表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
152/649

1533年4月。4度目の市。四郎兄様達から3つ目の市から打診あり。菓子と茶を出されお願いされ態度が変わりすぎて引くwww

四月、四度目の市の日。

 朝から八郎の家の前には、また荷車が並んでいた。

「八郎様!」

「今日の分でございます!」

 米俵。

 野菜。

 干物。

 薪。

 次々と運び込まれる。

 母はその光景を見ながら、まだ慣れない顔をしていた。

「……ほんまに毎回来るんやね」

 八郎は苦笑する。

「はい」

「証文と現物交換ですから」

「でも皆さん、頭下げすぎです」

 その言葉を聞いた庄屋の男が首を振る。

「何言うてますか」

「八郎様のおかげで、今年どうしようかって悩みが消えたんです」

「利だけ払って一生終わると思ってたんですよ」

「それが米作って返せる」

「働いて返せる」

「前向けるんです」

 周りの者も頷く。

「ほんまありがたい」

「来年の種籾残せる」

「娘を奉公に出さんで済むかもしれん」

 母は複雑そうに八郎を見る。

 三歳の息子が、大人たちから頭を下げられている。

 まだどう受け止めていいかわからなかった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

市は順調だった。

 混ぜ飯。

 つみれ汁。

 炒め飯。

 天ぷら。

 甘味処。

 どれも客が絶えない。

 さらに隣の市でも、新しく増やした店が動き始めていた。

 夕方。

 片付けをしていると、四郎と五郎が戻ってきた。

「八郎」

「はい、兄様」

「ちょっと話がある」

「何でしょう?」

 二人は顔を見合わせる。

「隣の隣の市なんやけどな」

「はい」

「店出さんかって言われた」

 八郎は目を細める。

「条件は?」

「毎日でもいいって」

「好きなだけ出してくれって」

 家族が驚く。

「そこまで?」

 四郎は苦笑する。

「それだけちゃう」

「町の顔役に呼ばれてな」

「八郎様のお兄様でございますか、って」

「……」

「茶出された」

「菓子出された」

「一緒に行ってた子らまで丁寧にもてなされた」

 五郎も頷く。

「最後には」

『兄様方も、どうかごひいきに』

「やって」

 父が苦笑する。

「すごい変わりようやな」

 四郎は首を振る。

「いや」

「正直怖かった」

「昨日まで普通の庄屋の子やったのに」

「急に扱いが変わる」

 八郎は静かに頷いた。

「怖いでしょう」

「え?」

「私も怖いです」

 兄たちが見る。

「分かってたんか?」

「はい」

「私が発信源みたいになってます」

 一瞬。

「……」

「ちゃんと認識しとんかい!」

 三郎が突っ込んだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「それで八郎」

「出すなら何を出す?」

「混ぜ飯は絶対です」

 即答だった。

「理由は?」

「米です」

「借金返済で米が大量に入ってきます」

「それを銭に変える場所が必要です」

 父が頷く。

「なるほど」

「あと」

「甘味処です」

「甘味?」

「はい」

「砂糖は今なら商人さんが琉球から回してくれます」

「砂糖と小豆」

「これは強いです」

「味が多少整わなくても」

「甘いだけで人が来ます」

 母が笑う。

「確かにね」

「女の人も子供も喜ぶわ」

「それに」

「人を雇えます」

 八郎は続けた。

「作る人」

「売る人」

「運ぶ人」

「仕事になります」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 そこで八郎の顔が少し変わった。

「ただ」

「問題があります」

「またか」

 父が苦笑する。

「三つ目の市まで動くとなると」

「領主様側が動き始める可能性があります」

 空気が止まる。

「また物騒なこと言うな」

「でも必要です」

 八郎は言う。

「もし領主様が」

『八郎を囲め』

『八郎を管理しろ』

「そう考える可能性もゼロではありません」

 母の顔色が変わる。

「それは……」

「もちろんすぐではありません」

「でも」

「銭」

「人」

「商人」

「全部こっちに向いています」

「警戒は必要です」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 父が聞く。

「戦になると思うか?」

「小競り合いなら」

「先は見えています」

「なぜ?」

「米と銭が減るだけだからです」

 八郎は淡々と言った。

「領地を取れる戦なら別です」

「でも」

「取れない戦なら」

「武具代」

「兵糧」

「人手」

「全部なくなります」

 父の顔が険しくなる。

 八郎は続ける。

「そして」

「九月」

「多分また来ます」

「何が?」

「五万文のおかわりです」

 兄たちが驚く。

「え?」

「そんな話誰もしてないぞ」

 八郎は父を見る。

「来ますよね、父上」

 父はしばらく黙った。

 そして。

「……来るな」

 母が驚く。

「なんで?」

「税を下げる話がない」

 父は言った。

「今回も、本来なら税を下げるべきところを」

「銭を追加で集めた」

「根っこが変わってない」

「なら次も同じになる」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 八郎は頷く。

「そうです」

「今みんな」

『借金が消える』

『生活が変わる』

「そう思っています」

「そこに」

『また五万文出せ』

「と言われたら?」

 誰も答えない。

「危ないんです」

「殿様が悪いとかじゃないです」

「でも」

「希望が見えた後に、それを奪われるのが一番怖い」

 父は深く息を吐いた。

「そこまで見とるか」

 八郎は首を振る。

「外れてほしいです」

「ただ」

「準備はしてください」

 その場にいた全員が理解した。

 もうこれは飯屋の話ではない。

 借金を消した先。

 人が誰についていくのか。

 そこまで流れが進み始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ