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1533年3月。お寺での集会終盤。いきなり利息下げてくる商人達。長い付き合いしてくださいよwww侍より八郎の方が商い大きくなる可能性あり

寺での話し合いは、いよいよ実際の証文整理に移った。

 八郎は帳面を閉じると、商人たちに頭を下げた。

「では、今日は実際に始めたいと思います」

 その言葉に場が静かになる。

「今、うちにある現金が三万文ほどです」

「全部使うことはできません」

「仕入れもありますし、何かあった時の銭も必要です」

「なので、今日は二万文分だけ証文を買い取らせてください」

 その瞬間だった。

「なら、うちの証文を」

「いや、うちが先や」

「八郎殿、こっちも頼む」

 商人たちが一斉に声を上げる。

 八郎は慌てて両手を振った。

「待ってください、待ってください」

「全部は無理です」

「順番を決めます」

「どう決める?」

「利息が高いところからです」

 八郎はきっぱりと言った。

「五割、四割という高い利で苦しんでいるところを先にします」

「利が低いところは申し訳ないですが後です」

 すると一人の商人が考え込んだ。

「……八郎殿」

「はい?」

「うち、少し利息を下げてもええか?」

 周りが驚く。

「お前、何言うとるんや」

「いや」

 その商人は笑った。

「考えてみろ」

「ここで高い利息を取り続けて、証文返されて終わりになるのと」

「八郎殿とこの先十年商売するの」

「どっちが得や?」

 その言葉に、別の商人も黙った。

「……確かにな」

「布団十組買った話も聞いた」

「砂糖も扱い始めた」

「これから鍋や農具も売れる」

「飯屋も増える」

「なら利を少し下げてでも付き合い残した方がええ」

 次々声が上がる。

「うちも四割から三割でええ」

「なら、うちは二割五分まで落とす」

「長く付き合いたい」

 今度は庄屋衆が驚いた。

「おいおい……」

「今まで絶対下げんかったやないか」

 商人は苦笑する。

「状況が変わったんや」

「今までは貸すしか商売がなかった」

「でも八郎殿が売り先を作った」

「なら話が違う」

 和尚が笑った。

「八郎、聞いとるか」

「はい?」

「お前、銭を払う前に利を下げさせたぞ」

「え?」

「二万文使う前にな」

「信用だけで借金を軽くしたんや」

 八郎は困った顔をする。

「そんなつもりじゃ……」

「お前はいつもそう言う」

 場に笑いが起こる。

 すると別の商人が言った。

「しかし、考えたら怖いな」

「何がです?」

「武士相手の商売より、こっちの方が大きくなるかもしれん」

 八郎が首をかしげる。

「どういうことです?」

「殿様や侍は武具を買う」

「刀、槍、鎧」

「確かに高い」

「でも数は少ない」

「ところが村人は違う」

「布団」

「鍋」

「服」

「農具」

「食べ物」

「毎日必要や」

 別の商人もうなずく。

「人数なら百姓の方が圧倒的に多いからな」

「銭が回り始めたら、売り先としてはこっちの方が面白い」

 和尚がニヤニヤする。

「八郎」

「はい?」

「また領主みたいなことになっとるぞ」

「だからそういうこと言わないでください」

 八郎は慌てる。

 その様子に皆が笑った。

 しかし後ろで聞いていた隣の庄屋衆は笑えなかった。

 本当に、自分たちも頼みたかったからだ。

 一人がおずおずと口を開く。

「八郎殿」

「はい」

「もし……」

「もし、うちもお願いしたら」

「同じようにできますか?」

 八郎は少し考えた。

「できます」

 その言葉に相手の顔が明るくなる。

「ただし」

 八郎は続けた。

「順番を間違えないでください」

「順番?」

「はい」

「私は今、父上たちの庄屋衆の中で動いています」

「隣の庄屋衆には、隣のまとめ役がおります」

「そしてその上には殿様がおります」

 和尚が静かに聞いている。

「勝手に私が入れば、それは助けではなく横取りになります」

 隣の者たちは黙った。

「まず殿様へ相談してください」

「その上で、正式に話を通してください」

「権限をいただく」

「あるいは、お願いとして持ってきてもらう」

「その形でなければ、私は証文を触れません」

 和尚が小さく笑った。

「三歳児が一番筋を通しとる」

 商人もうなずく。

「普通ならここで飲み込むところや」

「それをせんから信用できる」

 八郎は頭を下げた。

「まず、うちの十六万文です」

「週二万文」

「二月ほどで道筋をつけます」

「その後です」

 隣の庄屋衆は深く頭を下げた。

「分かった」

「必ず話を通してくる」

 和尚はその姿を見ながら思った。

 八郎は領地を奪おうとしていない。

 ただ飯を作り、銭を回し、人を助けているだけ。

 だが。

「結局、人はこういう者についていくんやろうな」

 和尚の小さなつぶやきは、寺のざわめきに消えていった。

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