回聞かんでええ」
「店なら全部乗せでいい」
「鶏」
「海老」
「野菜」
「その日の具」
「まとめて焼く」
「肉あんと合わせたら……」
三郎は指を折って計算する。
「四百……」
「いや五百文利益も見えるな」
八郎も頷く。
「一商品じゃなくて鉄板部門ですね」
「半分見ても一店舗二百五十文」
「十分ですね」
ただ問題は残る。
「鉄板か……」
三郎が呟く。
八郎も考える。
「逆に鉄板じゃなくてもいいかもしれません」
「どういうことや」
「鍋です」
「鍋?」
「底が広くて」
「浅い鍋」
「平たい鍋ですね」
「それなら肉あんはいけると思うんですよ」
三郎が目を細める。
「なるほどな」
「鉄板を大量に作るより」
「鍋を改良する方が早いか」
「はい」
「鍛冶屋さんと相談ですね」
母が呆れる。
「また仕事増やした」
八郎は笑う。
「でも売れますよ?」
「売れるものは売らないと」
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母は三郎を見る。
「この子」
「ほんま忙しいねえ」
三郎も笑う。
「料理の話してたと思ったら」
「鶏の話」
「米の話」
「鍛冶屋の話」
「最後は領地の話や」
「頭の中どうなっとるんや」
八郎は首を傾げる。
「普通ですよ?」
「普通ちゃう」
二人同時に突っ込む。
母が笑う。
「あんた」
「網を張りすぎ」
「網?」
「そう」
「魚捕る網みたいに」
「あっちにも」
「こっちにも」
「全部広げてる」
八郎は少し考える。
そして笑った。
「でも」
「どこかに魚がかかったら」
「みんなで食べられるじゃないですか」
その言葉に母と三郎は黙る。
そして――笑った。
「まあ」
「そこが八郎らしいな」
三郎が言う。
「親子丼」
「肉あん」
「お好み焼き」
「やるぞ」
八郎は満面の笑みになる。
「はい」
「また忙しくなりますね」
母はため息。
「自分で増やしてるんやけどね」
その場に笑いが広がった。
こうして八郎商会に、また新しい柱が生まれようとしていた。




