1533年9月3週目。帳面合わせがひと段落し、嫌になったので薩摩川内の領地を見て回る。兄様達の農業、芋の出来具合を見に行く。焼いて食べると甘い。商売になるwww
九月三週目。
帳面合わせも終わり、少し落ち着いた頃。
八郎は大きく息を吐いた。
「……最近、帳面しか見てない気がします」
その言葉に周りの大人たちが笑う。
「八郎様、それが領主の仕事ですぞ」
「分かってますけど」
八郎は苦笑した。
「三歳児が毎日、百万文単位の借金見てるんですよ?」
「少しぐらい外を歩きたいです」
ということで。
久しぶりの領内視察になった。
もちろん一人ではない。
大人たちが付き添い、馬に乗せてもらいながら村を回る。
まず向かったのは、始まりの土地。
薩摩川内。
「まず見たいものがあります」
「芋です」
畑では一郎と二郎が様子を見ていた。
「兄さん」
「芋どうですか?」
一郎が土を払いながら答える。
「育っとるぞ」
「ただ大きさを見るなら、もう少し置いた方がいいな」
二郎も頷く。
「秋口ならもっと太ると思う」
八郎は畑を見る。
「少しだけ掘れません?」
「今か?」
「はい」
「出来を確認したいです」
一郎は笑った。
「まあ、それもそうか」
「考えたら俺らもまだ食ったことないしな」
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数本だけ掘り起こす。
土の中から出てきた芋。
まだ少し小さい。
しかし、確かに育っていた。
「どうします?」
「まず焼きましょう」
「焼くだけ?」
「はい」
「まず味を知らないと」
火を起こし、じっくり焼く。
しばらくすると甘い香りが漂い始めた。
「なんか……」
「匂いが違うな」
割ってみる。
湯気。
黄色い中身。
八郎が一口食べる。
「……甘い」
一郎、二郎も食べる。
「なんじゃこれ」
「砂糖も蜂蜜も入れとらんのか?」
「入れてません」
「焼いただけです」
三人で顔を見合わせる。
「これ」
「このまま売れますね」
◇◇◇
二郎が笑う。
「また店か」
「いや、でも本当に」
「焼き芋屋できますよ」
「火で焼くだけ」
「甘い」
「腹も膨れる」
「強いです」
八郎はさらに考え始める。
「でも焼くだけじゃもったいないですね」
「出た」
一郎が笑う。
「また始まった」
「蒸して」
「潰して」
「団子に混ぜたらどうですかね」
「芋団子」
「蜂蜜少し混ぜてもいいかもしれません」
「甘味屋できます」
二郎が呆れる。
「食べながら次の商品考えるな」
「考えますよ」
「仕事になりますから」
そして畑の話になる。
「今年はどれぐらい取れそうですか?」
「食える分は少し」
「大半は苗芋じゃな」
「そうですね」
「まず増やす方が大事です」
「でも……」
八郎が領地図を見る。
「問題は増えた領地です」
「薩摩川内だけじゃないですから」
「十五万石近いです」
一郎が計算する。
「うちで五万文分買ったんやろ?」
「はい」
「単純に考えたら十倍近くいるぞ」
「五十万文ぐらいか」
八郎は即答した。
「買いましょう」
「……は?」
「買います」
「ツケで」
一郎と二郎が同時に見る。
「またツケか」
八郎は真面目に言う。
「でも植える時期があります」
「後から銭ができても」
「季節は待ってくれません」
「今植えないと」
「来年増えません」
二郎はため息をついた。
「まあ最近の八郎商会なら払えるやろうけどな」
「はい」
「それに」
「これは絶対返ってきます」
八郎は焼き芋を見る。
「この甘さです」
「売れます」
「米と違って荒れた土地でも育つ」
「飢え対策にもなる」
「商品にもなる」
「こんな便利なもの、広げない理由がありません」
さらに八郎が言う。
「あと」
「芋焼酎です」
一郎が首を傾げる。
「芋で酒?」
「はい」
「肥後で米焼酎を作りますよね」
「同じ考え方で試したいです」
「米は大事です」
「食べ物ですから」
「でも芋から酒が作れたら?」
「保存できる」
「売れる」
「交易できる」
「価値が一気に上がります」
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一郎は笑った。
「本当に次から次へ出てくるな」
二郎も頷く。
「芋見に来ただけやろ」
「焼き芋屋」
「芋団子」
「芋焼酎」
「もう三つ増えとる」
八郎は笑った。
「仕方ないです」
「美味しいもの見ると思いつくんです」
秋の畑。
土の中から出てきた小さな芋。
しかし八郎には見えていた。
飢えを防ぐ作物。
甘味。
酒。
交易品。
また一つ。
薩摩の未来を変える種が掘り起こされた。




