1533年8月2週目。迫る相良・阿蘇連合軍に館を攻めさせて門を突破させた先に広場を作り3方向から斉射・一斉突き。動きが止まったとみるや伏兵を展開。混乱したところで兵糧を焼くwww
門の内側。
相良・阿蘇連合軍は完全に足を止めていた。
「進め!」
「後ろが詰まっておる!」
前の兵は異変に気付いていた。
しかし後ろの兵はまだ勝ったと思っている。
門を破った。
敵の館へ入った。
あとは押し潰すだけ。
そう信じていた。
だが、目の前に広がっていたのは勝利への道ではなかった。
八郎が用意した狩り場だった。
三方向から矢が降る。
一列目。
二列目。
三列目。
四列目。
休みなく。
「まだ撃つのか!」
「なぜ止まらん!」
相良の兵たちは混乱した。
普通なら、一度射れば次の準備がいる。
しかし八郎軍は違った。
撃つ者。
準備する者。
交代する者。
最初から役割が決められていた。
そして。
最後の矢が放たれる。
「矢、尽きました!」
その声に相良方は一瞬安堵した。
「今じゃ!」
「押し込め!」
だが。
八郎軍は逃げなかった。
弓を置く。
槍を持つ。
三方向。
同時。
「構え」
静かな声。
「突け!」
三方向から槍の壁が動いた。
前へ。
前へ。
前へ。
・・・・・・・・・・・
「押されるな!」
相良の武士が叫ぶ。
だが無理だった。
門の中に詰まった兵。
自由に動けない。
刀を振る空間もない。
対して八郎側は最初からそのために場所を作っていた。
「押せ!」
掛け声が重なる。
ついに。
門前の陣形が崩れた。
そこには倒れた兵。
捨てられた武具。
逃げようとする者。
混乱だけが残った。
「退け!」
「一度外へ出ろ!」
相良方が叫ぶ。
その瞬間。
館の上から大きな狼煙が上がった。
山奥。
それを待っていた者たちがいた。
伏兵二千。
「上がったぞ」
「八郎様の合図じゃ」
二方向から一気に動き出す。
◇◇◇
館から押し返された相良・阿蘇軍。
そこへ横から別の兵が現れる。
「敵!」
「伏兵じゃ!」
完全な混乱だった。
「立て直せ!」
「隊を組め!」
指揮官たちは叫ぶ。
さすがに相良、阿蘇の兵。
簡単には崩れない。
一度距離を取り、軍を組み直そうとする。
しかし。
その時間こそ八郎が欲しかったものだった。
「兵糧はどこだ」
伏兵の別働隊は戦場ではなく後ろへ向かった。
探すのは首ではない。
米。
味噌。
荷。
「あったぞ!」
「持てる分は持て」
「無理な分は使えなくしろ」
煙が上がる。
相良の武将が振り返った。
「まさか……」
兵糧だった。
「馬鹿な」
「戦っている間に……」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そこから崩れ始めた。
飯がない。
後ろも危ない。
伏兵がいる。
館も落とせない。
七千の軍勢だったものが、ただの人の集まりになっていく。
逃げる者。
山へ入る者。
町へ逃げ込もうとする者。
だが町の入口は閉じられていた。
そこにいたのは兵ではない。
町人。
農民。
「無理するなと言われておる」
「でも捕まえられる者だけ捕まえる」
逃げ疲れた兵。
武具を捨てた兵。
そうした者が次々取り押さえられていく。
「まずい」
相良の武将は歯を食いしばった。
「甘く見ていた」
三歳児。
飯屋。
寄せ集め。
そう聞いていた。
だが違った。
この戦。
最初から自分たちは誘導されていた。
「まだだ!」
「軍をまとめ直せ!」
必死に声を上げる。
だが。
その時。
遠くから土煙。
騎馬。
最初に左右へ散った五百だった。
「戻ってきたぞ!」
二百五十。
二百五十。
左右から再び突く。
「ここで来るか!」
疲れた兵。
腹を空かせた兵。
逃げることを考え始めた兵。
そこへ騎馬。
もう軍ではなかった。
敗走だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日。
相良・阿蘇側の領境。
戻ってきた兵を数える。
七千で出た。
最低でも三千は戻る。
そう思っていた。
だが。
集まった数。
千五百ほど。
「……これだけか」
誰も答えられなかった。
討たれた者。
捕まった者。
逃げ散った者。
武具を失った者。
相良と阿蘇は、領地を取るどころではなかった。
次の戦を考える余裕すら消えていた。
一方、八郎の館。
古参武士がつぶやく。
「恐ろしい戦じゃ」
「勝つのではなく」
「相手が二度と来られぬ形にした」
八郎は小さく答えた。
「もう攻めてきてほしくないだけです」
「戦より、飯屋を増やしたいので」
その言葉に周囲は苦笑した。
だが誰も否定しなかった。
この日。
相良と阿蘇は知った。
肥後南部に現れた三歳児は。
ただ領土を広げる者ではなく。
領土を守る仕組みを作る者なのだと。




