表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
215/492

1533年8月1週目。数日後、肥後の武士達と商人衆は八郎のもとへ戻ってきた。領主を追放することで相良、阿蘇との火種の可能性が出る。

数日後。

肥後の者たちが再び八郎の館へ戻ってきた。

ただし今回は、以前とは様子が違った。

連れてこられた者たちがいた。

縄をかけられた十数人の国人衆。

元領主。

そして側近たちだった。

八郎は驚いた顔をする。

「……これは?」

肥後の武士が頭を下げる。

「この者たちが隠しておりました」

「帳面も」

「借金も」

「そして市への妨害も」

商人も続ける。

「裏帳簿が出ました」

「城の借金」

「千五百万文」

その数字に周囲がざわついた。

八郎は縛られた領主を見る。

「どうします?」

「何をじゃ」

「返せます?」

「千五百万文」

領主は顔を歪めた。

「返せるわけなかろう!」

「そうですよね」

「我らだって苦しかったのじゃ!」

「お前に負けて!」

「武具も取られて!」

「どうしようもなかったのじゃ!」

八郎は静かに聞いていた。

そして言った。

「苦しいのは分かります」

「でも」

「返せないものを借り続けて」

「その負担を領民や下の武士に押し付けるのは違います」

領主は怒鳴った。

「では!」

「わしらを斬るのか!」

「違います」

「ならどうする!」

八郎は答えた。

「追放です」

場が静まった。

「家族と共に」

「相良でも阿蘇でも」

「縁があるところへ送ります」

領主の顔色が変わる。

「馬鹿な!」

「わしを追えば相良が黙っておらんぞ!」

「阿蘇も動くぞ!」

八郎は頷いた。

「可能性はありますね」

「ほら見ろ!」

「ですが」

「だから許す、とはなりません」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「確かに」

「あなた方を追放すれば火種になるかもしれません」

「相良と阿蘇が」

『八郎が国人を追放した』

と言って攻める理由にするかもしれません」

「分かっておるなら!」

八郎は首を振った。

「でも」

「ここで何もしなかったら」

「この土地の人たちは八郎を信用しません」

八郎は肥後の武士たちを見る。

「この領地は預かります」

「ただし」

「全部私が決めるわけではありません」

「家臣団は組み直してください」

「この土地を知っているのは皆さんです」

「私は帳面を見る」

「仕組みを作る」

「一緒に減らしていく」

「それだけです」

武士たちは深く頭を下げた。

その時、縛られた領主が笑った。

「城の借金はどうする」

「千五百万文だぞ」

「そんなもの返せるものか」

八郎は答える。

「交易します」

「交易?」

「はい」

「米焼酎」

「干し椎茸」

「紙」

「特産品を作って外へ売ります」

「少しずつ返します」

領主は鼻で笑った。

「そんなもので返せるか」

「それと」

「寄付です」

その瞬間、領主は笑った。

「寄付?」

「馬鹿か」

「誰が好き好んで銭を出す」

八郎は首を傾げる。

「でも」

「ありましたよ」

「何?」

「薩摩仙台では」

「庄屋衆の証文を消した後」

「農民の方々が」

「一週間、仕入れ分を現物で出してくれました」

「三十九万文分」

領主たちは黙る。

「一週間で」

「三十九万文です」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そこで和尚が口を開いた。

「殿」

「八郎がやっとることは」

「ただ借金を消しているのではありません」

「不安を消しているのです」

皆が和尚を見る。

「証文が消える」

「利息が消える」

「明日の心配が減る」

「そうなると人は」

『今度は助けたい』

と思うものです」

「それが八郎の強さです」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

だが元領主は最後まで認めなかった。

「覚えておれ」

「相良へ行く」

「阿蘇にも伝える」

「八郎は国人の土地を奪ったとな!」

八郎は静かに答えた。

「そう言われるかもしれません」

「なら?」

「その時は受けて立ちます」

「こちらはこちらの領民を守るために戦います」

その言葉に肥後の武士たちは顔を上げた。

今まで彼らは領主を守るために戦ってきた。

だが。

この三歳児は違った。

領民を守るために戦うと言った。

一人の武士が頭を下げる。

「八郎様」

「我らも共に」

こうして肥後南部は完全に八郎の傘下へ入った。

ただし同時に。

相良と阿蘇という、新しい火種も生まれたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ